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5分でわかる、深刻な「超」高齢化と居住の姿、在宅介護の知るべき点

高齢化が進んでいることはみなさんご存知だと思います。しかし、その実態と今後起こりうる事態の予測を、どの程度リアルに把握しているでしょうか。健康寿命は何歳なのか、健康寿命を上まわる75歳以上の人口は全人口の何割を占めるのか、ご存知ですか?それらの人々の持ち家率、高齢者だけで暮らしている率はどの程度なのか。すると在宅介護を含む介護の選択肢には、どのようなことを考えればよいのでしょうか。

ここではまず、基本的な知るべき数値を押さえたうえで、「居住」を中心とした実態と介護の要点を把握していきましょう。すべての日本人が、最低限知っておくべき点をまとめました。

5分でわかる、深刻な「超」高齢化と居住の姿、在宅介護の知るべき点

4人に1人を超える「超介護社会」がすぐそこに来ている

2013年の日本の平均寿命は男性が80.2歳、女性が86.6歳で世界でもトップクラスの数値となっています。この数値はどこかで聞いたことがある人も多いでしょうが、平均寿命よりも注目するべきは「健康寿命」です。日常生活になんの制限のなく、心身ともに健康な期間、いわゆる「健康寿命」が何歳か、ご存知でしょうか? 2013年の健康寿命は男性が71.2歳、女性が74.2歳です。平均寿命と比べると、男女とも10年前後短くなっているのです。つまり、男女共に10年近くは日常生活に支障をきたす不自由な状態で生活しているということです。

一方、2015年の高齢社会白書によると、2015年10月の時点で日本の人口は約1億2,700万人。そのうち65歳以上の高齢者は約3,390万人であり、高齢化率*は26.7%となっています。つまり既に、日本人の4人に1人は65歳以上の高齢者なのです。(* 高齢化率:65歳以上の高齢者の割合)

そして、高齢化はこのまま続きます。人口の多い団塊の世代が75歳以上になるのは2025年と間近です。予測では、2060年には高齢化率が約40%に達し、日本の2.5人に1人が65歳以上になる時代が到来。またこのとき、4人に1人は75歳以上という「超」高齢社会を迎えます。先の健康寿命と比べてみてください。健康寿命は75歳を下まわっていましたので、超高齢化社会はすなわち、超介護社会とも言えるでしょう。

高齢化の推移と将来推計

実際に、要介護者等の認定* を受けている65歳以上の高齢者は、2013年末で569万人にのぼり、10年間で約200万人も増加しました。75歳以上でみれば、要介護認定を受けた人は全体の約23%と、4人に1人は何らかの介護が必要という結果に。もちろん、介護保険制度の認知度が上がったことによって増えた部分もあるかもしれませんが、介護が必要な人の数は着実に増え続けているのです。(* 要介護者等の認定:要支援1から要介護5までの7段階)

実は、介護者の数が増えることだけが問題ではありません。どこでどのような介護を受けるのか、も知っておくべきことでしょう。次は高齢者の住宅事情に簡単にふれてみます。

高齢者のみの世帯は、既に半数以上

高齢者人口と共に、高齢者のいる「世帯」も増え続けています。その数は、2014年の時点で約2,360万世帯。国全体の世帯数は約5,040万世帯ですので、高齢者のいる世帯は既に全体の約47%を占めています。もうすぐ、ほぼ2世帯に1世帯には高齢者が住んでいるという状況になるのです。

65歳以上の者がいる世帯数と構成割合(世帯構造別)、及び、その全世帯に占める割合

さらに注目すべきなのは、高齢者のいる世帯のうち、過半数である約55%が単独世帯、あるいは高齢者夫婦のみの世帯となっていることです。一番多いのは高齢者夫婦のみの世帯で、既に724万世帯(38%)もいます。もしどちらかの介護が始まれば、いわゆる「老老介護」の状態になります。実際、介護者の約7割が60歳以上なので、現時点でも、老老介護か、それに近い状態の介護が非常に多いことが予想されます。

次に多いのが高齢者の単独世帯、つまり一人暮らしで、全体の約17%を占めています。一方、親子孫の三世代がそろっている世帯はどんどん減少しています。1980年頃であれば、65歳以上で子供と同居している人は7割にのぼりましたが、2014年には約41%と半数を切る結果に。かつては、同居している祖父母に面倒を見てもらい、子供たちは高齢者から知恵や経験から学ぶこともできましたが、残念ながら、そうした時代は終わりつつあるようです。

これからの自宅をどう考えるか

現在、高齢者の約8割が持ち家に住んでいると言われています。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などの借家を合わせると、実に9割以上の高齢者が在宅で生活をしています。サ高住等の整備は進んでいますが、こうした高齢者向けの住宅は、せいぜい高齢者人口の5%しかカバー出来ません。そのため、「いかに自宅での居住を続けるか」を考えていく必要があります。その流れの中で、「地域包括ケア」という考え方が注目されています。

厚生労働省HPによると、地域包括ケアは、きたるべき超高齢社会を乗り切るために示されたもの。「団塊の世代が75歳以上となる2025年をめどに、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが出来るよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」ことを目標とするものです。地域包括ケアについて、様々な識者が議論を交わし、検討を重ね、改訂しながら、最新の報告書が、今年、2016年の3月にまとめられました。

地域包括ケアシステムを構築するうえで「住まい」はその要であり、「住まい」が植木鉢で「医療」「介護」「予防」を育てる器であると表現しています。例えば、移動する日常空間が狭い高齢者であっても、あまりにも狭すぎる住居では、生活支援や福祉サービスの導入に支障を来たします。また、換気の悪い部屋はカビが生えやすく、呼吸器系の病気を招きやすくなります。

最近では「ゼロ次予防」として、病気になる前にその要因を改善しようとする動きがあります。増え続ける社会保障費を前に、病気なってから治療に全力をあげるだけでなく、そもそも病気にならないようにお金をかけようという動きです。こうした動きでも「住宅」は非常に大きな改善すべき要因の一つになっています。

老後も住み続けられる住居を考える

在宅介護のメリットはどこにあるのでしょうか。まずは、家族、知人、友人などとの信頼関係を維持しやすいことでしょう。新たな土地に住みかえる、介護施設に入る、あるいは遠方に住んでいる子供や親戚の家に移るのは、高齢者にとっても大きなストレスがかかります。

たとえ年老いて、心身の自由がきかなくなったとしても、人は、住み慣れた地域のなかでの生活を望む人がほとんどです。馴染みの環境を離れてしまうことは、認知症を悪化させるリスクもあります。そうした理由から、介護においては、まずは在宅における対応からはじめることになります。

理想は、在宅対応のまま、人生をまっとうすること。つまり、在宅の要介護者に対して様々なサービスを提供する「訪問系介護サービス」こそが、介護の第1防波堤とも言えるのです。ここがダメだと、要介護者の状態はどんどん悪化してしまい、在宅以外の介護サービスが必要になっていってしまうからです。

自宅に住み続けることによって、自分の住んでいる地域、あるいは建物に対しても愛着がわき、自宅を自分が住みやすいように少しずつカスタマイズしていくことも老化防止になります。その一方で、自宅に住めなくなる理由として多いのが、加齢による身体機能の低下、孤独死の心配、周りに迷惑をかけてしまのではないかという不安感です。

自宅に住み続けるには、日頃から日常生活の自立を心がけ、フレイル(健康な状態と、要介護状態の中間の状態)に気をつけながら、社会参加の頻度や質をあげていくことが大切です。今はまだ介護が必要でない年齢でも、いつかは在宅介護を考えなければならない時がやってきます。その時に、住み続けられるように、今のうちから住環境を整えておくことが大切です。バリアフリーの設計にしておくことや、寝室とトイレの配置を近くしておくなどの工夫が有効です。

各部屋に緊急通報装置がついていることも、在宅介護のプラスになるでしょう。一人で生きていかなければならない可能性が高い中で、助けが必要なときに、助けが呼べるという安心感は重要です。もちろん日常的に安否確認してもらえるような、地域における関係づくりが大事なことは言うまでもありません。このように、自分、あるいは親の高齢化を見越して、老後も住み続けられる住居を考えることはもはや必須だといえるでしょう。

訪問系介護サービスと合わせて知っておきたい「小規模多機能型居宅介護」

老後も住み続けられる住居を考えることに加えて、他方で、「訪問系介護サービス」は、多岐にわたる種類があります。どれだけの種類があるのか把握するだけでもたいへんですし、さらには、それぞれを上手に組み合わせて使うという難しさがあります。これは社会問題ではあるのですが、しかし、こうした異なるサービスの間には行政による線引きがなされているので、介護サービスの提供者からすれば、どうしようもないことでもあるのです。

こうした状況を受けて「訪問系介護サービス」のアンチテーゼとして生まれているのが、地域密着型施設と呼ばれる介護サービスです。こうした中で、特に意識すべきなのは「小規模多機能型居宅介護」でしょう。

これは、基本的には在宅介護の一種なのですが、柔軟に、必要な介護を、定額で提供してくれる点が「訪問系介護サービス」とは異なります。誰にとってもよいサービスとは言い切れませんが、「小規模多機能型居宅介護」に切り替えたところ噓のように介護の負担が軽くなったという話も聞きます。とにかく、情報を集めて、検討してみる価値はあるでしょう。

ただし気をつけておきたいのは、「小規模多機能型居宅介護」を選択する場合は、それまで利用してきたヘルパー、ケアマネ、デーサービス、デイケア、ショートステイなどが介護保険では利用できなくなることです。つまり、「小規模多機能型居宅介護」は「訪問系介護サービス」とは対極にあり、どちらかしか選べないという状況にあるわけです。介護保険制度には、まだまだ問題がありますが、問題解決を待っていても仕方がありません。まずは現状を理解して、上手に活用することが求められます。

在宅介護について知るなら、この一冊から

このように複雑な、けれども重要な在宅介護について、その概要を知るためにも「本」は役に立つでしょう。ここでは最後に、コンパクトに重要な情報が詰まった新書を一冊、ご紹介いたします。

本書の第四章ではまさに「在宅介護サービスの使い方」が詳細に記されています。たとえば「2.在宅介護サービスを受けるには」では、要介護認定について具体的に詳しく述べられていますし、「3.ケアマネージャーを決める」では、ケアマネージャーの役割について説明し、ケアマネージャーの能力に疑問があったり相性が悪かったりしたら遠慮なく替えるようすすめています。

第五章では「施設と在宅介護」を比べており、家族や本人が在宅介護に不安を感じても「何かあったら施設に入れる」と思うことで在宅介護に踏み切れると言い、施設選びのポイントをあげています。

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著者は現在、淑徳大学教授(社会保障論・社会福祉学)なのですが、現職につく前に介護職・ケアマネージャー・地域包括支援センター職員など介護関係の仕事に10年間従事しています。現場を知る研究者というのは、貴重です。

「介護保険を利用して在宅介護をするにはどうしたら良いのか」ということを中心に書かれていますが、著者は、施設介護と在宅介護をうまく組み合わせて利用することで安心できる介護システムができると考えています。

本書ではたくさんの介護体験者や専門職員から聞き取り調査をし、在宅介護と施設介護の利点や問題点を明らかにしています。介護保険制度の表面的な説明にならず、利用者の立場から問題点を捉えているところに、著者自身の10年の経験が生きています。

介護の専門職の人も参考にできる充実した内容です。それだけに、一般の人、とくに現在介護中で精神的にも時間的にもゆとりの無い人には読みにくく感じられるかもしれませんが、しかし、介護を受ける立場の人と介護する人に役立つ情報がたくさんあるため、読む価値は大きいでしょう。

在宅介護と、高齢者のための住居を、今のうちから考えよう

超高齢社会においては、いつ自分が介護者になっても、あるいは要介護者になってもおかしくありません。来たるべきその時のために、今から少しでも準備しておくか、そうなってから慌てふためくか。待ったなしに進んでいる介護への道を日頃から意識しておくことが必要だと思います。そしてその一歩は、まずは「住居」そして「在宅介護」を見つめるところからはじめてはいかがでしょうか。

参考文献

  • ・ 内閣府, 『平成27年版高齢社会白書(概要版)』, 2015年

  • ・ 『在宅介護―「自分で選ぶ」視点から』結城康博著, 岩波新書2
  • ・ 阪東 美智子, 『居住環境分野から:安心安全な高齢者の「住まい」の整備』, 保健医療科学, vol.65 No.1,36-46, 2016

プロフィール

 

酒井 穣

KAIGO LAB編集長、株式会社BOLBOP代表取締役CEO、事業構想大学院大学特任教授、NPOカタリバ理事。慶應義塾大学理工学部卒、オランダTilburg大学経営学修士号(MBA)首席。商社勤務後、オランダのメーカーにエンジニアとして転職し、約9年をオランダにて過ごす。帰国後、一部上場IT企業にて取締役(人事・経営企画)を経験。独立後は人事制度構築、人材育成制度構築といった人事コンサルティングを中心としつつ、被災地支援・地域活性化事業、仕事と介護の両立というテーマにも取り組む。介護情報サイトKAIGO LAB編集長。著書は『はじめての課長の教科書』『幸せの経営学』など、多数。

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