紙の本
博物館を支え、築いてきた人たちのエピソード
2021/06/01 22:00
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投稿者:amisha - この投稿者のレビュー一覧を見る
ずっと読みたかった一冊。
元学芸員が語る、大英自然史博物館の知られざるエピソード集。
三葉虫が専門の著者。収蔵庫を舞台に繰り広げられたアカデミックな標本以外の珍品噺も収録されている。この本は、博物館の伝統を築き上げた人々の歴史と数々の逸話の標本箱でもある
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博物館の魅力は、収蔵しているものではなく、来館者に見えないところで働く人々によって決まるそうだ。また、その土地の博物館を見れば、そこの社会がわかるとも言われる。それなら、世界最大級と言われる大英自然史博物館の実像は、一体いかなるものであろうか?本書は、古生物学の世界的権威である著者が、30年間過ごした古巣の素顔と、その住人たちの姿を綴った、貴重なアーカイヴである。
◆本書の目次
第1章 舞台裏への入り口
第2章 「分類」との闘い
第3章 雄弁な化石たち
第4章 恵みの動物界
第5章 美しき植物劇場
第6章 小さなつわものども
第7章 眠れる原石
第8章 「ノアの方舟」の軌跡
第9章 変わりゆくミューズたちの館
大英自然史博物館には、古生物研究部、鉱物研究部、動物研究部、植物研究部、昆虫研究部という5つの研究部があるそうだ。そこで働く研究者たちと大学などで働く研究者には、決定的な違いがある。それは研究の全てが、分類という使命のためになされているということだ。分類によって作られたコレクションこそが、博物館の個性であり存在目的なのである。よって一般的に、博物館で公開されているスペースは、全体の面積の半分にも満たないという。
展示室の裏側に広がる巨大迷路のような世界、そしてそこに生息する住人たち。その人間模様が前半のハイライトである。自分の「種」に一生を捧げる人たちの奇人変人ぶりは、群を抜く。クジラのプロは、クジラの耳垢でその年齢を瞬時に読み取り、アリの研究者は働きアリのように勤勉で、甲虫研究家の中には堅い殻に閉じこもり、日光を避ける人もいたそうである。
また、研究以外での変人エピソードも盛りだくさんである。ある植物研究部長は、エレベーターで女性と乗り合わせると、蔓植物がものに巻きつくように、下半身に手が伸びてきたそうだ。また、別の研究者からは死後に一束の検索カードが見つかり、その一枚一枚にベッドで征服した相手の名前が記され、恥毛が貼りつけられていたという。分類学者の本能(?)とは、恐ろしきものである。
一方で後半の興味の対象は、このような奇人オールスターズを、どのようにガバナンスして来たかという点にある。その統治構造が大きく変化するのは、サッチャーの時代。「ビジネス優先」主義へと舵を切った大英自然博物館は、財務的な見地も考慮し、テーマパーク的なものへと変貌を遂げる。しかし、大英自然史博物館への注目は、次第に薄れていってしまう。この裏側では、非生産的とレッテルを貼られた多くの研究者たちが、博物館を跡にしている。
突き詰めて考えると、博物館や分類の役割は、一体何なのかというところに行きつく。それは「地球上のあらゆる生物種を知る」というところにある。Googleの使命と言われる「世界中の情報を整理する」にも近しいものである。しかし、加速度的に増える一方の検索情報に比べ、生物種の方は自然環境破壊により、絶滅の危機に頻しているものも多い。多様性の保持は、緊急性を孕むものであり、ここに合理性を持ちこむことは得策ではない。
「自然��における尊い生命の多様性を保持するためには、舞台裏の人間の多様性を確保する必要がある」というのが、著者からの隠れたメッセージであるだろう。軽妙な奇人トークの合間に、神妙なメッセージが織り込まれており、胸に迫る一冊である。
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第1章 舞台裏への入り口
第2章 「分類」との闘い
第3章 雄弁な化石たち
第4章 恵みの動物界
第5章 美しき植物劇場
第6章 小さなつわものども
第7章 眠れる原石
第8章 「ノアの方舟」の軌跡
第9章 変わりゆくミューズたちの館
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大英自然史博物館の裏側。
やっぱり、死ぬまでに一度は行ってみたい。でも、一回じゃ絶対に全部は見切れないだろうなぁ。
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三葉虫、昆虫、宝石、キノコ、ネッシー!?等々どのコレクションにも逸話あり。そして研究者は所蔵品以上?に多種多様…いいなあ博物館。読み応えのある一冊でした。
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なんとも魅力的な題名。
なんだか数十年前の特撮映画の題名みたい。
中身は大博物館の逸話あれこれのようです。
大英自然史博物館旧館の地下に「乾燥標本収蔵1号室」はあるそうです。
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大英博物館の研究者たちのエピソードと同時に、博物館の歴史や分類学等の歴史も軽く辿れるのが面白い。
ただし、その分同一人物のエピソードがあちこちに散りばめられることになっていて、少々人物を把握し辛いところがあるように思う。
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博物学とそれを研究する人間への鋭い観察眼とユーモア溢れる視線で展示室の奥に隠された世界を見せくれる。財政を理由に切り捨ててはいけない研究はいっぱいある。
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博物学への愛、つまり「分類したい」という欲求が深い人なら、★がもう2つ上がると思う。博物館と、その研究員についての本であり、生物学や進化論の本と期待すると、ちょっと方向を間違える。というか、私がそうでした。
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博物館の舞台裏、学芸員の生態を描いたもの。博物館というと見せ物的な施設だと考えがちだけれど、本書では研究施設としての側面を大きく取り上げている。
魅力的な、少なくとも興味をそそる、異才と異彩の持ち主の列伝。
もとより非常に面白い本であり、生物の分類学についての知識があればより楽しめるかも知れない。
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大英博物館ではなく大英「自然史」博物館。
ちょっとなじみが薄いので全体に無味乾燥に感じるが、飛ばし読みして雰囲気を感じるだけでも、博物館の品質が国家の品格であることが理解できる。
国立科学博物館は大好きなのだが、もっと欲張って欲しい。
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大英自然史博物館に巣くう、浮世離れした研究者たちを語った本。
キリンの頭がずらり15本くらい並んだバックヤードの写真とか、〝送られてきた標本を包んでいた紐〟まで取っておいた学者の話とか、どこを切り取っても興味深い話ばかり。
イギリスらしい皮肉も効いてて面白かった。
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大英”自然史博”物館の舞台裏の話。 ずっと挑戦しているが、読み進められず、とりあえず断念。レビューを見ると、面白いらしい。 最初の山を越えてなかったのだろう。いずれまた。
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著者いわく博物館の魅力は収蔵品ではなく、来館者に見えないところで働く人々で決まるそうだ。プロフェッショナルの世界には変わり者も多く、熱心が故の奇妙な行動の数々から博物館の裏の歴史を垣間見ることができる。
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大英自然史博物館の学芸員である筆者がその裏舞台で活躍する、してきた人たちとその人たちを取り巻く政治的な、社会的な変化を書いた一冊。 学芸員という仕事に興味があるので読み始めたが、長期的な目では大変必要な仕事であるにも関わらず、短期的な利益を上げられないため、境遇が悪い状態であるのは悲しいことだ。日本ではキュレーターの仕事も学芸員に含まれているので余計に仕事は多いだろう。 いつか分類学の長期的研究が必要であると理解を示してくれる社会がやってくるのであろうか。