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紙の本
誰もが皆、足掻いている。
2003/03/23 01:16
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投稿者:なかたかな - この投稿者のレビュー一覧を見る
魔法が、科学と同等もしくはそれ以上に普及した、現代社会に酷似した世界での物語。主人公レイオット・スタインバーグも、魔法を行使する人間——魔法士の一人である。
本来、魔法士になるには一定の資格を必要とするのだが、彼は公的な資格を全く持っていない。非合法の身でありながら、魔法の中でも最も危険で破壊力の大きい攻撃魔法を駆使し、戦術魔法士(俗称ストレイト・ジャケット)として、敵を——“魔族”を倒すためだけに闘う。何物にも関心を寄せず、何事にも執着せず、自分の人生さえ杜撰に扱う無気力さでありながら、生死を賭けた闘いの中でだけ己が「生」を実感し、勝利をもぎ取ってくるのだ。
だが、彼が敵とし戦う“魔族”も、実は人間なのである。人間が一定以上の魔法を濫用し、限界を超えて壊れてしまった姿——悪趣味なまでに変形した肉体を引きずり、剥き出しの欲望を曝け出し破壊の限りを尽くす、言わば「人間の馴れの果て」。油断すれば誰だって、レイオット自身だって魔族になってしまうかも知れない。そんな現実を全て承知した上で、彼はずっと戦い続けている。
この巻はシリーズ第一作目という事で、主人公レイオットと、彼の助手であり究極の傍観者でもあるカペルテータの二人と、労務省魔法管理局二級監督官、ネリン・シモンズ嬢との出会いが描かれている。
無気力なレイオットやあらゆる感情が欠落しているらしいカペルテータに、生真面目で喜怒哀楽の激しいネリンは、如何な影響を与えるのか。窒息する程に不安要素ばかりが蔓延する世界の中で、この出会いは一体どんな意味を持つのか。これから、何がどう変わっていくのか。
この物語に、完璧な人間は一人も居ない。それぞれに暗い過去の影を引きずり、時にはひどく後悔し、自分自身を嫌悪しながらも、足掻いて、傷付いて、模索を続けるように生きている。
だからこそ、皆がそれぞれに個性豊かで魅力的なのだ。傷付く者だけが持ちえる輝きや翳りを持ち、暗に読み手に「何か」を示唆している。それが一体何なのか、読み手によって違うだろう。
一見、近未来的ファンタジーの様相を呈しながら、その実「人間」そのものを描いている。好みが激しく分かれる作品でもあるが、まずは一巻を手に取ってご覧になられることを、私は強くお勧めする。
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