紙の本
現場指揮官の心持を説いた危機管理のバイブル
2022/12/14 17:55
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投稿者:YK - この投稿者のレビュー一覧を見る
現場指揮官に求められる資質、”有事”と”平時”での振舞のモードの切り替えはどうするべきか、について警察庁元幹部である著者の経験をもとに、多くの具体例を挙げつつ解説した1冊です。
”平時”には「After you」、”有事”には「Follow me」が基本であり、普段は控えめにふるまって部下をたて、しかし、いざ事が起こったときは先頭に立って事態の収束にむけて動くべき、との事。その辺りは私も他の本でよく似た事を読んだ記憶もありますが、「なるほど!」と感じたのは本書3章の「非常事態での情報伝達の基本」について述べられた部分です。”平時”の情報伝達、情報の承認プロセスに拘り過ぎて、決定権のある指揮官に情報が伝わらない事は、特に組織としてのルールが定まっているケースではよく起こりうる事態で、非常時には中間の承認等のプロセスを経ずに、決定権のある指揮官が直接、情報を集めて指示する事も重要と述べられています。『「非常事態には冷静沈着に行動せよ」との教えを勘違いして、自ら情報を集めようとせず、情報が来るのを待つような”変に老成した”中間管理職になるな』との表現は非常に共感を覚えます。
本書は中間管理職としての現場指揮官に焦点を絞っていますが、最高司令官となっても、いざ有事には現場指揮官としての振舞いも求められる状況が多々あることから、一定レベル以上の管理職全般に求められる資質を述べておられるように感じました。
本書の元になった単行本は1995年発売で、登場する実例が若干古い印象はありますが、分かりやすく説得力もあります。著者は”有事”と”平時”の切り替えができず、”有事”でありながら”平時”の運用に拘って初動対応を誤った例として阪神淡路大震災の時の村山首相の行動を挙げておられます。あれからもう25年。福島第一原発事故や、昨今のコロナ禍でも決定権のある指揮官や、組織が”有事”と”平時”のモード切替ができていなかった例が次々と発生するのは残念です。場数や経験を踏まないと個人の危機対応能力は伸びないのかもしれないですが、そういう経験をした人からの本書のような伝承を大切にして、私自身も今後遭遇するかもしれない危機に備えるようにしたいと思わされる1冊でした。
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本書にて学んだことは非常に大きかった。しかし大事なことはその実践であると思う。「難しい決断を下す能力があるかないか、これこそ族長と部下を分けるものである」、「義務の遂行に必要な犠牲を払うのがいやなら、決してリーダをいう役割を引き受けるな」、「現場指揮官はハンズオンマネージャたれ」、「平時は紳士たれ、有事は武人たれ」、「自分の顔つきに責任をもて」、「人間学なきものにリーダの資格なし」、「名将の条件(感情移入できる精神構造、先憂後楽)」、「計画立案は悲観的に準備し楽観的に対処せよ」および「不決断は誤った決断より罪が重い」。これらを頭でわかったつもりでも決して満足せず、多くの経験と照らし合わせていくことが重要であるものと強く感じた。
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リーダー、特に現場指揮官としてのあるべき姿を具体的な事例なども混ぜて提示する。
自分で読んだことのあるアメリカ海軍士官候補生読本『リーダーシップ』からの引用も多く、今世界で当たり前な組織のあり方の源流がひとつ(多分アングロサクソン)なんだろうから当たり前だが、リーダーシップの原則では世界で共通するものがあるんだなと感じた。
基本的な先憂後楽、部下への関心、能力主義などの部下との信頼の深め方、それから現場指揮官に必要な決断や士気の鼓舞、情報収集、報告などの技術、加えて計画の立て方や会議の行い方なども論じている。
それと付録として『部下から見た監督者論』とゆう戦後すぐのころに警察で作られたダメ上司レポートもついてる。
リーダー絡みの本を読んでいつも思うけど頭で理解してもしてなくても実践できてればいんだしできてなければダメなんである。これは肝に銘じておかねばね。
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部下を持った現場担当者が読むべき本です。
7~8年前の本になるので、今の時代にはちょっと古いか?と思うとまったくそうではありません。
記述は著者の経験による具体論、かつ平易なので非常にわかりやすい。精神論的なものよりもずっと役に立つのではないかと思います。
「やってみせ、やらせてみせて褒めてやる」
最近は褒めるという行為をできない上司が多いのではないかと思いませんか?
組織で働く人に須らくお勧めです。
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内閣安全担当の佐々氏の危機管理本。
上梓されたのは、阪神大震災後。
今回の東日本大震災を機にもう一度手にとって読了。
有事の際のリーダー像があますことなく詰め込まれており
ビジネスマンには必読の書。
私も20代半ばに、この本に出会い、非常に勉強になった。
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平時の「アフター・ユウ」と、有時の「フォロー・ミイ」の精神は、どのような組織でも当てはめることができると思う。自分の身に置き換えるつもりで、じっくりと読んだ。
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危機にあたるリーダーとはどうあるべきか、がテーマ。筆者は、かつて警察庁で、「あさま山荘」「東大安田講堂」の現場で指揮をとった経験をもつ。そのため、筆者の描くリーダー像は、そういう現場を前提としている。すなわち、軍隊や部隊を組織する、自衛隊や警察の部隊長のような。たしかに、事件事故の現場での警察機動隊や自衛隊の指揮命令系統は毅然としていて、乱れがない。だけどそれは、命令を受けて動ける部下の存在や、装備(準備)あってこそ。リーダーは、危機下だけでなく普段から危機を見据えて、部下を動かしていかなければいけないのだ。
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もと警察庁幹部だった著者が、あさま山荘事件や東大安田講堂
事件などの修羅場を経験するなかで得た危機管理と、有事・平時
におけるリーダーシップのあるべき姿(失格な姿)を纏めた本
です。
様々な実体験をベースに、海軍心得や戦後警察の上司評価レポート
などを参考に管理者のあるべき姿勢を明示しています。管理者と
して、思わずドキッとするような含蓄ある表現も多数ありました。
有事と平時では、まったくマネジメントの手法が異なります。
有事にこそ、リーダーの資質や人間性がもっとも露呈する。
有事の際、いかに適切な判断と行動ができるか。
それは、まさに平時から(ココロ含めた)準備がしっかりなされて
いるか否か、それにつきる気がします。
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指揮官が知っておくべき10の心得
① 孫子の兵法
② フォロー・ミイ(指揮官先頭)
③ 忍耐力
④ 裸の王様になるな
⑤ 叱るより誉めよ
⑥ 統率力の根源は人間愛
⑦ 物欲の自制
⑧ 責任の取り方、取らせ方
⑨ 独断専行の勇気も必要
⑩ 士気高揚こそ、現場指揮官の使命
部下から見た監督者論も、大変参考になった。
我が振りをしっかり鏡で見返したいと思う。
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(2002.02.14読了)(2001.12.18購入)
あなたは部下に見られている
(「BOOK」データベースより)amazon
政治家も官僚も経営者も、誰一人として結果の責任を取らず、問題を先送りし続けてきた姿が世紀末ニッポンのありようだ。人が組織を管理運営するということは如何なることなのか、そして部下を持つということは…。『海軍次室士官心得』『部下から見た監督者論』を基に危機管理問題の第一人者が語る管理職の心構えとありようとは。
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○人に事業を命じ、その終わりたる報告を得たる時、その労を謝する事を忘るべからず。この場合において「ありがとう、ご苦労」の一言は最も廉にして(安上がり)、有効なるものなり(海軍次室士官心得)
○指導者の勇気は、部下をして水火も辞せさらしむるものなり。自ら陣頭指揮に立ちて進は武人の本領にして、勇なき武人は部下を統御しうるものにあらず。もし部下の面前にて勇気に欠くる行為あるときは、指揮者としての権威を失墜す。昔より、勇将の下に弱兵なし。武勇は武人の最も貴ぶべきもの・・・」(海軍次室士官心得)
○部下指導・・・率先躬行(実行)、部下を率い、次室士官は部下の模範たることが必要だ。物事をなすにも、常に先んじ、難事と見れば真っ先にこれに当たり、決して人後に遅れざるべし。また自分ができないからといって、部下に強制しないのは、良くない。部下の機嫌をとるがごときは、絶対禁物である。(海軍次室士官心得)
○平時は紳士たれ(アフターユー ※お先にどうぞ)、有事は武人たれ(フォローミー ※われに続け)(元防衛大学校長 土田国保)
○40歳を過ぎた人は、自分の顔つきに責任がある(リンカーン大統領)
○部下たちは指揮官の表情の変化によって、その時々の指揮官の精神状態を推測し、ときにはその意味を過大に評価して、一喜一憂しているものなのだ。だから指揮官は部下の前で感情を出さないように自制し、つねに平静な気持ちでいるように振舞って、部下を安心させなければいけない。
○私は徹底した、“能力主義”人事をやる。好きでも駄目な者は登用しないし、嫌いでもできる者は使う。(後藤田正晴)
○野戦で雨が降ってきたら、部下とともに濡れている。
○功は部下に譲り、部下の過ちは自ら負う。(西郷南州)
○後藤田正晴 訓示
・省益を忘れ、国益を想え
・嫌な事実、悪い報告をせよ
・勇気をもって意見具申せよ
・自分の仕事に非ずというなかれ、自分の仕事であるといって争え
・決定が下ったら従い、命令は直ちに実行せよ
○悲観的に準備し、楽観的に対処せよ
○現場指揮官は、みんなの意見を一応聞いたうえで、最後に自分の意見を述べ、そしてまとめる姿勢をとると良い。
○茹でたてのジャガイモを渡されたら、すぐに相手に投げ返せ(どこの組織にもいる一言居士や天邪鬼に公然と反対されたからといって激昂してはいけない。ケチをつけられたら、すぐに「貴方ならどうしますか?貴方の代案を聞かせてください。」と相手に教えを乞う形で、問題を相手に投げ返せばいい。)
○ガス抜き・・・烈しい不平不満を、わざと誘導して発言させ、悪口を沸騰させ、爆発寸前の“第一線症候群”(フロントライン・シンドローム)に捌け口を与え、意図的に爆発させて“ガス抜き”を図ることが、賢明な現場指揮官の会議目的の一つ。
※第一線の者は、後方上層部の人たちは“ふんぞり返っている”ものと信じ込んでいる。
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佐々さんといえばあさま山荘の役所広司。は、さておき。
指揮官とは。という理想論めいたものを自らの経験を踏まえて文章にしたためた本。
指揮官になるつもりも予定もない、一会社員として上司部下の立場におきかえれば参考のな事例がてんこもり。時代が違うし。と、思うところもないわけではないが。一本芯を通せ。というの不変かもしらん。
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◾︎2015/08/01読了。
◾︎まえがきでも序章でも村山元首相の阪神大震災のときの対応を批判。世間に知られていない何か重大なことを知っているのだろう。余程腹に据えかねているに違いない。
◾︎一方で、後藤田正晴氏のことについては、師匠として崇めていることが読んでいるとよくわかる。
◾︎リーダーシップとは、一人の人間がほかの人間の心からの服従、信頼、尊敬、忠実な協力を得るようなやり方で、人間の思考、計画、行為を指揮でき、かつそのような特権を持てること。
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著者の実体験の記載が豊富で、そのほかにも様々な実例を紹介しているのでわかりやすく、想像しやすい。
中には著者自身の能力・先天的なものよるものがちらほらあるが、多くは単純ですぐに実践できるものばかり。
・大きな声で
・「ありがとう、お疲れ様」とねぎらいの声
などはその良い例。
部下の叱り方などはそこらへんの啓蒙本などにも書いてありそうな内容だが、実戦を旨とする警察や海軍でもそのようなテキストがけっこう古くから存在しているのにはちょっと違和感。
引用と言えばアッティラ大王の発言とかもちらほら出てきて面白い。古来から偉大なリーダーには「指揮官とはいかにあるべきか?」と自覚している人物が多いのか。
海軍テキストの「外見を整えよ」との項目も面白い。リーダーには、服装にも気を配らなければならない、との項は感動した。中身が良ければ…、などいうのは大きな間違い。これこそまさに実際問題的な現実な即した素晴らしいアドバイスなんだと思う。
あと、三島のところはびっくりした。初めて知った。
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平時のafter you、有事のfollow me.
得たのものはこれぐらいかな。
単に佐々さんの体験談です。