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中国の故事『人間(じんかん)万事塞翁が馬』をもじって、
『丙午』生まれの『はな』を主人公にした戦中戦後の下町小話。
『はな』と『おとうちゃん』の馴れ初めから、
『おとうちゃん』の出征、おめかけさん問題、
『おとうちゃん』の死まで、
下町のにおいをぷんぷん漂わせながら、
落語のような心地よいテンポで話が進む。
さらっと読み飛ばすその中に、
芝居や落語の知識が満載されている(らしい)。
前半は『おとうちゃん』の一人称語りが無く、
ミステリアス『おとうちゃん』であった。
そのタッチで話が終了するかと思ったが、
後半からは良くしゃべるようになった。
その間に、
確実な分岐がある気がしますが、どのような意図だったのでしょうか?
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第85回直木賞。
戦時中、青山家に嫁いできたハナの生涯。
弁当屋を営む青山家で、夫が兵隊にとられたり、おじいちゃんが偏屈だったり、息子が悪ガキだったりする。まるでエッセイのような小説。登場する次男・幸二はきっと青島幸男本人じゃなかろうか。
何かにつけて、周辺の人たちの言葉は粋でユーモアがあって、落語調だ。東京下町の人間関係が表われている。
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青島幸男さんは才能の塊のやうな人でした。
放送作家出身なのですが、それに飽き足らず様様な、華華しい活動を見せてくれました。
私の年代ですと、俳優として意地悪ばあさんを演じてゐた頃が印象に残つてゐます。それから、これは自分たちより上の世代がリアルタイムで接してゐると思ひますが、クレージーキャッツに提供した作詞の傑作群。私はクレージーが大好きでして。
政界進出後も、二院クラブ時代は勢ひがありました。ま、都知事としてはごらんの通りでしたがね。
そして小説家としての活躍。青島幸男の歴史の中では、小説を書き始めたのは遅い方でせう。
『人間万事塞翁が丙午』は直木賞を受賞するのですが、何と本作が処女作だつたのです。驚きですね。
主人公「ハナ」は青島さんの実母がモデルださうです。ハナ肇とは関係ないやうです。
昭和12年、支那事変の年に、ハナの夫・次郎に召集令状が来るところから話が始まります。
ハナの家は東京下町で繁盛してゐる弁当屋さん「弁菊」。ここを舞台に、うるさくて人情に厚く、口は悪いが素直で飾らない人たちが入り乱れて、この小説を盛り上げます。
義父・義母との確執、夫の俺様ぶり、二人の息子の将来などハナはいつも悩まされながら、何とか戦中・戦後を嫁として、妻として、母として乗りきり、たくましさを増していくのでした。
そんなに苦労してきたのに、嬉しい孫も出来たのに、それなのに、ああ...
書き方によつては、まことに暗い小説となりかねない内容なのですが、深刻さは感じさせずカラッとしてゐます。
何よりも文章のリヅムが良い。畳み掛けるやうな会話のテムポも心地良いのであります。テレビで仕事をしてきた青島さんならではの小説と申せませう。
残念ながら絶版ださうで。しかし入手は比較的簡単であります。
では。
http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-112.html
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ふとしたきっかけで読んだが、いい小説ですね。戦前~戦後の東京下町の、騒々しくも人間味あふれる庶民の暮らしぶり。みんなそれぞれに自分勝手だけど、ここぞという時にかばい合い助け合う姿。死は、何の前触れもなくいつも突然に訪れる。親孝行は親も自分も元気なときにしておかねば……。
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第85回(昭和56年上)直木賞受賞作。昭和初期、東京下町の弁当屋に嫁いだ女性とその家族の浮き沈みを描いた作品。落語を聞くようなテンポある文章で心地よく読み通せる。野暮なことを嫌い、強がり、とぼける、江戸っ子の言動が活き活きと描写されてあり楽しめる秀作。おすすめ。
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時代を家族と共に駆け抜けた話。
人生楽あり苦がもっとたくさんありですね。
戦中戦後の雰囲気が間近に感じられた
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再読
丙午生まれの女性視点で昭和前期の一家族を描いた自伝的時代もの
作者のキャラクタからとっても色眼鏡掛けられて見られる本作だが
文句なしに良くできた傑作
笑いも悲しみも昭和の匂いも狙いすまして描かれているのに
一切隙がなくそれでいて照れもちゃんと感じさせる絶妙な塩梅
主人公を含めて各キャラクタへの距離感が見事
現在の放送作家ごときには真似できない圧倒的境地
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「青島幸男」の処女小説作で第85回直木三十五賞(1981年)受賞作品の『人間万事塞翁が丙午(にんげんばんじさいおうがひのえうま)』を読みました。
「道尾秀介」作品の『向日葵の咲かない夏』読後… 良くできた作品だと感心しつつも、後味の悪さが残っていたので、心が癒される作品を読みたくなり、本書を選択しました。
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激動の時代をたくましく生きた庶民たちの哀歓を、いきいきと描き出した、笑いと感動の下町物語。
直木賞受賞。
呉服問屋が軒をつらねる東京・日本橋堀留町の仕出し弁当屋「弁菊」。
人情味豊かであけっぴろげ、良くも悪くもにぎやかな下町に、21歳で嫁いできた「ハナ」は、さまざまな事件に出遭いながらも、持前のヴァイタリティで乗り切ってゆく。
―戦中から戦後へ、激動の時代をたくましく生きた庶民たちの哀歓を、自らの生家をモデルにいきいきと描き出した、笑いと感動の下町物語。
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下町の弁当屋「弁菊」へ嫁いだ「ハナ」の人生が活き活きと描かれた人情味溢れる物語で、以下の5章で構成されています。
■昭和十二年秋
■待人来タラズ
■勝利ノ日マデ
■1949・夏
■おしまいチャンチャン
亭主の「次郎」が二度も召集され、その間、弁当屋を切り盛りしたり、
空襲に備えた建物疎開で自宅兼弁当屋を追い出されたり、
義父と亭主の妾に悩まされたり、
息子の悪童に振り回されたり、
戦後の混乱期に旅館を始めるが、トラブル続きでなかなか経営が軌道にのらなかったり、
と、波乱万丈な人生ですが、下町に生きる仲間等に支えられながら、強く逞しく生きていく「ハナ」の姿に共感しながら一気に読めました。
愉しく読めましたね。
「ハナ」は丙午生まれということで、結婚する際にひと揉めあるのですが、、、
私もひと回り違いの丙午… 60年も違うのに、迷信は生きていたようで、極端に人口が少ない世代なんですよねぇ。
次の丙午まで、あと13年… そのときも出生率が低くなるのかなぁ。
あと気になったのは、妾について家族や世間が寛容なこと… 当時は姦通罪という制度が残っていたと思うので、不倫については御法度だと思っていたんですよね。
ちょっと不思議な感じでした。
今ではなかなか理解できない感覚ですね。
そういえば、「ハナ」は「青島幸男」の母親がモデルなんだそうです。
「ハナ」のバイタリティのある生き様は、「青島幸男」にキチンと伝わっているんでしょうね。