サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

新規会員70%OFFクーポン

hontoレビュー

カスティリオーネの庭 みんなのレビュー

  • ブラウザ
  • iOS
  • Android
  • Win
  • Mac
一般書

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー5件

みんなの評価4.0

評価内訳

  • 星 5 (1件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (1件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
5 件中 1 件~ 5 件を表示

紙の本

歪む歴史の幾何学

2012/11/17 11:12

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

清の興隆を築いた乾隆帝。その元で絵画師として生きた、イエズス会から派遣された宣教師ジュゼッペ・カスティオリオーネの生涯は、歴史の光芒の中の染みのようだ。北方民族の支配による世は、古代の伝説の王のような理想的な治世ではあり得ないし、乾隆帝自身も様々な蹉跌を踏んでいる。周辺の国との争い、あるいは征服の過程はある種の栄光であろうけれど、その内部では当然ながら異民族の文化との混交の困難さがあり、一族内部の争いや後継者選定の悩みがあり、インド以遠へ触手を伸ばそうとするヨーロッパ人への対処など、解決不能な課題の山に埋もれている。
清国の西洋人に対する扱いもまったく恣意的に変化していく。この当時には、中国国内に居住するのは認めるが布教は認めないというもので、彼らは王宮の近くに住まわされ、皇帝によりそれぞれ絵画、音楽、建築などの得意分野に用いられた。カスティオリオーネは宮廷画家として、西洋画と中国画をその時々によって折衷した作品を描いていく、そして時には洋館や庭園、噴水などを設計して完成させていく。
20歳で中国に渡ってから北京で生涯を閉じるまでのカスティオリオーネは、ただ多忙に描いて、造り続けるが、描画の手法や、出来上がったものの意匠を、幾何学的に、あるいは遠近法の観点で、次々と描写が展開されるのには陶酔感をもたらす(図版付きなのも素敵だ)。そこでは美的な要素以上に、権力の意味、国家の意味、文明の意味、そういった表現を求めて、皇帝が描かせ、築かせるものだ。皇帝の築くものは、人民のためのものであり、国家のためのものでなくてはならないが、皇帝の権勢欲を満足させる必要があるのももちろんだ。新たに征服したウィグル地方のイスラム文化さえ、皇帝の見いだした愛人とともに王宮に侵入して来る。その様々な要素のせめぎ合いにより、画家に突き付けられる要求が、気まぐれでとりとめのないもののようにも見えるのはやむおえない。
渡航前にイタリアやポルトガルで目にした壮麗な建築の記憶を掘り返しつつ、中国風との折衷度合いの様々なものが次々に生み出される。個々に見れば奇妙な集合体であっても、ちゃんと理屈と背景があってそうなっているのだ。そして匠の技というのか、作品自体は完成した様式を持っている。時代のあだ花とも言えるが、その影響も広がった。中国を訪れて帰国した西洋人はオリエンタリズムを掻き立てられ、特にカスティリオーネの版画の刷りをヨーロッパに発注したものは、契約に反してヨーロッパ中で広まってしまったという。
遠いリスボン大地震やイエズス会の衰退といった流れの中で、東西交流が活発化し形を変えていく中で(日本人の水芸女なんてのも登場する)、文化の混交の実験場になったとも言えるだろう。乾隆帝は後継者に悩み、結局この数十年後に阿片戦争という破局が訪れたが、そうでなければさらに壮大な成果を生み出し得たかもしれないなんてロマンチックな想像さえ可能だ。
作者中野氏のおきまりの祓文、文庫版への祓文には、この後日談があって面白い。カスティリオーネが作った十二支を模した噴水は、帝国の衰退によって庭園が荒らされていくとともに散逸し、20世紀末以降中国国内ではそれが西洋侵略の象徴としてクローズアップされるのだが、荒廃にいたる過程についての歴史的事実とプロパガンダの差違を含めて、挙げ句になかなか滑稽なことになってやしないかという指摘だ。ある時代に生きた人々、それを観察していた異邦人を見つめることで、現代社会の歪みまでがその影を顕わに写されてしまう。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2012/07/23 01:36

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/08/18 17:06

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/08/04 19:36

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/08/16 22:57

投稿元:ブクログ

レビューを見る

5 件中 1 件~ 5 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。