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注目作家に最新作やおすすめ本などを聞く『honto+インタビュー』。
今回は、最新作『ロングレンジ』刊行を記念して伊坂幸太郎さんが登場。
「夫婦というのは、長いこと一緒にいても同じようなことで喧嘩するものだなあ」とよく思うのですが、そこから発想が広がり、できあがったお話です。
伊坂幸太郎さんが8月、電子書籍オリジナル短編『ロングレンジ』を上梓した。
かつて発表した人気作『アイネクライネナハトムジーク』の主要な登場人物が再び登場し、新たな活躍を見せてくれており、ファンにとってたまらない一冊なのはまちがいなし。伊坂さん本人にとっては、どんな作品となっただろうか。
―6作の短編からなる『アイネクライネナハトムジーク』ですが、冒頭の「アイネクライネ」は、シンガーソングライターである斉藤和義さんのために書き下ろされた作品です。本作を執筆するにあたっての経緯についてお聞かせください。
斉藤和義さんから「出会い」をテーマにした曲の作詞をしてくれないか、と依頼をしてもらったんですが、僕は作詞に関しては素人なので、泣く泣く断るほかなくて。だめもとで、「小説なら書けます」と言ったところ、「それでお願いします」と言っていただいたので、それなら、と「アイネクライネ」を書いたんですよね。その後で、CDに収録するために別の短編を書くことになり、それが「ライトヘビー」になるのですが、せっかくの機会なので、作中に斉藤さんの曲をふんだんに使ってみることにしました。通常の小説の中では、なかなかやらないので。その中で、「斉藤さん」という登場人物を考え出した記憶があります。
―そして『アイネクライネナハトムジーク』の発売から3年、続編となる短編が電子限定で配信となりました。
これは単純に、出版社側からの依頼です(笑)。文庫化のタイミングで、読者に何らかのプレゼントができないか、という話の中で、やはり僕ができるのは、小説を書くことだけなので、短編を書くことになりました。内容に関しては、編集者の体験談などをもとに作り上げたもので、僕としてはあまり気張らずに書いた感じですが、意外に、力を抜いて書いたもののほうが読者からの評判はいいような気がするんですよね(笑)。
―「ロングレンジ」は「こんな人に読んでほしい」というイメージはありますか?
特に読者は想定していないのですが、なんとなく、長く一緒に暮らしているパートナーがいる人なんかは、この作品に出てくる夫婦の話を、親しみをもって読んでくれるのではないか、と思います。
―登場人物や出来事がリンクする、という手法は本作に限らず伊坂さんの作品にしばしば見られます。作品につながりを持たせる上で意識していることはありますか?
デビュー直後は、前作を読んでくれた人へのお礼と言いますか、サービスのつもりで、登場人物の関連付けを行っていました。ただ、だんだんとそればかりを気にされているように感じて、ちょっとつらくなってしまったんですよね。『アイネクライネナハトムジーク』についても、各短編ごとにアイディアを入れて、ひとつひとつ楽しめるものにしたつもりなのですが、読者からもらった感想のハガキの大半が、「人物のつながり」についてのものばかりで、「つながりがなくても面白いと思うんだけどな…」と若干、寂しくなりました(笑)。とはいえ、読者が喜んでくれるのならそれはそれでいいのかな、と最近は思います。
―過去の作品ではミステリー、サスペンス、ファンタジーなど幅広いジャンルを扱っています。豊富な題材はどこから生まれるのでしょうか。
とにかく自分が読みたいもの、わくわくする話を考えているだけなんですよね。ただ、何か非現実的な要素がないと(作り話としては)いけないのではないかという恐怖心が昔からあるので、『アイネクライネナハトムジーク』や「ロングレンジ」のような、特に奇妙なことが含まれない話を発表するのは、不安で不安で仕方がありません。でも意外に、みなさん、楽しんでくれているようでほっとしています。
新刊のご紹介
著者プロフィール
伊坂幸太郎(いさか・こうたろう)
1971年生まれ。千葉県出身。
2000年、『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞しデビュー。
2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞。
2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞を受賞。
他の著書に『PK』『アイネクライネナハトムジーク』『キャプテンサンダーボルト』(阿部和重との共著)『火星に住むつもりかい?』『AX』などがある。
主な著作
バックナンバー
- 真梨幸子『祝言島』(小学館)
- 阿部智里『弥栄の烏』(文藝春秋)
- 深水黎一郎『ストラディヴァリウスを上手に盗む方法』(河出書房新社)
- 小手鞠るい『たべもののおはなし パン ねこの町のリリアのパン』(講談社)
- 上田秀人『竜は動かず 奥羽越列藩同盟顛末』(講談社)
- 浅田次郎『天子蒙塵』(講談社)
- けらえいこ『あたしンち』(KADOKAWA)
- 伊東潤『天下人の茶』(文藝春秋)
- 真保裕一『遊園地に行こう!』(講談社)
- 伊坂幸太郎『サブマリン』(講談社)
- 松岡圭祐『探偵の鑑定』(講談社)
- 堂場瞬一『誘爆 (刑事の挑戦・一之瀬拓真)』(中央公論新社)
- 山崎ナオコーラ『ボーイミーツガールの極端なもの』(イースト・プレス)
- 安藤哲也『崖っぷちで差がつく上司のイクボス式チーム戦略』(日経BPマーケティング)
- 藤原和博『たった一度の人生を変える勉強をしよう』(朝日新聞出版)
- 伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)
- 阿部和重『キャプテンサンダーボルト』(文藝春秋)
- 川上未映子『きみは赤ちゃん』(文藝春秋)