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紙の本
苦しいしつらい、だけど生きて行くんだよ。
2012/03/01 14:05
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまりの忙しさに恋人にも振られ、気がつくと鬱になっていた由人。
その由人が勤める、倒産間近の会社社長・野乃花、彼女にも人に言えない過去があり、
そして乳児の頃に亡くなった長女のことを思うあまり、次女の自分に必要以上に干渉する母を持つ正子。
この3人の壮絶なこれまでが語られる。
あの「ふがいない僕」の時のように、想像するには過酷過ぎる日々を生きてきた彼らの選択肢は、
「死」であってはいけないんだけど、それが一番簡単なのかと勘違いしそうなくらい、
視野が狭くなって生きる道を見失った気持ち、伝わってくる気がする。
誰かに自分の落ち度を責められたら、反論しようがないほど自分が悪いと思う野乃花も、
小さいころから刷り込まれた母の異常愛にあらがうことができ無かった正子も、
もういいじゃない、そんなに苦しまなくっても、と言いたい。
彼らの心を救うのは、海辺の村で出会う老婆とその孫。
同じ苦しみを知っている老婆の皺だらけの両手がくるんでくれる温かさに、きっとこれを読む人は打たれるはず。
前作同様、「生」について考えることは多いけど、それにもまして「死」は彼らに密着したものとして扱われて、
大事な人の死を、残されたものはどう受け止めて生きていけばいいのか、
大きくて深い問題を投げかけていると思う。
紙の本
リアリティが支える本物の言葉の力、窪美澄「晴天の迷いクジラ」。
2012/04/23 09:04
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ふがいない僕は空を見た」の窪美澄待望の新作だ。この物語には3
人の男女が登場する。1人はデザイン会社でハードワークを重ねるうち
にいつしか軽い鬱になる24歳のデザイナー由人。その会社の女社長48
歳の野乃花は、どうにもうまくいかなくなった会社を建て直すことに疲
れ果てている。もう1人は16歳の高校生正子。彼女はノイローゼ気味の
母親に反抗さえ出来ない日々を送っている。窪美澄はそんな彼らの「今」
を描くと共に、つらく厳しい過去をも描いていく。その描写はこれでも
か、というぐらいこまかく息苦しいほどだ。そのリアルさ!!!彼らの
経験したこと、彼らの現在、それは現代ではけっして珍しいことではな
い。しかし、彼らは典型とか類型として描かれてはいない。まさに「そ
の人」自身だ。このリアルさが物語を支えている。だから、1章の由人
の物語も2章の野乃花の物語もとてもつらい。3章の正子の話もつらい
のだが、その半ばで彼女が初めて友と呼べる2人と出会うところが本当
に本当にうれしい。そして、迷いクジラと会うために3人が出かけた南
の地。彼らが出会う土地の人、82歳のばあちゃんが正子に語りかけるそ
の言葉のひとつひとつ、ばあちゃんの孫である雅晴が由人に語る強く短
い言葉が心にズシリと届くのだ。
「ふがいない〜」の書評で僕は「作者の窪美澄は彼らがいる場所のま
っただ中からこの物語を発信しているように思える」と書いた。それは
リアルさに対する賛辞だったが、この物語で気がついたのは、前半で作
者が執拗に語り続けた彼らの過去、そのリアリティがあってこそ最終章
でのメッセージが百万倍ぐらいになって届く、ということだ。リアルを
生み出すのは、体験か取材か想像力か表現力か。いずれにしても窪美澄
はスゴい。「ふがいない僕は空を見た」そしてこの「晴天の迷いクジラ」
を通して、窪美澄は僕にとってかけがえのない作家になった。そして、
おそらく、あなたにとっても。
紙の本
心病んだ人たちの、一生懸命生きた人たちの、レジリエンスの物語。
2022/03/07 10:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の病は、目に見えない。
サボっているだけだろう。
弱い人間がなる病気だ。
社会には、まだまだ大きな偏見がある。
農家の次男で自己主張が苦手な由人。専門学校で知り合った恋人からひどい振られ方をした上に、会社は明日どうなるかわからない。会社の先輩のススメで心療内科に行くことに。
絵を描くことが好きで好きで堪らない少女・野乃花は、高校の教師のツテで絵画教室に通えることに。貧しい家庭で育った彼女には夢のような話だった、はずなのに運命が大きく野乃花の人生を予期せぬものにしてしまう。
長女を幼くして亡くした反動で、母に極端な過保護な育てられ方をした正子。
三人が、それぞれの家族、友人、恋人等との関係性の中で心を病み、一時は死を考える。
うつは、時に死に至る病となる。
現代の治療の最先端は、薬中心の一方的な対面治療から、本来その人が持っている回復しようとする人間本来の力、生命力、レジリエンスを、人との関係性の中で引き出して行く方向になっている。
三人の主人公が、苦しんで苦しんで苦しみ抜いて辿り着いたところ。
心病んだ人たちの、一生懸命生きた人たちの、レジリエンスの物語。
紙の本
窪さん二冊目
2020/02/01 11:42
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Sota - この投稿者のレビュー一覧を見る
前回読んだのが面白かったので、二冊目に挑戦です。
個人的に、ラストが、バッドエンドでも良いから、あやふやでないものが好みなので、そういう意味では、これは、読後感がとてもすっきりしました。ちょっと出来過ぎ感があるものの、面白かったです。
電子書籍
良かった
2013/04/12 18:03
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さくら - この投稿者のレビュー一覧を見る
年齢も、環境も違うところで育った人間が、「死」と向き合う様が人間らしくって涙が出た。クジラ…どうなったかな?
紙の本
ハッピーエンドじゃなくたって
2015/03/26 10:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
生きていればすぐには跳ね返せないこと、耐えられないことも少なからずある。3人は重く辛い事実、過去、環境を背負っている。死にたいと考えてしまうほどに。でも、きっかけがあれば意外と次の方向に向かおうと出来るのかもしれない。あのクジラは何を考えたのか。3人と同じように死にたいとか考えたのか。クジラも人も同じ生き物。ハッピーエンドじゃなくても先があると思える終わり方だってある。