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第二次大戦における名機である十二試艦上戦闘機(零戦)などの紹介から始まり、戦後をけん引した支援戦闘機F-1,F-2、防衛省機のP-X,F-Xの開発、さらには次世代航空機としてのSSTや、民間のホンダジェット,MRJなどなど、盛り沢山の内容。
開発者の本音や時代背景を盛り込みながら、それぞれのエピソードがコンパクトにまとまっていて読みやすいのが◎。
それでいて、淡々と開発の現場をレポートするだけでなく、物語性に富んだ情熱の記録が記されていて、読んでいて実に胸が熱くなります。
特に興味深かったのが、C-1の後継機である次期C-X(XC-2)開発の物語(「二機種同時開発、成功の秘策」)。
子供の頃に入間基地の近くで育った身としては、やはり輸送機にはキュンキュンです。
次期哨戒機P-Xと次期輸送機C-X、大型固定翼機の二機種同時開発というビッグプロジェクトを成功に導いた重工の成功の秘訣は「設計の妥当性」。
共通化を図りながら、各々の概念設計と要求性能を生かし、全体で見た時の「妥当性」を確保する・・・。ものづくりの考え方のひとつを学んだような気がしました。
読後の感想として思うのは、やはり戦中・戦後、そして高度経済成長期の機体の開発と言うものは、文字通り「死に物狂い」だったんだな、ということ。
そして、当時の技術者たちは後世に残せるような重みのある言葉を持っている、ということ。
ひとつだけ引用してみると、
「自分の仕事の範囲を超えて(中略)知ろうとする意識や意欲的な姿勢の技術者たちの集団でなければ、真に良い設計、良い航空機はできない」
「必死さ」から生まれる言葉というのは、何にも増して深く心に刻まれるものですね。