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数年前に経済水域で考えると日本は世界第6位、体積(水域は面積)で考えると世界第4位である、という本を読んで「目からウロコ」だったのを記憶しています。「狭い日本どこへ行く」という標語を少年時代に聞いていたせいか、日本は国土も小さく又、資源も少ない国だと思い込んでいました。
この本は、日本の経済水域内にある資源について、最新の研究結果も踏まえた解説がされています。私が大学を決めるときには、原子力や電気電子工学が全盛で、資源工学は人気の無かった学科だと認識しています。大学で学ぶ人が少なくなると、その分野の技術開発が遅れるようですね。
この本を執筆した谷口氏も資源工学を専攻した一人として、日本はつい最近まで世界最先端の技術を持っていたのに、現在ではその地位が脅かされたり失われた事実を指摘しています。
アメリカではシェールガス革命が起きて、エネルギーの心配がなくなりそうな雰囲気です。欧州では失敗した感のある風力発電や、中国で多くの企業が成長してしまった太陽光発電に拘ることなく、冷静な観点で、メタンハイドレードや、地熱発電等、日本の自然を生かしたエネルギー戦略を取ってほしいと思います。これらを政権を奪還した阿倍政権にお願いしたいものです。
また、メタンハイドレードは世界中に分布していて(p29)、世界の地質学者たちは、石炭、天然ガスそして石油といった在来型エネルギー資源をすべて合計したよりも、メタンハイドレードの炭化水素が際立て大井と評価している(p30)、米国と共同で開発した採掘技術は、二酸化炭素の固定化も同時に行える技術(p136)という記述は留意しておきたいポイントでした。
以下は気になったポイントです。
・オバマ政権は、2010.7に「金融規制改革法案」を成立させたが、その中に、コンゴで採掘された「銅、金、すず、タンタル」を使ってモノを作った場合、米証券取引委員会に報告義務を負わせるものであった(p24)
・メタンハイドレードは、これまで、石油・天然ガス採掘会社にとっては邪魔者扱いであった(p28)
・領土に対して、領海、接続水域、経済的経済水域:EEZ(基線から200海里)があり、日本のEEZ+領海は、世界で6位(447万km2)で、領土を合わせた国別順位は9位(p35)
・2012.4.27に、国連の大陸棚限界委員会において、四国海盆海域が認められた、つまり沖の鳥島を基点とする延長が認められた点は大きい(p38)
・いままでの調査の結果で、熱水鉱床としてもっとも有望であることがわかっているのは、沖縄トラフの伊是名海穴と、伊豆・小笠原諸島沖のベネヨーズ海丘である(p46)
・潜在資源量は、わが国EEZ内だけでも世界第二位、地金としての価値は、回収率45%:11億トンとして、100兆円以上(p48)
・現在、メタンハイドレードの商業化生産は2018年度を目標としていて、必要な生産技術開発を急いでいる、2013年春の産出試験に向けて準備が進められている(p57)
・国連海洋法条約は、現在161か国で批准されているが、主要国G8では米国だけば批准していない(p83)
・銅はレアアースなどと違って、代替え金属がない、電気を使う限り銅は不可欠である、自動車の場合、ハイブリッド車は一般車の2倍使用する(p97)
・メタルの生産量と地殻内存在量の関係、プラチナの生産量は最も少ない(192トン)が、地殻内存在量は金がプラチナ(0.004ppm vs 0.01ppm)より少ない(p99)
・日米共同で行っていたメタンハイドレードの採掘実験において、2012.5にアメリカにて、安全かつ安定的に採取することを確認したという発表を行った(p135)
・メタンハイドレードの採取方法のポイントは、液化炭酸ガスをメタンハイドレード中に注入することで、炭酸ガスがハイドレードになり、メタンハイドレードのメタンが出てくる(炭酸ガスがメタンと入れ替わる)もの、これは天然ガスを採取するときに排出される炭酸ガスを利用する地球温暖化ガスの固定化とエネルギー回収を同時にできるもの(p136)
・2000年紀における世界のGDPにおいて、中国やアジアは、1870頃までは世界の半分を占めていた(p181)
2013年1月27日作成
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●人類最後のフロンティア、それは深海である。海の資源を目指せ!
・深海底を、英語、フランス語、ドイツ語は共通でアビスと言うが、この単語はもともと古代メソポタミアのシュメール語アブ・ツーからきたもので、シュメール語でただ一つ現代まで残った単語。
・旧約聖書の洪水が黒海地域であったことは考古学的事実。大変興味深いのは、この時代、世界的に海面を上昇させたフランドリアン海進、これは日本では縄文海進と関連付けられている。
・旧約聖書のエデンの園に関連させられているピソンとギホンは今はないが、地球探査衛星ランドサットによると、はっきりとこれらの川の跡が残っている。
・現代の考古学では、エデンの園はバーレーンにあったことが定説となっている。
・掘ればなくなる、というのが資源の絶対的な特性で、これは資源学を学ぶ際、最初に叩き込まれる。
・銅はベース・メタルだったが、今やレアメタルである。
・資源は掘り起こす際の廃棄物が半端ない。金の大規模露天掘り鉱山では、金の含有量は1トンの鉱石中にわずか0.3グラム。よくて1グラム。残りは廃棄される。
・海底資源には、マンガン団塊、熱水鉱床、コバルト・クラスと、レアアース泥、そしてメタン・ハイドレード。
・アメリカはコバルトを全量輸入している。しかも産地はコンゴといった紛争地域。しかもコバルトは軍事に欠かせない。それで最近できた紛争鉱物資源指定の中にも、コバルトは含められていないのは意味深長である。
・深海底だけではなく、洋上や海中資源にも着目せよ。
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日本近海に眠るさまざまな資源。戦略的視点の欠如から、資源争奪戦に後れを取ってしまっていることへの警鐘に始まる。これに気づいた日本が、再度採掘技術力と人材力を高めることによって、地の利を生かすことを期待する。
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ここ数年、海底に眠っている「埋蔵資源」が話題になっている。その代表がメタンハイドレートだ。中国による鉱物資源の輸出規制や福島原発の事故を受けて、代替エネルギー源を探すのに躍起になっている。
そんな中で手にしたのが今回の本だ。日本の地上の国土は確かに狭いが、しかし、最近よく言われるのが排他的経済水域(EEZ)のレベルで見ると、世界第6位と言う違った数字が出てくる。ちなみに、世界1位はアメリカで、2位はフランスとある。フランスと思って意外に思ったがそこにはからくりがあった。それは、フランスは海外県や海外領土がある。ポリネシアは有名だが、カナダの東にあるサンピエール島とミクロン島(仏:Saint-Pierre et Miquelon)という島もフランスの海外準県だ。はじめて世界地図で見つけた時は、こんなところにもフランス領があるのかと驚いたのを覚えている。
海洋エネルギー利用に関する研究開発で、かつてはトップを走っていたのが、欧米どころか中国や韓国などにも遅れる始末と著者は指摘している。技術力、海軍力(海上自衛隊による権益保護)、政治力(軸がブレまくって迷走して決断できない何とか党とは違う決断力)をうまく活用していき、資源小国からの脱却と、技術力を海外に売って国益にするなど対策が求められる。
「都市鉱山」もすごいが「海底鉱山」もすごいようだ。
メタンハイドレートについて
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88
サンピエール島・ミクロン島について
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%B3%B6%E3%83%BB%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%B3%E5%B3%B6
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最近ではよく知られるように日本の排他的経済水域(EEZ)の広さは世界6位、陸地面積と合わせると世界9位だ。海底資源は在来型の石油、天然ガスに加え、メタンハイドレート、マンガン団塊、コバルト・リッチ・クラスト、レアアース泥そして熱水鉱床と多岐にわたるものがこのEEZ内に存在する。ただし現在の所経済的に採鉱できる方法はまだ実現していない。元々日本の海底資源探索技術は世界のトップランナーだったのだが、熱水鉱床の調査は1985年〜2003年まで実施しその後08年までの間中止、マンガン団塊については1975年〜96年で終了等々一度資源は海外から購入すればいいと舵を切ってしまっていた。その間に元々技術レベルの高かった欧米系だけでなく中韓の技術レベルが上がりもはやトップランナーと言えるかは疑問に鳴って来ている。特に実際に採鉱する際に経済性を左右するエンジニアリングが不足している。2010年にようやくエネルギー基本計画の中で海洋エネルギー・鉱物資源開発の強化が明記された。
例えばマンガン団塊の例ではマンガン28.8%、(40〜50%以下陸上資源中の割合)、銅1.0%(0.5〜1.0%)、ニッケル1.3%(0.4〜1.0%)など。実際の世界の露天掘りの鉱床では銅で0.5%、金だとわずか0.3g/tの採鉱が行われている。レアアースを含めれば技術革新により最高コストを下げることで充分な経済性が期待されるし、日本の場合だと国内に資源を持つことで価格交渉力の強化が期待できる。
海底鉱床の実用化が最も進んでいるパプアニューギニア沖とくらべると日本のEEZは外洋にあり気候条件は非常に厳しい。また、深海底についてはいまだに知られていないことが多く環境面の評価も必要になる。例えばフランク・シェッツィングの小説深海のYrrではゴカイがメタンハイドレートをかじり大陸棚を崩落させて大津波を起こしているし、バミューダ・トライアングルで船が難破するのは同じくメタンハイドレートが気化するからと言う説(さすがに怪しいですw)もある。太平洋に関してはブッシュ元大統領が海洋保護区を設定した。メキシコ湾では石油資源開発を優先してたので多分人気取りでしか無いが・・・それなりに評価されているらしい。
中国がよってくる尖閣諸島についてはどうか?1969年国連のアジア極東経済委員会が豊富な石油、天然ガス資源が埋蔵されていると報告したのが唯一の根拠では有るが、それを裏付ける科学的な調査資料や文献は一切ない。要は有るかもしれないと誰かがそう言っただけである。日中中間線を挟む中国の天然ガス開発も経済性は無いと言われておりなんだかなあと言うばかりだ。
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著者の熱い主張がコンパクトにまとめられている箇所があったので、そのまま記載。
「20世紀半ば以降、無資源国として自他ともに認めるわが国であったが、21世紀も12年過ぎたいま、自国に必要な資源は自国でまかなうということが、まんざら夢でもなくなってきた。
しかし、無資源国と認識していながら、陸上資源の争奪戦には、ほとんど参戦することもせず、相変わらぬ商社依存を通して、レア・メタル、レア・アースで資源危機に見舞われている。しかも、太平洋がまさに、人類最後のフロンティアとしてゴールドラッシュの様相を呈してきている中、めざとい『金鉱掘り』のDNAを持った欧米の探鉱会社や、資源曝食・石油がぶ飲みと揶揄されながら貪欲に資源囲い込みを行っている中国などに、これまた後れをとる始末。
資源で首根っこを押さえられていて、何のものつくり大国、技術立国、日本か。
しかし、少なくとも、海洋の場合には排他的経済水域(EEZ)がある。いまこそ官・民で態勢を立て直して最後のフロンティアでトップランナーを目指して海洋立国という国家の意思を持って、オーシャン・メタル開発を推進しなければならない。
世界的にも2030年には資源、食糧、水、環境といった危機に直面しようというとき448万平方キロメートルという世界第6位の広大なEEZと、そこに眠る世界有数の有用資源量を誇る日本が、最後のフロンティア、海洋で他国に後れをとるなど許されないことである。」
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海底資源に関する本です。2012年の刊行のようで、やや古い内容かもしれません。10年後の今、本書に名前の出てくる企業をググっても華々しい活躍は見えてきませんでした。実運用は近いのでしょうか。