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みんなのレビュー658件

みんなの評価4.4

評価内訳

658 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

土屋政雄氏の歴史的名訳による重厚な一冊。人生について深く考えさせられるブッカー賞受賞作品。

2009/04/27 21:09

22人中、19人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『エデンの東』(ハヤカワepi文庫)や『月と六ペンス』(光文社古典新訳文庫)、『アンジェラの祈り』(新潮クレストブックス)の名訳で著名な土屋政雄訳。
ブッカー賞受賞作品。

さて、カズオ・イシグロ初挑戦しました。
これはもう素晴らしいの一語に尽きますね。
あまり小説に男性向け・女性向けという形容を施したくないが、この作品は男性向けの作品だと思う。
なぜなら作者は“男の人生”を描いているからだ。
でも女性が共感できないということはありません、逆にこんな男に惚れて欲しいと思ったりします(笑)
あとどうなんだろう、特徴としては作者にとっての母国となるイギリスに対して、ある時は誇り、ある時は辛辣に描いているように見受けれる。
物語の始めに読者は主人が今までの英国人からアメリカ人に変わったことに驚きを隠せずに読み進めたのである。
予想通り全体を支配している重要なことでした。
主人公のスティーブンスは老執事。
説明いらないと思いますが、執事と言っても現在日本で取り立たされているイメージの執事とは全然違い、品格を求められるものです(笑)
物語は主人公の短い旅(6日間)に出るところで始まりそして終わる。
男性一読者の私にとって、主人公はいわば理想の英国人に近く写ったのである。
少しイライラする面もあるが許容範囲。
描かれるのはわずか6日間のあいだだが、まるで長い人生を凝縮したような6日間なのである。
前述したがこれはやはり男性読者の方が理解しやすいと思ったりするのだ。

仕事に対するこだわり、父親に対する尊敬の念、そして女中頭との恋愛。
一生懸命に生き信念を通すということが立派な品格を築き上げるのですね。

少し前半凡庸な気もしないではないが心配無用。
中盤からのミス・ケントンとの恋愛感情を含んだ仕事のやりとり。
これは重厚な作品の中にあって軽妙であり楽しめます。

あと付け加えておきたいことは、やはり時代背景と作者の育った環境ですかね。
本作の描かれている時代は1956年。そして旅行中に回想される時代が1930年代です。
ちょうど第二次世界大戦が終わって10年ぐらいたった時期に旅し、第1次と第2次とのあいだの時期を回想してますね。
当時のイギリスのヨーロッパにおける位置づけの認識はかなり重要です。
そして作者はご存知のように日本生まれで5歳の時に両親と渡英。
生粋のイギリス生まれでないところが見事な“少し不器用だけど紳士的な主人公像”を作り上げている要因となっている気がする。

人生すべてうまくいくとは限らない。でも明日のことを考えて生きていこう。
主人公が終盤ミス・ケントンに背中を押されたのと同様、読者も作者に生きる勇気を与えられた。

本作の原題は"THE REMAINS OF THE DAY"、読者は"THE REMAINS OF THE LIFE"を否応なく考えさせられる名作です。
見事な原作に最高の翻訳、未読の方は是非酔いしれて欲しいですね。

男も泣きたい時がある。最後に主人公が流した涙は男の矜持の象徴と信じて本を閉じた。

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紙の本

ゆったり静かに進行するイギリス叙情映画

2014/09/16 12:32

13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Owl_X - この投稿者のレビュー一覧を見る

極々イギリス的な背景の話だが、日本人の波長に合う。子供の頃からずっとイギリスで育ってきた作者の日系の血ゆえか、あるいはイギリスと日本に共通する感情を描いているからなのか?ドラマティックなストーリーは一切無く、ゆっくり淡々と、回想を入れながら、典型的なイギリス執事の小さな旅が進んでいく。人生を振り返る中に,寂しさと暖かさが醸し出されて、ついつい引き込まれてしまう作品だ。ゆったり静かに進行するイギリス映画を見るようだ。ただし、暗さはない。

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紙の本

人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ

2015/04/04 22:24

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wayway - この投稿者のレビュー一覧を見る

著者の作品に共通するものがある。
それは、読んでから暫くは残響のように身体に残っているということだ。
なんとも言えぬ感情であるが、ふつうに持っている(かといって日常に
おいて発芽することがない)筈であるとと思われるものだ。

執事としての仕事における成功?と、もはや取り戻しようのないはずの
元同僚への想い。そのふたつのことが再び成就するのだろうかという
淡い期待。伝統的でありながらも徐々に翳りつつある英国と重ね合わせ
ながらも、独特の展開は我々を著者のみが知る世界へと引き込む。

和訳にも無理がなく、まるで日本語で書かれた小説を読むようだ。
次の台詞なんかは、英語でも日本語でも人の心に浸みいって響き渡る
のではないかと思う。

「人生、楽しまなくっちゃ。夕方が一日でいちばんいい時間なんだ。
脚を伸ばして、のんびりするのさ。夕方がいちばんいい。わしはそう思う。
みんなにも尋ねてごらんよ。夕方がいちばんいい時間だって言うよ」

最後に、真面目にジョークの練習に取り組もうとするスティーブンスは、
死ぬまで執事であり続けたことであろう。

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紙の本

"The Remains of the Day"(『日の名残り』):祝ノーベル文学賞受賞

2017/10/07 00:08

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うりぼう - この投稿者のレビュー一覧を見る

昨夜、PCに向かっていたら日経電子版のヘッドラインに<カズオ・イシグロ ノーベル文学賞受賞>とポップが現れ、一瞬、手が止まりました。『日の名残り』を読んで以来、ひそかに愛読していた作家の受賞だったからです。普遍的な文学性と緻密な文体を評価した今年の選考は、とても納得感があります。英国のオッズではケニアの作家が有力視されていたようですが、英語圏の作者の方が日本人にとって触れる機会が多く、受賞を身近に感じることができます。短編の名手アリス・マンローが受賞したとき以来のお気に入り作家の受賞となりました。

映画化もされた”The Remains od the Day”(邦題『日の名残り』)で、一躍、カズオ・イシグロは世界的名声を獲得しました。三作目となるこの作品は英国で最も権威のあるブッカー賞を受賞しています。この作品を読んだとき静かな衝撃に襲われました。貴族邸に忠実に仕える老執事スティーヴンスの回想を綴ったもので、作者の最高傑作といえるのではないでしょうか。ノスタルジックな風景や人々の無垢な記憶を丹念にたどる作風が作品世界の魅力のひとつです。

結末シーンは夕暮れ時の桟橋です。主人公スティーヴンスが年輩男性に"The evening's the best part of the day"(夕方こそ一日でいちばんいい時間だ)と話しかけられるシーンが強く印象に残っています。父の死、女中頭ミス・ケントンへの想い、過去の同僚との友情、政治情勢に対する私見、それらすべてを押し殺して最後まで執事としての職務を全うしたスティーヴンス、老境を迎えた彼の姿は黄昏時の桟橋風景と重なり合います。抑制(の効いた人生)という言葉は彼のためにあるのかも知れません。静かに終幕を迎えるかに見えたスティーヴンスは、人生の残照を眺めながらも、ユーモアを交えた決意を胸に第二の人生に立ち向かいます。胸中をときおり去来するに違いない落胆や失意を、執事としての矜持が堰き止めるそんな生き様に、読者は深い感銘を覚えるのです。

カズオ・イシグロのノーベル賞受賞を機に、1989年に出版された原作を再読してみようと思います。自分も年を重ねて、『日の名残り』の主人公の思いにより共感できるような気がします。35歳のときにこの傑作を完成させてしまうカズオ・イシグロ(の才能)は只者ではなかった。

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紙の本

でも人生の夕暮れは哀しいばかりではない

2011/06/16 18:56

8人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る

同業者の父を尊敬し、自らの職務にもプライドを持ち、
執事としての高みを常に目指すスティーブンス。
敬愛するダーリントン卿なきあとの新しい屋敷の所有者ファラディにも、
英国風の対応を心掛けつつも新しい試行の必要も感じている。

そんな折、数日間の休暇を得て、屋敷の元女中頭ミス・ケントンを訪ねて車でひとり旅にでる。
イギリスの牧歌的風景を楽しみ、行く先々の人々との交流の合間に、
昔の栄華を極めたダーリントン・ホールでの出来事や、
自身の完璧な執事ぶりの記憶を楽しむスティーブンス。

そこに特別な思いを呼び起こす、晩年の父の姿。
重要な会合があった夜、重篤な状態で伏していた父が尋ねる。
「わしがよい父親だったならいいが・・・。そうではなかったようだ」
「父さん、いま、すごく忙しいのです。また、朝になったら話にきます」

何回も父は聞いた。いい父親ではなかったかと。
スティーブンスは、父を偉大な執事だと絶賛するも、果たしていい父だったといっていただろうか。
今わの際の最後まで「いい父だった」の一言を言わない彼に少しいらだった。


そして今にして思えば恋の始まりの予感もあったミス・ケントンとの時間。
今回の訪問も、淡い期待がもしかしたらあったかもしれない。

短い再会ののち、ひとり桟橋から見る夕日に、
初めて自分の最も輝いていた時代の終わりを知らされて涙する。

これまでの道を悔いているのではなく、むしろ誇りに思っているのだと思う。
過ぎて行った過去の眩しさと、
その頃の自分よりも劣ってしまったことを知る口惜しさ。
様々なものが落ちていく日の美しさと一緒に、彼の中に押し寄せてきたのではないかと。

スティーブンスはとても有能な執事だった。
でも彼の人生は?彼はしあわせだった?
本当の幸せって何なのか、ふと考えてみる。

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紙の本

貴族に忠実に仕える非常に優秀な執事の物語。

2018/05/11 14:48

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

冒頭から感じた染み入ってくるような感動が最後まで続きました。衰退する英国貴族文化、階級社会の変化や戦間期の捉えがたい空気、深い信頼と敬愛に貫かれた主従関係、私情と職業的プロ意識の間で揺れ動く男女の関係など、どの要素も大変読み応えがありました。品格とは。旅の終わりの場面は寂しさがつのるけれど、それよりも今の主のためにできることを考える姿に心打たれた。こんなにも目指すものに忠実に生きられるのか。
本書は映画化されています。アンソニー ホプキンスがストイックに演じるほどに、その心の揺れ動きが見事に表現されます。「品格」がこの映画の重要な主題です。

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紙の本

わび・さびの境地?

2018/11/04 18:25

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る

昨年ノーベル文学賞を受賞したカズオ=イシグロの比較的初期の作品。この作品で、彼がイギリスで権威のある文学賞のブッカー賞を受賞したとき、私はこの日系イギリス人作家を初めて知ったが、ついぞ作品そのものは読んだことがなかった。だから今回のノーベル賞をきっかけに、『日の名残り』と訳されるこの”The Remains of the Day”を、原文で読んでみた。そうして初めて接する彼の文章の簡潔さ、論理性に、感銘を受けずにいられなかった。特に風景描写は実に叙述的で、ありありと目の前に景色が浮かぶようであった。
 ダーリントンホールの執事スティーヴンズは、現在のあるじの勧めで、イギリスの郊外を車で旅行する。目的の一つは、かつての同僚ミス=ケントンに会うことだった。結婚のため退職した彼女から、彼が20年ぶりに受け取った手紙には、彼女が現在不幸であると綴られ、再びダーリントンホールで働きたい様子が伺われた。人手不足の折、スティーヴンズは彼女に戻ってきてもらおうと考えた。そこには当然、単なる仕事以外の要素も当然あった...
 これは、そんな主人公の旅行記と思い出が交互につづられる独白形式の小説である。彼女と会う場所に着くまでの旅のエピソードとともに、ミス=ケントンや、前のあるじであったダーリントン卿、そして邸でのさまざまな出来事が、時系列もバラバラに語られる一方で、執事とはどうあるべきかという職業哲学めいた議論も展開される。
 スティーヴンズが、ミス=ケントンとの再会にロマンスを期待していることは、物語の冒頭から誰の目にも明らかだ。彼女に関する叙述のすべてが、彼女が彼を愛していたことを示唆しているから...それゆえ、物語の結末は、主人公を何ともかっこ悪いものにしているといわざるをえない。最後に出会う老執事との会話と、主人公が見入る夜景の描写によって、苦い失恋の思いは一つの美学へと昇華されるものの、やはりそこには一抹の寂しさが、「日の名残り」として永遠にとどまる。題名のせいか、どことなく日本のわび・さびを感じさせる、そんな結末であった。

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紙の本

映画とあわせて読みたい

2017/11/07 11:49

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:phoebe - この投稿者のレビュー一覧を見る

愛おしい「信頼できない語り手」の記憶

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紙の本

輝かしい日々への哀愁

2017/10/30 20:49

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひまわりまま - この投稿者のレビュー一覧を見る

イギリス貴族の館に身を捧げていた執事スティーブンスは、時代の流れとともにアメリカの金持ちに使えることになる。自我を出すことを自らに厳しく禁じていた執事だったが、自由なアメリカ人の主人に即発されたのか、かつての同志だった元女中頭のミス・ケントンに自ら車を運転して会いに行く…。時代の大きなうねりの中に自らも身を投じていたことと同時に、執事という仕事についてほこりを持っていたスティーブンスが、彼個人の人生を振り返ってみると思いもよらなかった思慕を寄せられていたことに気づく。でもすべては遠い時間のかなたに飛び去ったまま、今はただその事実だけを受け入れている。人生の黄昏時、そこにあるのは充実した思いなのか、あるいははかなさなのか。スティーブンスの一人称で語られる文体はぐいぐいと読むものを引き込み、飽きさせない。執事中の執事を全うした人生なのか、それとも好き好きビームに気付かず鈍感に過ごしたドジなおっさんの話か、読み手にゆだねられる一作。

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紙の本

カズオ

2015/08/25 19:53

3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:romi - この投稿者のレビュー一覧を見る

淡々と物語は進んでいき、事件的なことが起こることもないのに面白い。
一気に読んでしまった。

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電子書籍

イギリス執事から学ぶ人生の醍醐味

2023/11/20 15:29

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:タラ子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ダーリントンホールという大きなお屋敷で執事を務めていた男性が、ダーリントン卿亡き後、新しい雇い主から休暇で旅行に出ることを勧められる。旅先での体験と、ダーリントンホールで過ごした日々の回顧録が読者の心をうつ。

この物語では、執事という仕事を通して、人としての品格や、生き方について考えさせられる。
ダウントン・アビーという海外ドラマを見ていたこともあり、小説の世界にはすぐに入り込めて、とても楽しく読めた。
読後は、後悔のない人生なんてない、でも、いつでも前を向いて自分ができる精一杯のことをやって、人生を謳歌しようじゃないかという前向きな気持ちになった。

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紙の本

美しい日本語

2021/05/23 16:09

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る

言葉の美しさがすごい。
読んでいる間中、こちらまで背筋を伸ばしたくなるような「品格」を感じました。
作者はもちろんですが、翻訳した方の日本語の美しさにもうっとり。

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紙の本

ぜひとも読んでおきたい

2021/04/30 22:07

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:tuyu - この投稿者のレビュー一覧を見る

ノーベル文学賞やブッカ―を受賞した
カズオ・イシグロ氏のおそらくもっとも有名な作品です。
彼は、長崎出身ですが、幼少期に家族とイギリスに
渡りました。
執事の内面描写がすばらしいです。
ぜひとも読んでおきたい一冊と言えます。

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紙の本

この執事は曲者

2019/01/19 22:09

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

カズオ・イシグロという人は日本生まれで両親も日本人だったにもかかわらず、この作品はイギリスの名家で長年執事をしていたスティーブンスの亡き主、父、女中頭との思いでを絶妙に描いて英国人をうならせたばかりか、ノーベル文学賞までとってしまった。私が感じたこの主人公の執事についての印象は嫌な奴、ということにつきる。階級社会の英国で名家の執事をしていたというだけで、偏見まみれの私には貴族にはへいこらして平民には偉そうにする人にしか思えない。この人も「正直に話すタイミングを逸した」とか言って、平民相手に自分は爵位をもっている人間のように振る舞ったりする。そんな一面も含めて、この執事という職がなかなか面白い存在であるということが再認識できた

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電子書籍

美しい情景が目に浮かぶ

2018/05/21 09:25

2人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケイ - この投稿者のレビュー一覧を見る

かくあるべきと信じて進んできた道。
誇りも自負もありながら、回顧の中で僅かながら揺らぎも見える。主人が過つことになったのは自分が伝統的な執事であろうとしたためではないかという思いもあったのではないか。
追い求めてきた理想の執事のあり方。時代の変化。卿への思慕。淡い恋。
老いに原因を求めず、ただ人手不足による過ちなのだと自分に言い聞かせ、職務上の要請だと理由をつけて元女中頭に会いに行く。
最初から最後までイギリスの美しい景色や重厚な建物が目に浮かんだ。
美しい再会と別れ。
日の名残りが一番いいという男。「後ろばかり向いているから気が滅入るんだよ。」決して気の利いた凝った言葉ではないが、悲しみに浸っている老執事にとって温かみのある励ましとなったことだろう。
老執事はこれからも理想の執事の姿を追い求めて、新たなスキル(ジョーク)の習得に精進するにちがいない。

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