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『剣客商売』版「おしん」
2012/08/08 14:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
『剣客商売番外編 ないしょ ないしょ』は、『剣客商売』版「おしん」である。
こちらの「おしん」の名はお福、ところは、越後新発田から始まる。
新発田といえば、『剣客商売』シリーズ中の短編『剣の誓約』で、秋山大治郎に片腕を斬り落とされた伊藤三弥の父伊藤彦太夫が側用人として仕えていた藩だが、この『ないしょ ないしょ』には、彼らの影もない。なにしろ、あの『剣の誓約』事件より十年も前の話である。
それにしても、最初にお福を襲った事件には、怒りを覚える。物語が進んで、お福は成長するとともに、この事件を乗りこえていく。最後には相手を赦してそばへいくのだが、わたくしとしては、それでいいのか、という疑問がある。でも、相手を赦せないままで、幸福をつかもうとするのもまた、むずかしいかもしれない。
お福は貧しく、親も家も無い。それでも、次々と良い人に出逢い、成長していくが、また、次々と彼らとの死別を繰り返す。そのほとんどに、ひとりの凶悪な剣客が関わっている。お福は彼への復讐を考える。
>「女だてらに手裏剣をやっていることなど、世間に知れたら、嫁のはなしもなくなる。よいか、このことはないしょ、ないしょだぞ」
手裏剣といえば、『剣客商売』本編に、「手裏剣お秀」が、三冬とならぶ武闘派ヒロインとして活躍する話がある。あのお秀は剣術の道場の師匠をしていて、手裏剣の腕前も隠していなかった。
こちらのお福は、女中として働いているので、手裏剣の腕前を隠している。女中とはいえ、主人から娘か孫のように愛され、料理や、手裏剣まで仕込まれて、いつしか、大きな料亭のおかみになっても動じないほどの、おとなの女性になっている。まさに「おしん」である。
お福と主人の三浦平四郎老人との関係には、どこか、秋山小兵衛とおはるの関係をほうふつとさせるところがあるが……。その秋山小兵衛も三浦老人の友人として、登場する。このときはまだ五十歳代で、いままさに、四谷の道場を閉じて、鐘ヶ淵に隠棲しようというところであった。
その秋山小兵衛とお福も、気が合って、ゆびきりげんまんなどをしている。(いいのか、おはるにばれたら怒られるぞ……)
そして、ここに小兵衛が登場してきたからには、たぶん、そうなるだろうという予想通り、彼が、お福の敵討ちを手伝ってやることになる。
この物語は、お福の恩人たちが次々とひとりの男の凶刃に倒れるのが、いささか、不自然だと思えないこともないけれども、最初の不幸な事件を乗りこえ、復讐もまた乗り越えて、お福が、なまえどおりの幸福をつかんで、最期に到り、単純な復讐譚になっていないところがいい。
>「みなさん、お先に……」
という、お福の最期の言葉は、『剣の誓約』の嶋岡礼蔵の「これまで」と並んで、この『剣客商売』シリーズのなかで、私が最も好きな、とわのわかれのことばだ。
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剣客商売外伝。
題材としてどろどろ暗くなりそうな話なんだけど、結構軽快なノリだったする。
相変わらず微笑ましい人物描写が良い。
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越後、新発田の剣客・神谷弥十郎の道場で下女として働いていたお福は、主人が暗殺されたため、下男の五平と一緒に江戸へ出る。が、新しい主人の御家人・三浦平四郎も、そして五平も、神谷を殺した無頼浪人の凶刃に倒れる。三浦に手裏剣の手ほどきを受けていたお福は、三浦の碁敵・秋山小兵衛の助太刀をえて、見事、仇を討ち果たす。数寄な運命を背負った女の波瀾にとんだ成長の物語。
【感想】
http://blog.livedoor.jp/nahomaru/archives/50613037.html
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中学校時代から何度も読み続けている池波正太郎もの。
たぶん一番最初に読んだのがこのシリーズ。
食べ物に対する興味も、江戸時代の言葉、作法も全てこれで覚えた。
読まないと人生損だぜ。
同じ時期から池波正太郎が好きだった人を人だけ知っている。
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剣客商売シリーズの中でも一番面白いかも!
主人公が剣術をやってるわけでない若い女性だから、という理由もあると思いますが。
不幸な身の上でたくましく生きていく少女、最後は本懐を遂げて・・・ってね。
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「剣客商売」シリーズの番外編。
やはり秋山親子が主人公としてどんと前面にでているほうが心躍る。
ストーリーは不幸な運命のもと生きるお福という女性の話。
両親を早くになくし、奉公先の主人が2度も同じ男に殺され、大切な人も殺される。
やはり池波正太郎は読みやすいのでするする読んでしまう。
つらい経験はおおい主人公だけれど、決して不幸ではないと思えるところがいい。
お福はいい出会いを沢山している。
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全1巻。
剣客商売番外編。
若き日の小兵衛ちょい役。
主人公は本編とあまり関わらない女。
不幸な女が幸福をつかんで生き抜く話。
基本的にいわゆる時代小説。
ただ、ファンはニヤリな感じ。
最後の感じとか良かった。
ああいう死に方できるように生きたい。
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剣客商売 番外編もこれで最後
主人公は不幸な身の上の少女
当然様々な苦難の上に成長を描いています。
実を言えば、私はこういった不幸な少年少女の物語が嫌いです。
どうせなら鹿鼎記の小宝のような話が好みだったりするので評価は低めです。
特徴的なのはこの少女の特技
根岸流の手裏剣術と聞けば、誰も手裏剣お秀を思い浮かべることでしょう
番外編なので小兵衛は前作よりさらに出番が少ないです。
でも、良いところを持っていきますねぇ
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何度読んでもウルウルする剣客商売番外編。
人と人との関わり、生き様について考えました。
*登場人物* お福、三浦平四郎、秋山小兵衛、小川宗哲、倉田屋半七、五平
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剣客商売 読んだことはありませんが、
とても面白かったです
たびたびある食卓の様子でも 柔らかい印象があります
池波正太郎ファンになりました
女性主人公もの あと5冊あるそうなので、そちらも早く読みたいです
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剣客商売の番外編です
おんなって・・・強いです
池波正太郎読者としては初心者のkitanoですが
こういう女の一生を描くのは山本一力先生の方
が似合う気がする(笑)
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「人は死ぬために生きる」池波さんが色んな作品の中で伝えてくれる言葉ですが、この作品を読むとすぅっと腑に落ちる感じがします。読後感も爽やか。何時でも手元に置いて何度でも読みたくなる、そんな一冊です。この連休は池波正太郎さんの作品を読み返して見ようかしらん。
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薄幸の少女が、逞しく生きる。
周りの人達に恵まれて、最後の場面がさわやかでした。
かくありたい。
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剣客商売 番外編
薄幸の少女、お福の物語。
幼くして両親を失い、下女として神谷弥十郎の元で働いていたが、まもなく主人が暗殺された。
行き場を失い、下男の五兵衛の世話もあって江戸へ出たお福。
新しい主人、三浦平四郎はとてもよくしてくれ、お福は幸せだった。しかし、この主人も同じ無頼浪人の凶刃に倒れ、ほどなくして、五兵衛までも殺された。三浦に手裏剣の手ほどきをうけていたお福は、秋山小兵衛の助太刀をえて、仇を討ち果たす。
若くからあまりにも多くの死を見てきたお福。それでも、人々の善意に助けられながら、たくましく生きていく姿は見てて気持ちよかった。
小兵衛、仙台堀の政七、四谷の弥七、羽沢の嘉兵衛、軍鶏鍋屋「五鉄」、不二楼などおなじみの人々やお店が出てくるのも楽しい。
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お福は 両親をなくし 不遇な中で 新発田の町道場ではたらき、
理不尽にも 乱暴される。
その町道場主 神谷弥十郎は あるオトコ 松永市九郎 に
ころされる・・・・。
五平とともに お福は よるべなき ところで
成長していく。たくましく そして どっしりと。
しかし、いつも不幸なのだ。
男たちは 最後のともし火をかがやかせ 安らかに死んでいく。
三浦平四郎、五平、倉田屋半七の人生が切り立つ。
老いてのち どのように 人生を生きていくのか
「人は死ぬために生きる」という 池波正太郎の言葉が
重く それぞれの人物が 死 に直面し、命を落としていく。
小兵衛の 卓越した 人生観が お福を 不幸から救い出す。