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ザ・ラストバンカー みんなのレビュー

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一般書

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みんなのレビュー106件

みんなの評価4.0

評価内訳

106 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

冷めた筆致で淡々と描かれる「ザ・ラスト・バンカー」による日本金融の裏表

2011/12/26 17:19

11人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る

元大手銀行頭取の描いた回顧録といえば「苦学力行し刻苦勉励した青年が独力を重ね運にも恵まれて頭取への階段を駆け上がった成功譚」であり「素晴らしい人との出会いに恵まれた満開の人生の自慢話」と相場が決まっている。先輩も素晴らしければ部下も素晴らしい。だからこそ今の自分がある。「皆さん、ありがとう」という訳だ。そういう回顧録と思って本書を手に取ると、その「期待」は見事なまでに裏切られる。本書に出てくるのは「自慢話」とはおよそかけ離れた「不良債権処理」に次ぐ「不良債権処理」の話であり、そんな「銀行人生の裏街道」を歩いていた著者が、ふい頭取を拝命しても、1990年代の銀行頭取を取り巻く雰囲気は、それこそ雲上人、お公家さん的オーラを漂わせた高度成長時代の銀行頭取とはかけ離れた「血生臭い戦場を駆け回る野戦指揮官」みたいな状況で、その硝煙漂う戦場の緊張感がひしひしと文面から伝わってくる。そんな本なのである。

本書の前半の多くはNHKドラマ「ザ商社」でも取り上げられた総合商社安宅産業の倒産と、それにまつわる不良債権処理に多くが割かれている。住友銀行の大阪本店には、しこった融資案件の処理を行う特別な部署があった。著者が長く在籍した融資第三部というのは安宅産業を専門に扱うセクションだった(ちなみに融資第二部はマツダを扱う部署)。住友銀行は、当初、安宅を住友商事に持ち込むが住友銀行の樋口広太郎(のちのアサヒビール会長)と住友商事財務担当役員の折り合いが悪く、話が住商でなく伊藤忠に持ち込まれたなどというエピソードの紹介もある。この伊藤忠というのが食えない商社で、唯一の狙いは安宅が持っていた新日鐵商権のみで、他の事業については基本的に引き取り拒否同然のスタンスで臨んだというから、あっぱれといえばあっぱれだ。安宅のオーナーに目をかけられていた若き女性ピアニスト(NHKのドラマでは夏目雅子が演じた)が実は中村紘子だったとか、安宅オーナーが会社の資産を使って買い集めた骨董品を大阪市に引き取らせ東洋陶磁美術館を新たに設置したとかのエピソードもちゃんと書いてある。

それでも「安宅」が住友銀行にとっての成功体験だから、筆致はまだ明るい。中盤の大半を占めるのは、住友銀行含む日本の大手銀行の全てが主役を演じ、日本全体を巻き込んで奈落の底へと転落している、ご存じ「バブルの発生とその崩壊」を描いた部分だ。ここでは悪名高い「イトマン事件」に住友銀行は深く関わっており、なかでもイトマンの絵画投機に住友銀行頭取の愛娘が深く関与していたことから、事態はやがて住友銀行会長磯田一郎の解任にまで発展していくのだが、その全部が、かなりの程度あけすけに、しかしあくまで筆致は淡々と描かれていく様は圧巻だ。磯田一郎といえば安宅処理で名を挙げ、1982年には米金融専門誌で「バンカーオブザイヤー」に選ばれて一世を風靡した名経営者だった(少なくとも当時は)。しかし、「向う傷は問わない」という強気の経営は、やがて銀行界全体を巻き込むバブル景気の元凶の一角をしめることになる。関西がベースで首都圏に基盤を持たない住友銀行は首都圏に攻勢をかける。この住銀の攻勢をまともに受けたのが東京都の金庫番=富士銀行で、両社の熾烈な競争は、F/S戦争とも呼ばれた。「上がるから貸す・貸すから上がる」と東京を起点に日本の地価は天井知らずの、文字通り天文学的な上昇をはじめ、そこには大量の闇世界紳士も参加し、日本経済全体を蝕んでいく。バブルの発端は東京神田神保町から始まったという噂がある。神保町の土地が坪一億円で取引されたが、それは住友不動産による神保町再開発の為の土地の買い占めが契機で、その住友不動産に湯水のごとく資金を供給し続けたのが住友銀行だった。当時も今も不動産には「買い替え特例」というのがある。土地を高値で売り抜けても、その代金で別の土地を買えば土地売却益に課税しないという土地取引独特の優遇措置だ。こうして神保町の猫の額のような土地を十億円で売り抜けた「元古本屋」「元酒屋」は吉祥寺、国分寺、国立、府中の住宅地を、文字通り二億、三億、四億で買っていく。そうはさせじと不動産屋が先回りして住宅地を買いあさり、神保町の土地長者が買いに来る頃には、既に武蔵野の住宅地は五千万円のものが1億に、1億のものが2億にと一夜にして値上がりしていた。私の実家は国立市にあるが、隣の家が2億6千万円で売りに出たので観に行った記憶がある。1988年のことだ。こうして神保町発の不動産バブルが全国に波及し、サラリーマンのマイホームの夢は破壊される。ここで諦めず、巨額の住宅ローンを組んだサラリーマンは、やがてバブル崩壊と共に甚大な損害を受けるが、バブル崩壊から20年経った今も、まだその傷は癒えることなく鮮血をほとばしらせているが、その元凶の一つが磯田一郎率いる住友銀行であったことが間違いない。そしてその住友銀行自身、磯田の子飼いの河村に任せていたイトマンが闇紳士に乗っ取られ、強大な資金吸い上げマシーンと化して住友銀行本体の基盤を揺るがしかねないほどに肥大していくのだが、事件の詳細は本書に書いてある通りだ。ひとつには娘の問題があった。見合い結婚で住友系列の大手金属会社の会長の息子と結婚するも離婚し、その後、アパレル経営者と再婚し、セゾングループの絵画宝飾品販売会社「ピサ」にて絵画取引に手を染めるのだが、この娘が闇社会の人間に手玉に取られていたことが事態をややこしくする。世界から認められたバンカーも、不肖の娘には意見することが出来なかったのだ。ここに人間の悲しさを覚えるのは私だけではあるまい。

ラストは日本郵政社長として政治のゲームに翻弄される下りである。「ザ・ラスト・バンカー」西川善文にとって、この後半部分は、文字通り「余計な部分」であったのではないか。鳩山邦夫というビジョンも教養も無い政治家の目立つ為だけのパーフォーマンスで、天才政治家小泉純一郎様が成し遂げた偉業、郵政改革はおもちゃにされる。まず最初にターゲットとされたのが「かんぽの宿」だ。鳩山は「こんな優良物件がなんでこんな安値なんだ」「こんだけコストをかけた豪快施設がどうしてこんなタダ同然で売却されるんだ」と喚いたが、本書で西川氏が述べている通り、「かんぽの宿」という不良債権の処理にあたり、当初自民党がつけたのは雇用の維持だった。辺鄙な土地に建てられたどう見ても赤字の宿は、本来全員従業員を解雇して閉鎖するのが筋。しかしそれは地域に与えるダメージが大きいから許さないとなれば、都心に立地する優良物件とセットで買ってもらう。これをバルクセールという。こんな不動産取引のイロハのイを無視して、赤字続きの田舎宿に、やれ巨額の建築費がかかっている式の駄法螺を吹いたのが鳩山邦夫という政治家だ。丸の内にある郵政本社ビルの売却にも難癖をつけてビルの工事の嫌がらせをする。それに河村たかしが1枚かんでいたとは本書を読むまで知らなかった。

今、郵政は迷走している。このままだと無責任経営体制の下で巨額の赤字を生み、やがて巨額の国民負担を生むことになるだろう。西川さんの無念がうかがわれる。

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紙の本

かつて「最後のバンカー」と呼ばれた男がいた

2020/09/26 08:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

スーパーで働く人はスーパーマンという笑いを誘う喩えもあるが、銀行員のことをバンカーと呼ぶ時は仕事に対する誇りのようなものがあったような気がする。
 かつて「ラストバンカー」と呼ばれた元住友銀行頭取で、その後は初代の日本郵政の社長となった西川善文氏が9月11日に亡くなった。82歳だった。
 亡くなる9年前の2011年秋に刊行されたのが、副題にあるように西川氏の「回顧録」で、バンカーとして生きたその日々が綴られている。
 西川氏は銀行員として支店営業に携わったのはわずか4年だという。つまりそのほとんどは、戦後の日本経済史に記録される安宅産業の破綻処理、イトマン事件の処理、そしてバブル崩壊後の不良債権処理だった。
 その間にかつては花形であった銀行員も厳しい現実に直面し、潰れることはないといわれた金融機関がいくつも消えていく。
そして、合併統合を繰り返し、今では記憶となった銀行名も多い。

 西川氏はこの本の中で「バンカーの責務」をこう記している。
 「健全な経営をすることによって、お客様から預かったお金をきちんと運用し、内外の経済発展に寄与すると同時に、銀行で働く人々の待遇をできるだけ改善し、その士気を高めて競争力を上げていくこと」だと。
 まるで今人気の銀行員が主人公のドラマの中の台詞のようだ。
 西川氏が関わった仕事のことが書かれているが、もちろん書かれなかったこともたくさんあるだろう。
 それこそ墓場まで持っていくような話の数々があったにちがいない。
 いつか誰かが歴史の表舞台に出すことがあったとしても、この西川氏の「回顧録」の意義は大きい。

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2011/10/17 21:47

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2011/11/14 22:34

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