紙の本
朝廷と武家との政治的駆け引きが推理小説的な面白味で展開される。
2016/11/28 10:10
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
前半(上巻)はまだ問題点・対立点が明確でないためまったりしているが、後半になると、武家の武力と富に依存せざるを得ないため官位をエサに様々な策略を練る朝廷と武家の駆け引き、朝廷内部においても権威を巡る争いや人間的な欲に基づく桎梏、武家においては当然ながら天下を狙う覇権争いがあり、それらが混然一体となった政治的駆け引きが推理小説的な面白味で展開される。一般的にはあまり時代活劇の主役とはなりにくい朝廷が主役になっている点が珍しい。権威はあるが力・富を持たない「朝廷」対、権力=武力・富を持つが“権威”のない「武家」との対立関係の中で、朝廷側としては最も力が有り御し易い武士と組むために策謀を巡らし、武士側では他の覇者より優位に立つために朝廷を如何に利用するかを巡って策謀を巡らすのだから、朝廷対武家、朝廷内部、武家内部と相手の裏の裏をかく陰謀だらけで、熾烈な謀略戦とならざるを得ない。本書では、関白・近衛前嗣が京を追われた足利将軍を再興することで体制を確保しようとするのに対して、三好家を武家の中心に据えて権力を握ろうとする左大臣との対立を軸に、非業の死を遂げた皇后の呪いと、双子の姫たちが絡んで複雑な展開をする。読みごたえは十分であるが、朝廷内のしきたり・慣習などの用語や概念が馴染めず少々読みにくいのが 難点である。
さて、面白いと思ったのは、呪術などとも関連するのだろうが「和歌にこめられた霊力」という視点である。如何にも殿上人らしく各所で和歌が引用されるのである。上巻ではあまり気にしなかったが、下巻ではかなりの数が出てくるので徐々に気になってきた。
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筆を折ったような
2023/05/02 08:12
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
筆を折ったような終わり方にがっかりしてしまった。権威とは人々の気持ち 信仰 信心があって成立するもの。そのための道具立てとして伝統 慣習 仕来り 儀式があり、天皇を始めとした公家衆がいる。前巻に引き続き旧来の権威側の近衛前嗣と新興勢力側の松永久秀そして織田信長の対比が際立っている。それはいいのだが、オカルト的な手法の多用はどうも。
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新規購入ではなく、積読状態のもの。2007/11/25~12/8。仙台から山形へのバス中で読了。前継と久秀の暗闘や日本人の天皇観、戦国武将の新しい世界観、怨霊信仰などが程よくミックスされて、非常に丹念に書き込まれている。「関ヶ原連判状」、「信長燃ゆ」と本作での戦国3部作と呼ばれているそうであるが、この後、本作品にも登場した信長が主人公となる「信長燃ゆ」を読むのが楽しみになってきた。
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将軍・足利義輝の挙兵は、三好長慶との和議という妥協に終わり、永禄元年(一五五八)、義輝は帰洛を果たした。なおも長慶を除こうとする関白・近衛前嗣は、正親町天皇即位の礼を機に、勅命をもって諸大名に上洛を促すという奇策に出、若き織田信長を知る。前嗣の計画に、再び反撃に出た松永久秀を操るものの正体は何か?そして太古より神々に仕え、天に対して礼を尽くしてきた朝家が犯した、恐るべき秘密とは?「黄泉の国なくば、朝家の神聖も保たれぬと知れ」―死霊の恫喝に即位の礼の行方は?“戦国三部作”始動。
2009.9.28読了
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前嗣の朝廷を守る戦いは続く。
下巻は、呪術や怨霊といった要素が強くなる。人智を超えた要素が少しあってもいいが、あまりにも多すぎイヤになった。
この物語の続編である『信長燃ゆ』にはそういった要素はあまり無いのに、不自然。 明智光秀がまったく登場しないのも納得いかなかった。
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戦国時代に朝廷を守ろうと奮闘した左大臣・近衛前嗣についてのお話で、「信長燃ゆ」「関ヶ原連判状」と続く、戦国三部作の第1弾となっております。
幕府と朝廷の権威を守ろうと頑張る中、既成の世の中を壊して新しい世の中にしようとしていた松永久秀との知恵比べがなかなか面白いです。
ただ、本のタイトルにもありますが、当時の朝廷では「神」ということに関わり深く、お祈りや縁起、呪いなども登場し、朝廷のしきたりもいっぱい出てきますので、分からないことが多く、読むのは結構大変でした。
↓ ブログにも書いています。
http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_bdee.html
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祥子内親王と采女の産まれの秘密が明らかになり、正親町帝の即位の礼における呪いの預言から話は一気に盛り上がってきます。そして圧巻は即位に際して上洛した若武者・織田信長の登場です。それまでの京都の武家・公家の世界に全くの革命児が新鮮に登場する印象を与えます。そしてそれに好意を感じる松永弾正。主人公の前嗣は豊臣秀吉の養父になったという人物。その若き日の姿など、普段、信長・秀吉が上洛するという立場から見ていただけに、その都の様子はあまり知らない世界であり、興味深いものがありました。
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朝廷は代々、非業の死を遂げた者の怨霊を祀って怨霊を封じて来た。それは死者を悼むというより、現世に災いをなすことを避けたいという利己心からなされたものだ 朝廷は神社を作って怨霊がこの世に現れることを防ごうとしたのである
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歴史フィクションエンターテイメントの真骨頂的な作品。関白近衛前久と京を掌握した三好家で台頭する松永弾正久秀の対決。政治的な対決でもあり、天皇の娘を争う恋敵でもある。しかも天皇の娘と関係すると例の霊感テレパシーが身に付いてしまい、かつ、天皇の娘には怨霊が付いていて、三つ巴か四つ巴かもう訳がわからない。
「等伯」とは作風が全く違う完全にエンターテイメント。それにしてもどの歴史小説でも織田信長の家臣にして謀反を起こし滅びた脇役の松永久秀が、ここでは憎らしいほど強い悪役でキャラが立っていた。ある意味カッコいい!
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朝廷や幕府というような、永く続いた権威が揺らいだ時代に、その権威の根幹と向き合い、同時に来る時代でのそれらの在り方を模索しようとした貴公子の物語…一言で本作を語るとそういうことになるであろうか?そして祥子内親王を巡る、伝奇モノ、恋愛モノという要素も在る…
「永く続いた権威が揺らいだ時代」とさり気なく言ってみたが…或いはそういう辺りに“今日性”が深く根差しているかもしれない…
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どうして、長尾景虎や斎藤義龍、織田信長らが足利義輝の号令により、
上洛を試みたのか、その背景がストンと落ちてきた。
松永久秀と織田信長の関係性もきわめて印象的に描かれていて、
巷間で指摘されるところの、織田信長は松永久秀を特別扱いにしている、という点についても、
よくよく呑み込めるようになっている。
とにもかくにも一読の価値あり。
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戦国時代末期の権威が落ちた天皇家・朝廷と、中立的な将軍、権力を求める武家の微妙なバランスが面白い。
野望を持ちつつも、天皇家ひいては神々を敬う日本人としてDNAの奥底に記憶された価値観を蔑ろにできない様子は、明仁天皇の退位が間際な時期に読んだだけに感慨深いものがあります。
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「神々に告ぐ(下)」(安倍龍太郎)を読んだ。
正親町天皇即位の礼に向かっての緊迫感が凄まじい。
『近衛前嗣』と『松永久秀』二人を軸に信長や長尾景虎をも巻き込み物語は未曾有の高みへと駆け上るのである。
いやー面白かった。
もっと安倍龍太郎作品読まねばなるまい
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前嗣のような人がいることは全く知らなかった。
行動力のある公家。目の付け所がおもしろい。これからの
前嗣がどうなるか知りたくてWikipediaを見たがよくわからない人でした。
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#読了 下巻はもっとファンタジーだった。呪詛が絡んできたり、テレパシーでがんがん遠方の人とやりとりしたり。歴史小説というより、歴史ファンタジーかな。びっくりしたまま読了してしまったので、いまいち入り込めず……残念。
近衛前久と松永久秀がとても魅力的に描かれていて、さらに二人についても知りたくなったのは良かった。