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ユニークな建築家のガチンコ読書術(秋山怜史さんインタビュー・前編)

さまざまなプロフェッショナルの考え方・作られ方を、その人の本棚、読書遍歴、本に対する考え方などから紐解いていくインタビュー。今回は建築家の秋山怜史さんに登場して頂きました。

秋山怜史さんは一風変わった建築家だ。いや、住まう人らしさを丁寧に形にした住宅や、温かく開放的な店舗など、その仕事は至極真っ当。ただ、彼の活動はそれだけにとどまらないのだ。横浜の古いビルに立ち上げたシェアオフィス「cosmos」をベースに、外部のさまざまな人と“協創”しながら、シングルマザー向けのシェアハウスを運営したり、賃貸物件情報のウェブマガジンをやったり、はたまた地域活性×ウエディングという新しい発想のプロジェクトに取り組んだり。そのすべてが、彼の中ではきちんと繋がっている。それでいながら、「将来の夢は今でも作家になること」だと言うから恐れ入る。

そんな秋山さんの旺盛なバイタリティの源となっているのが、驚異的な読書量。今回は彼の幼少期から現在までの愛読書を通じて、ユニークな建築家の発想のヒントを探してみた。

自分を客観視する能力が培われたのは、間違いなく読書のおかげ

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―― 今日は本当にたくさんの本をご用意いただきました。これ、年代順になっているんですね。まずは幼児書の大ベストセラー、『ノンタン』シリーズから。

秋山怜史(以下、秋山) 実は、小説家になることが子供の頃からの夢でした。小さい頃から本を読むのが大好きだったんですが、最初にハマったのがこの『ノンタン おねしょでしょん』。当時3歳くらいだったんですが、毎日大きな黒いビニールのごみ袋に『ノンタン』シリーズの本を入れて、どこに行く時もずるずる引きずって歩いていました。それが2年くらい続いたのかな。子供の頃の僕は本当に頑固で、洋服もミッキーマウスの服しか着なかったらしい。うちの両親は3歳で僕の教育を諦めたそうです(笑)。

―― ノンタンの何が3歳の男の子の心を掴んだのでしょうか?

秋山 ノンタンについては、物語というよりは本自体に夢中になった、という感じですね。僕は今でも可愛いものが好きで、洋服もピンクばかり。その原点がノンタンです。先日、初めての娘が生まれたんですが、既にノンタンも買って用意してありますよ!

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―― 『ノンタン』を卒業した後、小学生になった怜史少年が夢中になったのが、寺村輝夫の『王さま』シリーズ

秋山 ええ、シリーズの本は全部大好きでした。自分では10冊くらい持っていたのかな。特にこれは海賊に囚われたお姫様を王さまが助け出すというもので、「女子を助ける男子」というヒーロー像に憧れを覚えていました。というのも、小学校2~3年生当時、僕はいじめられていたんです。当時僕は戸塚ホークスという、今だと東大の宮台康平くんの出身チームとして知られている野球チームに所属していました。そこでキャプテンを務めていたんですが、いじめられた。

―― キャプテンなのに? 何か理由があったんですか?

秋山 ちょっと嫌な子だったんですよ。先生に気に入られようとする子。それで、音楽の授業の時にガキ大将みたいな子と遊んでいたら、そいつだけが怒られて、僕は怒られなかった。それがきっかけですね。それで、本の中のヒーローたちの行動と自分の行動を比較してみたら、あまりにも違っていた。彼らは言い訳もしない、おべんちゃらを使うわけでもない。それで、「自分はかっこ悪いことをしていたんだな」と気づいたんです。それからですね、いじめがなくなっていったのは。自分を客観視する能力が培われたのは、間違いなく読書のおかげですね。

―― 凄い小学生ですね……。

秋山 「自分がかっこいいと思う行動をする自分になりたい」という気持ちは今も変わりません。でも、そういう行動って大人になってもできないんですよ。だからこそ読書を続けているんだと思います。

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ぼくらの七日間戦争

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―― これは小・中学生の定番中の定番ですね。

秋山 子供が憧れる子供像ですよね。こんなにワクワクするような七日間を過ごしてみたい!っていう。これを呼んだ後、宗田理さんの本を片っ端から読みました。でも、これが一番面白かったかな。

―― この作品は宮沢りえさんの主演で映画化もされて大ヒットしました。

秋山 僕は本を映像化したら絶対につまらなくなると思っています。映像や絵画などの芸術って非常に原始的なもの。それに対して、言語能力というのは人間が最後に獲得した能力なんだそうです。つまり理性にコントロールされている分野だから、言葉だけで人を感動させたりできるということはもの凄いことなんですよね。もちろん、「小説のほうが映画より優れている」ということではないのですが。

―― 最初に秋山さんは「小説家になるのが夢」とおっしゃっていましたが、何か日頃から書いていらっしゃるんですか?

秋山 短いテキストはストックしています。それがなかなか長編としてまとまらないのが悩みどころです(笑)。

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風の歌を聴け

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―― それにしてもここまで、『ノンタン』シリーズ、『王さま』シリーズ、宗田理作品と、いずれも、同じ作家のものを何冊も読むというパターンですね。

秋山 そうなんです。一人の作家にのめり込むタイプなんですよね。村上春樹さんもそうです。『風の歌を聴け』なんかは50回くらい読んでいます。ふとした時に頭の中に文が浮かんでくるくらい。

―― 村上作品を読み始めたのはいつ頃だったんですか?

秋山 中学生の時です。でも、その時は全然心に響かなかった。それが、大学生になって改めて読んでみたら、凄く響いたんです。それぞれの人に読むべき時というのが存在しているんですね。それ以降はさまざまな村上作品を読みました。『風の歌を聴け』『ノルウェーの森』『ダンス・ダンス・ダンス』はボロボロになるまで読み過ぎて2冊ずつ買ったかな。大人になってから「もっと小説を読みたい!」と思わせてくれた作品です。

―― 秋山さんにとって村上作品の魅力ってどこにあるのでしょうか。

秋山 文章が独特ですよね。ある友人に「村上文学って翻訳語で書かれているんだよ」と言われたことがあります。反対に、外国語に翻訳しても村上春樹っぽい。そういう意味でも、確実にそれまでの日本語文学を変えた人ですよね。僕が出版されている全作品を持っている、数少ない作家のひとりです。

―― それはかなりの村上マニアと言えそうですね。

秋山 大学時代、登場人物の真似をしてパスタばっかり作ってみたり、授業に出ずに部屋に籠ってウィスキーコークを飲みながら村上作品ばっかり読んでいたこともありました(笑)。ジャズにはハマらなかったけど。他にも森見登美彦さんとか畠中恵さんとかいろいろ好きな作家はいるんですが、一番読み込んでいるのは村上作品です。村上さんの凄いところは、海外に対してですけれども、政治的な発言もしていること。それって作家として大切な姿勢だな、と思うんです。自分がどんなスタンスでいるのかを明確にすることは大事じゃないかと。影響力のある人が政治にコミットする文化って素晴らしいと思うんですよ。

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―― 秋山さんは小学生の頃に野球を始めて、結局高校まで務められたんですよね。ここで紹介されるのは、オリックスで活躍した後、メジャーリーグでも成功を収めた長谷川滋利さんの本ですね。

秋山 はい。僕は大学卒業後、建築事務所に入ったのですが、最初から独立することは決めていたんです。それで、3年で辞めますと言って入れてもらった。独立するには経営的な能力もなければならないけれど、大学の建築学科では経営は学べないんですよね。そこで、デール・カーネギーとかピーター・F・ドラッカーとか、いろいろな人の本を読んだんですが、全部言っていることは一緒だった。それよりもうんと役に立ったのがこの『適者生存』だったんです。強い者が生存するのではなく、環境に適合した者が生き残るのだという考え方が明確に書かれていて、すごく刺激になる本です。ビジネス書を読むより絶対これを読んだ方がいいよ、といろんな人に勧めています。

―― ほかにもスポーツ関係の人が書いた本は読みますか?

秋山 野村克也監督の本は読みますね。ただ、将棋の羽生善治さんの本もそうですが、だいたいどれも内容が同じ(笑)。もし自分が出すのであれば、やっぱり出したいのはイチローさん自身の本かな。僕はわりと人前で話す機会が多いんですが、その時の話し方とか態度とかはだいたい誰かの演説を参考にするんですね。スティーヴ・ジョブズとか、バラク・オバマとか。で、唯一日本人で参考にしたいと思うのがイチローさん。あの間の取り方とか声の変え方とか……日本人であれほどプレゼン能力に長けた人はなかなかいないんじゃないでしょうか。

※後編に続く

Photographs by Motoki Adachi

プロフィール

 

秋山 怜史

建築家

1981年神奈川県生まれ。東京都立大学工学部建築学科卒業後、有限会社オンデザインパートナーズに勤務。2008年、一級建築士事務所秋山立花を設立。2014年から横浜国立大学非常勤講師を務める。2015年、神奈川県地方創生推進会議委員に就任。
http://www.klasic.jp/person/architect/158

ライターについて

 

山下紫陽

ライター・編集者。ジャンルはデザイン、アート、音楽など。幼少時から翻訳小説と洋楽にどっぷり浸かったためか地に足が着かないまま大人に。ここ10年は寒い・暗い・汚い系のミステリー/ハードボイルドばかり。好きな主人公はやっぱりフロスト警部

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