紙の本
この小説に関しては、単行本よりはこのホラー文庫版のデザインが圧倒的にいい。とくに、この中心のうねるような水、やっぱ、こわいっしょ
2004/02/02 20:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜか、お化けとか怪物は夏が似合う。暑い最中、汗だらだらでフウフウ言っている時、肌を出しているそんなときに、きゃー!が一番。これが、寒くて仕方が無い、厚木で着膨れしている冬にというのでは、なんだかピンとこない。うーむ、今の季節に紹介すべきではないな、やっぱり。で、ホラーといえば、舞台は熱帯でしょ。思い切って、アフリカあたりになれば結構、くる。で、国内で言えば九州か沖縄。これはあくまで状況設定にいい、というだけで他意はないので、地方の人、ヨロシク。
ま、それが四国だって大阪だって東京だっていいんだけどね。で、この小説、舞台は「ムーンビーチ」とあるので沖縄だろうか、しかし話が展開するゴルフ場を取り巻く熱帯の描写は、絶海の孤島というのが正しい。洋一とルナの兄妹は父の健一が就職する前の数日を、親子三人で職場のある島の海辺で遊んで過ごしていた。シュノーケリングで洋一が見つけた水字貝が海底に描く亡き母の顔。息子にせがまれて、やっと獲った水字貝。貝殻の身の抜き方を教える島の老人。彼が言い残した謎の言葉。
健一が任される建設途上で放棄されたクラブハウスの管理。会社の工藤に紹介された仕事の仲間、窪木と息子のフミオ。ゴルフ場に突然発生した赤いヒル。建物を覆い尽くす白い木の根。死んだはずの息子の愛犬や、友人、そして亡き妻 美佐子たちが彷徨う熱帯の夜。健一の人生を破壊した神戸の震災。
不勉強なせいで意味はよくわからないけれど、タイトルの『ジュリエット』というのは、効いている。久生十蘭の『ハムレット』を思い出す。それにしても、この作品の解き明かされることの無い暗さは、ホラー大賞にふさわしい。特に、全体に漂う気だるいような瘴気というのは、なかなかのものだ。これで健一の狂気がもっと描かれれば最高だろう。作品の長さは、ホラーに関しては、このくらいがいい。
紙の本
ちょっと不思議で不可解な小説
2009/03/16 17:13
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野棘かな - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めてすぐ、一回目の休み
なんかどこかで読んだようなシチュエーション。
また読み始めて、2回目の休み
こういう展開なのか。
また読み始めようとすると、隣に座っていた知人の女性が
「何読んでるの?ロミオとジュリエット?」と聞く。
「違う違う、ほかのジュリエット、ホラーなの」というと
「キャー、私ホラーは嫌いなの、怖いから」とのたまう。
別に聞いてないから・・・ふうぅ。だるくなって、3回目の休み
次に、読み始めようとすると、しおりが先に進んでいた??
でもそこから読み始めても通じたので読み、4回目の休み。
しかし、それから2ヶ月後、また読み始めると
ちょっと興味がわき、残りを一気に読んだ。
読後の感想は、文章もうまいし、よくできてる話だと思った。
やっぱり大賞をとるだけあって、しっかり書き込まれている。
じゃあ、なんで一気に読まないのといわれると
登場人物に魅力がなかったとしか言いようがない。
会話のシーンなどは、言葉にこだわって表現しているし、心理や情景の描写はうまいと思う。
だが、登場人物に魅力を感じないという点で考えると人物描写がたりないのだろうか。
それとも、人にはあまりこだわらなくて、言葉や描写にこだわっているのか。
この小説自体、心の揺れはあるけれど、大きな振れ幅の事件などはなく、びっくりする怪奇もない。
しかし、そんなことを補うだけの筆力があり、しみじみ心打つ読後感があった。
心理情景描写が心に残るちょっと不思議で不可解な小説だと思った。
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第8回日本ホラー小説大賞大賞受賞作品!
ゴルフ場跡地の管理の職をえて南の島にやってきた親子3人。島に伝わる"魂抜け"の
儀式を偶然目撃してしまった彼らの周りで不思議な出来事が起こり始める……。
ホラーの領域を更に広げたと言わしめた大傑作、登場!
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震災で妻を無くした小泉健次は娘と息子を連れ、南の島に訪れた。建設が頓挫したゴルフ場の管理をする為に訪れたその地は無き妻との思い出の場所でもあった。
息子にせがまれて取った水字貝の中味を抜き、貝殻にしようと浜に出た健次は、そこで老人から魂抜けの話を聞く。貝から中味が落ちるところを見ると暗い思い出を思い出し、その思い出に食い殺されるから決して見るなと――
だが、3人は偶然にもその瞬間を目撃してしまった。
前半部分は陰気な感じが物凄くします。健次と娘のルカが自虐的なので暗いというか重いですね。
3人がそれぞれに抱える負の部分を出して行くので重苦しい感じで読みづらいというのが本音。でもこの暗さが無いと後半が生きて来ないのも良く判る。暗ければ暗いほどいい感じになるという具合ですね。
“出て”来ますが、それが見えるのは本人だけでは無く、プラスαもあり、また何故出てくるのかという理由は面白いです。こういう設定があったのか!という感じでとっても新鮮でした。
何故こんなタイトルなんだろう、とずっと思いながら読んでましたが、読んでみて納得。直接的では無いけれどこのタイトルは良いです。いい感じにリンクしてます。
個人的にエピローグは蛇足かなと思ったり。
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小泉健二は、娘ルカ(中学生)と息子洋一(小学生)を連れて南の島に来た。
妻は、神戸の震災の時に過労で死んでしまってた。
ここは、亡き妻との思い出の地だった。
この思い出のある南の島で健二は、建築途中であるゴルフ場の管理をする仕事をすることになっていた。
島に来て海に潜ると洋一にせがまれて貝を採ってきた健二。
その貝は、水字貝。
楕円形の本体から周囲にあちらこちから六本の折れ曲がった細長い突起が突き出している。
その貝を貝殻にしようとした時に、島の老人に出会う。
その老人は、”魂抜け”と言葉を教えて、中身に紐を付けて石の錘を利用して中身を取る細工をした。
老人は、貝から中身を落ちる所を決して見てはいけないと言った。
だが健二たち家族は、中身を落ちる瞬間を見てしまった。
翌日、仕事のためにゴルフ場の中にある建築途中のクラブハウスに移り住んだ。
この日を境に健二たち家族三人の周りで不思議な出来事が起こり始める・・・・。
第八回日本ホラー小説大賞受賞作品です。
終わり方は、ちょっと感動的でもあります。
しんみりとした余韻と登場人物のそれぞれの思いを書いた作品です。
どこか日本的なホラーを思わせます。
ホラーらしいホラーと言えるのではないでしょうか?
個人的には満足をした作品です。
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「貝殻の復讐」
貝の死ぬところを見ると呪われるという、
伝え話を聞く主人公。まあ、フラグです。
そして、むか~しの嫌な記憶が帰ってくる。
あなたは耐えられない記憶はありますか。
あなたは思い出せない記憶はありますか。
あなたは吐きそうになる記憶はありますか。
きっとあるのでしょうね。
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ホラー小説大賞。でしたっけ?
ホラーといっても怖いとかじゃなくて、どことなく幻想的なとかそういう「非現実」を扱ったものが多くて自分の好みにあったものが多いのが嬉しいです。
今回もそういう前評判を聞いて読んだんですが・・・なんだろう?嫌悪感を招くような表現やストーリー展開ばかりでこれといって読むべきところを感じられなかった。
読んでいて次の展開が気になるということもなく、淡々とページをめくり読み進めるのみで終わってしまいました。
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はいはい、毎度(以下略)。今月どうよ、このクソ本率。といっても、角川ホラーの高いハズレ率からいうと、さほど意外でもありませんが。
父親の失業とともに、小さな島の開発が失敗したホテルの廃墟に住むようになった家族の不思議な体験。
プロットから背景の作り方から、突っ込みどころ満載なのはおいておいて、この作者は非常に真面目なのはよくわかる。文章はそれなりに丁寧に書かれていて、少し前に読んだあさのあつこのように、読んでいる最中に投げ捨てたくなることはなかった。
しかし、はじめから7割位まで、まったくもって何に焦点を当てたいのかわからない散漫な文章に加え、中途半端に夢の話を混ぜて混乱させ、さらに虫やカエルなどの本筋と関係ない部分での恐怖の対象を作ってしまうなど、ボケボケである。
さらに、「ホラーにしなきゃ」と思ってるんだろうけど、のっけからの死体の腐敗、車に踏み潰されるカエルなど、本当に無駄としか言いようのないグロ表現に情熱を注ぎまくっているため、どこに恐怖を持てばよいのかわからん。
また、14歳の女の子視点で一貫していればいい話なのに、父親に視点を移してみたり、挙句に5歳児なんかに視点を移すもんだから、「見えない部分の恐怖」みたいなものが一つもない。
7割方終わったところで、ようやく本題の「思い出に食い殺される」が始まるのだが、こちらは恐怖というよりも、グロを交えた単なるノスタルジーであって、ホラーでもなんでもないというオチ。
そもそも、これまでに死んだ人の思い出っていうのなら、5歳の子供よりも40代のおっさんのほうが多いはずで、プロットなり重点を置く場所について、根本的に間違った小説といえる。
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個人的ホラー特集の一。そろそろ飽きてきたせいもあってか、特に何の感慨も湧き起こらず。作中でも触れらているから意図的に似せられたものだろうけど、だったら別にこれを読まず、”シャイニング”を再読すれば良いじゃん、って気持ちが結局終始拭えないままだった。あと、タイトルからは内容が見えないパターンだけど、読んでみても、結局その必然性は分からんかったし。
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ホラー小説大賞受賞作にしては、純然たるホラーよりの作品。でも、そのせいか今ひとつ物足りない。すでに絶版扱いで、時代に淘汰されてしまった感は否めない。古本でも手に入らなくなった頃に隠れた名作扱いされるのだろうか。