紙の本
立派なコピー作品
2021/10/28 10:45
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投稿者:imikuto - この投稿者のレビュー一覧を見る
パクリといえば聞こえが悪いので、やはりオマージュ作品というべきだろうか。
ウールリッチの「黒衣の花嫁」を真似て書いたという話は有名。
「黒衣」も読んだが、本作のほうがはるかに出来がいい、と個人的には思う。
この時代では、大作家でも、気に入れば、コピーしてしまう人は多い。島崎藤村、江戸川乱歩・・・
海外作品を日本文化に溶け込ませて完全に自分のものにして、そして読者を楽しませてくれれば、それで勝ちということか。
本作は、とにかくサスペンスフル。そしてミステリーでもある。
さらに人情物でもある。それはどうかなw
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椿の花、落ちる。
2002/07/07 02:08
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投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
潔癖な心を持つ娘おしのは、自分が不義の子だと知ると、淫蕩な母を殺し、母と関係を持った男たちを誘惑して寝床に引き入れ、次々と殺してゆく。兇器は銀の平打ち簪。死体の枕元には、亡き父が好きだった山椿の花びらを残して……。
サスペンス時代小説だが、山本周五郎だけあって「法律で裁けない悪はどう裁くべきか」というようなテーマ性が感じられる。
私が初めて本書を読んだのは中学生の頃だった。その当時は潔癖なおしのに共感し、淫蕩なおしのの母を憎み、下司な男たちを憎んだ。おしのの耽美的な殺人法にも心惹かれた。だが、今改めて見直してみると、昔とは感じ方が違ってきた。勿論この作品は好きだし、おしのにも哀れを覚える。だが、今はおしのの母──おそのに以前ほどの嫌悪を抱けなくなったのだ。確かにおそのはだらしがなく、迷惑な女性である。だが、「夫が店のことを捨てても良いというくらい自分に打ち込んでくれれば、自分ももう少し夫に愛情を持てた」というおそのの台詞に、青臭い潔癖さでは割り切れない真実を感じてしまうのだ。
殺される男たちが下司ぞろいなのは、無垢な少女であるおしのに殺人を犯させる理由として必然のものだったのだろう。彼らの枕元に残された赤い椿の花びら。椿は美しいまま散ってしまう。おしのもまた椿であった。
紙の本
ミステリ・ファンも読んでおくべきサスペンス時代劇
2000/09/20 07:40
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投稿者:松谷嘉平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■サスペンスの形式で法と人間の掟の相克を描いた異色時代小説(1959年)。
▼油屋「むさし屋」の主人喜兵衛の妻「おその」は、婿養子である彼を疎み、数々の不倫を重ね、夫の危篤の際にも若い役者との逢瀬を楽しんでいた。その娘「おしの」は父の死んだ夜、母から自分が喜兵衛の子ではなく、不義の子であることを知らされる。彼女は、その時決意した。父のため、そして「人間の掟」を守るため、母とその男たちが犯した「法では罰することのできない罪」を、自らの手で償わせることを。彼女は次々に彼らの胸に銀のかんざしが打ちこみ、その側に山椿の花びらを残こしていく。
■構成は、序章と終章の間に6話が挟み込まれていて、それぞれが独立した短編のようなエピソードになっています。
■このことと、内容を読んで、気つく方もいらっしゃるでしょうが、これはコーネル・ウールリッチのサスペンス小説『黒衣の花嫁』のプロットにかなり直接的な影響を受けている作品なんです。名を偽って男たちに近づくところなんかも、そうですし、途中で刑事ならぬ与力に尻尾をつかまれて、更にサスペンスフルになるところなんかも「そのまんま」って感じもあったり。
■そうは言ってもウールリッチに比べて、殺人者の内面描写も多いですし、そこで描かれるのは「個人的な復讐」ということよりも、若い「おしの」の潔癖さに由来する観念的な動機が前面に出ているところは、かなり大きな違いだと思います。『黒衣〜』とは違って、復讐される側が読者の情けの受けようがない本当の「下司野郎」で、「必殺シリーズ」のような勧善懲悪の物語に近いところにも、そういう日本的といえばいえるかな。
■また殺害の理由がミッシング・リンクではなくて、最初から明らかになっている点では、『喪服のランデヴー』に近くて、より純粋なサスペンス。
■ちょっと結末のつけ方が弱い部分もありますが(やっぱり××をヒロインが殺すのはショッキングすぎると判断したのかな)、全編通して弛緩するところがなくて、なかなか面白い作品でした。
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女が一度心を決めるとどんなことでもできる・・・。それがどんなに許されないことだとしても。
決めたことなら後悔なんてしなくていいんだ。
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山本周五郎の中で、ちょっと異色の本。
サスペンス好きの方に向いているかも。
初めて読んだのは20代のころで、
この主人公が自分とそんなに年が離れていなかったせいか、
おどろおどろしいものを感じたものの、
どっぷりとその世界の中に浸り、忘れられない題名となった。
今読むと、う〜ん、18の娘がこんなにも妖艶で女らしくあり、
しかも意思強く、手の込んだ策略をめぐらすことができるものか・・・
と、思ってしまうが、
そんな 夢のないことはいうまい・・・・。
五人の男に罪を償わせるため暗殺していく話を、
簪(かんざし)と椿のはなびらという同じ設定で
つむいでいくのは絵をみるようだ。
単純に、次々暗殺する、いうのではなく、
自分がちがう5人の人物に成り代わっていく。
しかも途中から、与力の青木某という人物が主人公を追い詰めていく。
山本は、法と掟、人間の葛藤を描いた、なんて解説もあるが
そんな、こむずかしいこともいいじゃないか。
楽しめればいいと思うのだ。
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山本周五郎の中で、ちょっと異色の本。サスペンス好きの方に向いているかも。 初めて読んだのは20代のころで、この主人公が自分とそんなに年が離れていなかったせいか、おどろおどろしいものを感じたものの、どっぷりとその世界の中に浸り、忘れられない題名となった。 今読むと、う〜ん、18の娘がこんなにも妖艶で女らしくあり、しかも意思強く、手の込んだ策略をめぐらすことができるものか・・・と、思ってしまうが、そんな 夢のないことはいうまい・・・・。 五人の男に罪を償わせるため暗殺していく話を、簪(かんざし)と椿のはなびらという同じ設定でつむいでいくのは絵をみるようだ。 単純に、次々暗殺する、いうのではなく、自分がちがう5人の人物に成り代わっていく。しかも途中から、与力の青木某という人物が主人公を追い詰めていく。 山本は、法と掟、人間の葛藤を描いた、なんて解説もあるがそんな、こむずかしいこともいいじゃないか。 楽しめればいいと思うのだ。
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おしのがターゲットに近づく設定がワンパターンなのに少しがっかりしたが,やはり「この世には法で裁けない罪がある」ということをめぐる葛藤は周五郎らしく,考えさせられた。
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NHKドラマで観てすぐに本を買った。初めて読んだ山本周五郎作品。これを読んでから時代物がとても好きになった。気づかれるか気づかれないかのギリギリラインでの犯罪がとても面白かった。
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まだ学生の頃、涙しながら読んだ。
私が『周五郎病』に罹ったのは、この作品のせいだ。
個人的に大変思い入れの強い作品
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「竹薮は黄色く霜枯れ、池の水は寒ざむと澱んでいる。椿の木の幹は灰色で、空は鬱陶しく曇っていたようだ。すべてがしらちゃけた淡色にいろどられている中で椿の葉の黒ずんで光る群葉と、葉がくれにつつましく咲いている紅い花とは、際立っているようで却ってものかなしく、こちらの心にしみいるように思えた。」
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歴史小説は、表現が綺麗で読んでいて気持ち良い。
綺麗なだけに、より女の恐ろしさが出ているようでもある。
いつの時代も、女の呪いは怖いようですよ。
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山本周五郎を久しぶりに読んだ.粗筋だけをとりだすと殺伐とした感じだが、凛とした女性の懸命な生き方の残す印象が強い.おしのの生き方は是とまでは言えないが、人間の浄らかさについての深い感情を思い起こさせる.ところで、山本周五郎の小説はこの時代に受け入れられているのだろうか.この即物的な世の中と小説の世界の遠い距離を感じて,そんなことを思った.
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面白かった。さすが山本周五郎、一息で読んでしまった。シドニー・シェルダンを思い出す。父親の無念を晴らすため父の残した財産とその美貌を武器に次々と復讐を遂げる娘、おしの。かなりなエディプスコンプレックスだとは思うのだが、父が最期にどうしても言いたかったこととは何だったのだろう。おしのの考えるように母への恨み言だったのだろうか。そんなに男と女、単純なものではないようにも思うのだが・・・。相手の男たちもまたおしのの色香とその財力に目が眩み簡単に罠にかかるのだが・・・。又最後まで生娘であることにこだわったおしの、それは単に相手の男に身体を許すことがイヤだったからと言うだけでなく、自分の中にある母親の血、淫蕩な女の血に怯えていたからではないかと思うのは考えすぎだろうか。おしのの復習が完結するように応援してしまいながら読んでしまった。以前テレビドラマか何かになってみたような気もするのだが、今このおしのさんを演じれる女優さんいないよね。復讐されるほうの役ならいっぱいいそうだけど。2006・6・28
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テーマは秀逸だし、痛切に胸を打つ話。が、ラストはあっさりしすぎ(主人公の独白にすればいいのに)。この人の小説にはサービス精神がない。もうちょっとあざとく盛り上げてもいいと思うが。
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全1巻。
時代小説。
著者には珍しいかんじの、
ちょっと緊張感のあるサスペンス。
現代ものっぽい、
トリッキーな手法がいろいろ使われてて、
緊張感もったまま最後まで続く。
が、
解説にも書いてあったけど、
終章の結び方がちょっとキレイごとっぽかった。
個人的に、最後もちょいいけたんじゃねえのって感じ。
若さ故の潔癖さというか、
哀しい純粋さというか、
物語の底にずっと漂ってる
著者らしい哀しさの空気は悪くないし、
スリリングで読ませる物語だっただけに
あんまり心に残らないのが残念。