電子書籍
濃厚な文章が世界観を圧縮しています。
2012/11/23 21:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:おこめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
出会うのがとても遅かった私。学生時代にお写真だけしか拝見していなかった。もっと若い時に読んでいたかった。私にとって、そんな巨匠です。
読み込んでいくと、作者はとても異性という「わからないもの」に対しての疑問と憧れとがとても強い事を押し殺そうとしながら表現している事が感じられます。
男性はそれに翻弄されていく、その様子が痛々しくそして悲しい。
作者もそうだったのだろうか、と読んでいるうちに痛さがそちらまで思考を持っていきます。
歴史物も多い方ですが、独自の文体を持った方ですので、どのジャンル(捕物帳は頂けませんが。古さが出ます)でも楽しませてくださいます。
本書は尊敬する作品群が多い一冊です。
紙の本
坂口安吾氏の短編傑作と言われる作品です!
2020/04/30 09:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、戦前から戦後にかけて活躍した近現代日本文学を代表する作家の一人である坂口安吾氏の傑作です。坂口氏は、アテネ・フランセでフランス語習得するという珍しい学歴をおもちで、そうした経験から、純文学のみならず、歴史小説や推理小説も執筆し、文芸や時代風俗から古代歴史まで広範に材を採る随筆など多彩な活動を行われた人物でした。同書の表題ともなっている「桜の森の満開の下」は、ある峠の山賊と妖しく美しい残酷な女との幻想的な怪奇物語です。桜の森の満開の下は怖ろしいと物語られる説話形式の文体で、花びらとなって掻き消えた女と冷たい虚空がはりつめているばかりの花吹雪の中の男の孤独が描かれています。それ以外にも12編の短編が収録された興味深い一冊です!
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完全に岩波さんにやりおられましたね
いいあつめかたをなさっておられる
最後が夜長姫ってとこもね、すてきね
「でも、遊びは、好き。贋の恋なら、尚、好き。なぜなら、別れが悲しくないから。私は犬が好きだけど飼わないのよ。なぜなら、犬は死ぬから。すると、悲しい思いをしなければならないからよ。私は悲しい思いが、何より嫌いなのですもの。私が悲しむことも、いや。人が悲しむことも、いやよ。私は半日遊んで暮らしたい。半日はお仕事するのよ。私はお仕事も好き。何か忘れていられるから。遊ぶことすらも、忘れていられるからなのよ」
退屈。なにもかもが。だからこそ、いつも楽しんでいたい。
「そんなことじゃアないのよ。私は生きてることは好きよ。面白そうじゃないの。また、なにか、思いがけないようなことが始まりそうだから。私は、ただ、こんなことがイヤなのよ」
「こんなことって?」
「こんなことよ」
「だから」
「しめっぽいじゃないの。ない方が清潔じゃないの。息苦しいじゃないの。なぜ、あるの。なければならないの。なくて、すまないことなの?」
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高校時代に読んだ安吾の作品を読み返してみた。
読み返してみて、高校時代は分かったつもりになっていただけで、全然読めていなかったのではないかという気がした。(今が読めているかというと、微妙だが。)
安吾の作品の主人公たちは、どこかブラックで、生身の人間の感情の渦巻きがある。
まさに「生きている」という感じで、それが戦争の暗い影の中で、一種の諦めと共に描かれているような気がした。
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坂口安吾の代表作が収録された短編集。
『堕落論』以外で初めて読んだ坂口安吾の作品。
怖くて綺麗で気持ち悪くて面白い!!
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桜は綺麗だけど怖いなあと常々思っています。
その原因がこれ。
最後の瞬間まで美しく描写されてるから、かえって恐ろしい。
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◆桜の森の満開の下 ★4
桜の満開の下で狂ってしまう人…
桜は人を食べて生きていると昔教えられたなァ。
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なぜか読んだことがなかった、坂口安吾。
直前に再読した太宰治(いろいろ映画になったから。安易…)と、同時代なことに今さら気がついたりしました。
美しく、恐ろしい。説明は要らない。
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耳男の話が好き。と言うか、主に本の後半に載せられてた話が好き。前半は何か御託が多い気がする(笑)でも、その御託を楽しめないのは私がまだ子供だからかもしれない。
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桜の森の満開の下;1947年(昭和22年)。
満開の桜が恐ろしいのは美しすぎるせいではあるまい。美を所有せんとする執着が怖いのだ。代償を厭わなくなる狂気が怖いのだ。結局は、人の心が怖いのだ。麻薬のような女と出会った男の運命は…。addictiveでtoxicな男と女の関係を説話の形を借りて描いた短編。
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桜の森の満開の下は怖ろしい。妖しいばかりに美しい残酷な女は掻き消えて花びらとなり、冷たい虚空がはりつめているばかり―。女性とは何者か。肉体と魂。男と女。安吾にとってそれを問い続けることは自分を凝視することに他ならなかった。淫蕩、可憐、遊び、退屈、…。すべてはただ「悲しみ」へと収斂していく。
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「傲慢な眼」を読みたくて。
大昔読んだ「風博士」が記憶とまるで違う話でびびったので二度目でも全部読もう。
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浦野所有
→10/12/04 稲葉さんレンタル →11/07/30返却
→11/07/30 國近さんレンタル →11/09/10返却
「桜の森の満開の下」は、これまで読んだ短編小説のなかで最大のヒットでした。
また、同じ男女関係をそれぞれの視点で描いた「戦争と一人の女」「続戦争と一人の女」もおもしろかったです。
が、そのほかの作品には、残念なものが多いと感じました。安吾の持論がくどくどと述べ立てられ、途中で退屈してしまうのです。有名な「白痴」でも、作品世界を味わうことができませんでした。
そんなわけで、この本に収められている14編すべては読了していないのですが、「桜の森の満開の下」だけは間違いなくオススメできます。
この1作のためだけに、分厚い800円の文庫を買う価値はあります!
(★×5の評価もこの1作に限ったものです)
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「桜の森の満開の下」が読みたくて購入。
普段、まったく男女のお話を読まないので、これがむしろ初めて読んだ男女の小説でした。
どれを読んでも同じ苦悩がつきまとっている。ほぼ書かれた年代順に並べられていたので、その通りに読んだのだが、後半になってくるとそれに何らかの答えが出たような感じがした。
これらの中で最も形が違った「アンゴウ」の最後に驚愕。そして涙、涙。
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表題作の幻想的で残酷なところがイイ一方、この本の中では「アンゴウ」が一番好き。安吾らしさがあるなかでホロリと来てしまうところがいい。戦争をベースに退廃的に快楽主義で生きていくひとを描く作品が多い中で、これだけはせつない。表題作を読むならついででいいから読んでみてほしいと友人に勧めまくってしまった作品。