紙の本
ジャーナリズムの現在
2016/07/06 16:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つよし - この投稿者のレビュー一覧を見る
ウィキリークス本の決定版であり、ジャーナリズムの現在地を知る好著である。ウィキリークスと従来型のジャーナリズムがどう連携し、双方にどう影響したかがよく分かる。情報公開のあり方についても、ジュリアン・アサンジの主張、彼に批判的な意見の双方がバランスよく配されていて信頼できる。それにしても日本のマスコミ、ジャーナリズムと欧米のそれとのレベルの差たるや、愕然とするばかりだ。
投稿元:
レビューを見る
たくさん出ているウィキリークス関連本のなかの一冊。この本はアサンジ逮捕までの流れを時系列で捉えているので、全体を見通すには適した一冊だといえよう。一時盛り上がりを見せたアメリカに関わる機密文書、外交文書や、日本においても漁船衝突など、これまでとは考えられなかった形でのジャーナリズムというものが生まれ始めている。確かに信憑性という点では、まだまだ新聞やテレビに劣るのかもしれないが、はっきり言ってそれらでさえも真実を伝えているのかはうかがわしい。であるならば、いかに信憑性のあるものを脚色なく伝えるのかが大事になってくる。その役割を担っていたのが、ここに登場するウィキリークスである。ネットが登場したことで、これまで人の目に触れてこなかったものやことが、クリックひとつで簡単に人の目に触れる時代になった。今の世界では、従来の価値観がすぐに時代遅れの産物に成り下がってしまい、すぐに新しい価値観に取って代わられる。アサンジが投げかけたジャーナリズムの在り方も、数年後には当たり前になっているのやもしれない。そして、また新たなジャーナリズムがこの世界のどこかで芽吹きだすのである。
投稿元:
レビューを見る
ウィキリークスのメディアパートナーとして活動をともにするドイツ「シュピーゲル」誌のトップ記者によるドキュメント本。ジュリアン・アサンジの信頼を勝ち取り、密着取材を許可されて描かれた内容は、明らかに他のウィキリークス本と比べ距離感が近く、非常にダイナミックである。
◆本書の目次
弟一章:「国家の敵」ウィキリークス
第二章:ジュリアン・アサンジンとは誰か
第三章:ウィキリークス誕生
第四章:「コラテル・マーダー」ビデオの公開、マニング上等兵の背信
第五章:大手メディアとの協働、アフガン戦争記録のリーク
第六章:内部崩壊の危機、イラク戦争日誌四〇万件公開の衝撃
第七章:世界が震えたアメリカ外交公電流出
第八章:包囲されたウィキリークス
第九章:ウィキリークスの未来、世界の未来
マーク=ザッカ―バーグがFacebookを生み出したのと同じ2006年に開設されたウィキリークスは、評判経済におけるもう一人の主人公である。透明な社会を指向する彼らの行為は、その類まれな技術力で情報の共有を促進し、国家間のソーシャルグラフに大きな影響を与えてきた。
たびたび投げかけられる、ウィキリークスはジャーナリズムか、情報テロかという問いかけは、ジュリアン・アサンジという一人の男が放つ言動の二面性によるところが大きい。
◆情報テロ寄りの発言
・「大物たちのもくろみを台なしにするのが大好きなんだ。こんな面白い仕事はないよ。」
・「我々は人類の天空に新しい星を輝かそうとしています。」
・「ちょっとひと騒ぎおこそうじゃないか。」
・「僕はこの組織のハートであり魂なんだ。創設者でスポークスマンで、最初のプログラマーで主宰者で、出資者で、残り全部。君がそれを問題だというんなら、失せろ。」
・「CNNは恥を知れと言いたい、ラリー、あんたもだ!」
・「僕の結論は、国際メディアをとりまく状況がどれも悪く、ゆがんでいるから、メディアがないほうがましなくらいだ、ということだ。」
◆ジャーナリズム寄りの発言
・「ウィキリークスはすべての人の友と見られなければならない。なぜなら我々はすべてのに人の個人に、それまで存在しなかった道を発見できるように、我々の知識を提供しようとしているからだ。」
・「コンテンツはそれ自身が語るのであり、説明を必要としない。誰もが検討し分析できるように、開放しなければならない。勝利、自由、真実。」
・「おそらく正義の戦争とやらを始めるよりも、まったく参戦しないほうが、多くの人命を救えるだろう。」
・「戦争の悲惨さと日常化している残忍さへ強い光を当て、僕らの戦争を見る目を変えるだけでなく、現代のすべての戦争を見る目も変えるだろう。」
・「公表は透明性を高め、その透明性がよりより社会へとつながっていく。チェック機能がうまく働けばそれだけ腐敗が避けられ、民主主義は強固になる」
この二面性は数奇な生い立ちによって形成された彼自身の性格によるところも大きいが、意図的にそのように振舞っているようにも思える。つまり、彼は自分自身に色がつくのを恐れているのだ。自���を理解されたくないし、縛られたくもない。政治的にあらゆる傾向を持つ内部告発者に開かれている存在であるために、そして得体の知れなさで注目を引き、リークの影響をさらに大きくするために。
本書はジュリアン・アサンジの、こんな台詞で幕を閉じる。「組織としてのウィキリークスは、非常に安定している。僕たちはそれほど簡単には排除されないよ。でも、ぼく自身自分から仲間はずれになりたがる性格なんだ。これが僕たちの最大の問題だよ」。情報の機密を公開することで、世の中を動かしてきたウィキリークス。その影響で彼らの存在自体も脚光を浴びていくことは、ウィキリークス内部の情報もリークされつつあることを意味する。そしてそれは、ジュリアン・アサンジのさらなる変節を生み出していくだろう。ある意味我々は、勝者なき時代の中へと、突入しているのではないだろうか。
投稿元:
レビューを見る
電子書籍で購入。読み始めてたところ。
購入に際して参考にした記事
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1102/10/news107.html
投稿元:
レビューを見る
ジャーナリストである著者によって、ウィキリークスおよびジュリアン・アサンジの周りで起こったことを客観的にまとめられている。事実を冷静に知るのには良い反面、アサンジの葛藤や内面にはあまり触れられていないのが残念。アサンジの自叙伝もそのうち出るらしいので、そちらに期待。
投稿元:
レビューを見る
正義のジャーナリズムか?
史上最悪の情報テロか?
アサンジの報道パートナーとして活動した
独『シュピーゲル』トップ記者による、決定版内幕ドキュメント!
門外不出のイラク戦争日誌や外交公電など、
各国政府のトップシークレットを
次々と暴露する、前代未聞の
内部告発組織「ウィキリークス」。
以前からこの組織を取材し、
創設者ジュリアン・アサンジの
信頼を勝ち取ったのが本書の著者、
ドイツ「シュピーゲル」誌の
トップ記者である。
密着取材を許され、ウィキリークスの
メディア・パートナーとして
活動を共にする2人。
その過程で、彼らはこの組織の
「偉業」だけでなく、
謎に包まれたシステムの意外な脆さ、
アサンジがひた隠す数々の「汚点」、
そして現代ジャーナリズムが抱える
ジレンマをも浮き彫りにしていく――。
いま世界でもっとも注目される組織の
すべてに迫る、決定版ドキュメント。
本文より
アサンジは大股の軽やかな足どりで駆けこんでくると、すぐにバックパックから
300ユーロの黒いEeePCを取りだした。天板にはさまざまなネット団体のステッカー
が貼ってあるが、どれも擦りきれている。ほどなくこの小型ノートパソコンは稼動
状態となり、アサンジは小さなキーボードを叩きだす。
そんなふうにしてそれからの数週間、私たちシュピーゲル誌とガーディアン紙の仲
間は、間近で眺めることになったのだった――人なつこくて協力的なアサンジとい
う人間を。高度に集中した、ほとんど偏執的なまでのその仕事ぶりを。(……)
投稿元:
レビューを見る
時代の変革期の真っ只中に居る
久しく言われていた市民にパワーが与えられた気がする
この時代を退化させてはならないと感じる
ウィキリークスしかり、フェイスブックが引き金になった独裁政権の崩壊の流れ
しっかり時代を見続け正しいと思える方向にむかわないときほ行動が必要かも知れないと思う
投稿元:
レビューを見る
ウィキリークスの戦いは、インターネットと言論の自由の弾圧をめぐる争いである。知的所有権と、大きな者・富める者 対 小さな者・共感できる者の構図であり、アメリカの強権政治や中東の圧政、その他の不正に私腹をこやす者に対する反逆だ。
しかし、民主主義の観点からだと、その存在は虐げられてきた、小さな人達を団結させ(個人のネットワークを促進)、開放する力がある。
ウィキリークスの今後に注目したい。
投稿元:
レビューを見る
トレンド。話のタネに読んでみた。アサンジ氏に対してメディアや政府が過剰に反応している状況にのまれないように、促してくれてる様な本。スパイとか好き。
投稿元:
レビューを見る
読むのにかなり時間がかかった。ウィキリークスに強く関心がある人にはお勧め。簡単にさわりだけ把握したい人にとっては長編すぎる。
投稿元:
レビューを見る
暴露のプラットフォームと呼ばれるウィキリークス。その成り立ちからメディアとの恊働関係、運営体制を交えつつ、ジュリアン・アサンジの性格、行動などをドイツ人らしい丁寧な記述で解説していく。
ウィキリークスは情報の媒介者ではあるが、情報にどこまで手を加えるか、メディアとどのような付き合い方をするのか、といった点については、まだまだ変化していくだろうし、それによって、評価もまた変わっていくだろう。
本書にも出てくるが、こうした活動を守る動きを「ネット中立性」という言葉で語るのは「違う」だろう。逆にいうと、「ネット中立性」とか「インターネットの自由」というものが何を意味するのかについて、各人が異なるイメージを持ち始めていると感じる。丁寧な議論が必要だろう。
投稿元:
レビューを見る
「近代国家にとっては、秘密を守ることが本質的な部分である」
ウィキリークスの内側、そして本当の実態を知ることができる本である。日本のメディアで報道され、議論された部分はウィキリークスのなした結果に対してにすぎない物が多かったが、これを読むことによりどういう人間たちがどういう意図をもってウィキリークスを成し遂げたのか、という本質的な部分に多く言及している。
私としては当初、ウィキリークスはネットの自由という感覚から生まれたハッカーの楽しみ的なものなのかと、浅い読みしていたが、実際はそういった部分もありながらもウィキリークス創始者のアサンジ氏の強い政治意識が反映されているものでもあり、驚いた。
ネットが政治に及ぼす力はこれからますます肥大化していくのではないだろうか。
投稿元:
レビューを見る
Webから生まれる新しい価値であり、即座に価値判断することに難しさのあるウィキリークス。これまでの社会にとっては異物だから排除のバイアスがかかる。その構図を俯瞰しながら、自分自身の判断基準になり得る良著です。特にこの緊急時に体面ばかりを重んじて事態を悪化の一方向へしか導けない政府をもつ僕らに示唆は深いと思います。
投稿元:
レビューを見る
アサンジがどういった人物なのかや、ウィキリークスのことが詳しくわかる本。洋書を日本語訳したものは直訳調で読みにくい場合が多いのだが、この本はとても読みやすかった。
投稿元:
レビューを見る
結局ウィキリークスは何をしたのか、落ち着いて考えるにはいい一冊と思います。著者がメディア側の人間なのでジャーナリズムのあり方についても考えさせてくれると思います。
しかしセキュリティを考えるとデジタルデータはやはり危ないですね。ボタンひとつでリークが可能だと、罪悪感、ばれたらヤバイという意識が希薄になるのでしょう。