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紙の本
紋蔵と脇役たちの漫才のような絡み合いが魅力
2010/01/08 19:05
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
居眠り紋蔵シリーズの第四弾。
居眠り紋蔵シリーズの第三弾「密約 - 物書同心居眠り紋蔵 -」では、ラストで紋蔵の父が死んだことの真相が明らかになり、紋蔵の苦悩とともに今までの紋蔵シリーズ最大の余韻に包まれながら終わった。
第四弾でも何かしらの続きがあるかなと期待していたが、あれはあれで終わった話だったようだ。
『安覚さん』や『奉行所』に借りを作ったという説明が出る程度だったので、少々拍子抜けした。
とはいうものの、相変わらず内容は面白く、関係なさそうな二つの話が交差して事件の解決に至ったり、以前の話で紋蔵家の一員となった『文吉』が活躍する物語ありで、ホームドラマ的な暖かさとミステリー的な推理を楽しませる内容となっている。
今回は作中に『お尋ね者』の語源になっている理由が書かれており、なるほどと勉強になった。
居眠り紋蔵シリーズが面白い理由の一つに、登場する脇役のキャラクターもしっかりと活躍していることだと思う。
特に定廻りの大竹金吾は本書でも活躍し、紋蔵との絡みも漫才を見ているようで面白い。
紙の本
ちょっとだけ骨のある小役人
2011/03/03 19:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:saihikarunogo - この投稿者のレビュー一覧を見る
『お尋者』という題で括られた短編集の巻頭は、『まあ聞け、雛太夫』なのだが、この言葉を聞くと、私は、宇江佐真理の『髪結い伊三次捕物余話』シリーズの『雨を見たか』に収められた、『おれの話を聞け』を連想してしまう。本人同士はわかれたくないのに、親族たちの手で無理矢理わかれさせられそうになっている夫が妻に「おれの話を聞け」と叫び、それを見ていた少年が、艶っぽい響きがある、などと感想を持つ。居眠り紋蔵、いや南の同心藤木紋蔵が、売れっ子娘浄瑠璃に「まあ聞け、雛太夫」と言ったときは、艶っぽいのとは逆の、野暮を承知で、有無を言わさぬ響きがある。
> それで、実はのう……と切り出すと、雛太夫の心にある大事なものが、ギヤマンの壺が粉々に砕け散るように壊れる。
「ギヤマンの壺が粉々に砕け散る」とはうまい表現だ。雛太夫が惚れた男は、ほんとうにかっこいい。ちょっと、池波正太郎の『雲霧仁左衛門』を思い出す。そんな男を諦めさせるなんて、酷じゃない?と、私は思うのだが、紋蔵も、かわいそうだと思いつつ、でも、やはり、真実を知らせたほうがいい、と、判断するわけだ。雛太夫は壊れたギヤマンのかけらを芸の肥やしにできるだろうか?
紋蔵は、上司から無理難題を押し付けられたり、妻の実家の両親からも面倒事を頼まれたり、友人知人からよろずもめごとを持ち込まれて迷惑しているように見えて、案外、本人が詮索好きのお節介であることを、後輩で切れ者の定廻り同心大竹金吾に見抜かれている。金吾も情報を提供することを楽しみ、協力し、ときには、法よりも人情を優先する紋蔵と喧嘩するが、結局、紋蔵と同じように人情にほだされてしまったりする。吟味方与力の蜂屋鉄五郎も、ふたりの良き理解者だ。
親友の捨吉の友人から、買った刀が盗物ではないかという相談を持ち込まれ、妻の母親から、仕立の注文に持ち込まれた反物が盗物ではないかという相談をかけられる。意外やその二つが一つの事件に結びつくという話の、『越後屋呉服物廻し通帳』は、前作『密約』で黒幕の黒幕がいたように、根の深いからくりをあぶりだした。
> 世に不条理は多々ある。長年お役所に勤めていると、まま不条理に出くわす。紋蔵ごときには手も足も出ない不条理にだ。そんな場合、忘れるしかないのだが、一件はおそらく、いつまでも脳裏にこびりついているに違いない。
犠牲者を出すような不条理に、紋蔵は何も好き好んで目を瞑るわけではない。一方で、市井の人々が不運なできごとや過ちから罪を犯してしまったとき、江戸時代の法では、厳格に適用すると何人もの人が死罪になったり、幼い子供の運命が過酷なものになったりする。紋蔵はそういう場合には、進んで見逃そうとする。そのために、一時は大竹金吾と仲違いするほどだ。
湯屋で板の間稼ぎに遭って茫然としている若い田舎侍。大名のお家騒動の一方に町奉行所が荷担するようなことができるか、と、与力同心一同が心を合わせて、御奉行の命令に反発したが、裏切り者が出て、その若い田舎侍が犠牲になりそうな形勢になり、紋蔵がひとりで大名屋敷に出かけて行く。
> 義を見てせざるは勇なきなりだ。『論語』などろくろく習っていないがそのくらいは知っている。
結果はともかく、紋蔵は自分がこういう性格だから、文吉の無鉄砲さが気に入っているのではないか。
文吉が出てくる話はすべておもしろい。捨子の行く末を心配し、捨子を隣町へ捨て移す者に怒りを燃やし、御飯ですよと呼ばれると一番に返事をし、弱いものいじめをする悪がき一派を相手にひとりで大立ち回りを演じて満身創痍となり、こっそり紋次郎の脇差を持ち出そうとして紋蔵に見つけられて医者に連れて行かれる。
文吉のために、紋蔵が、悪がきの親と対決する場面は頼もしい。一方で、文吉を他の息子娘たちと区別なく、厳しく躾けるところも、愛情の確かさ、暖かさを感じる。
友達が自分と同じような境遇に落ちたとき、文吉は、かつて紋蔵が自分に言ってくれたのと同じような言葉をかける。
> 「困ったことがあったらいつでも訪ねてきな。なんでも相談に乗ってやる」
居眠り紋蔵は、市井に埋もれた隠れたヒーロー、とまでもいえない。ちょっとだけ骨のある小役人だ。だからこそ、多分に勝手な上司たち、すなわち、筆頭与力の「安覚さん」や年番与力の沢田六平などとのやりとりにも、ユーモアが生まれるのだと思う。
紙の本
少し現代的すぎ
2002/07/22 11:50
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:masa - この投稿者のレビュー一覧を見る
池波正太郎や平岩弓枝や宮部みゆきの文体になれている人は、この作品を読むと、違和感を覚えるかもしれない。
ボキャブラリーが現代的で、たまに出てくるむかしの言葉には註がついているのだが、お白州に(法廷)などと註をつけるのは、どうかと思う。いったい何歳児むけに書いているのだろう。
江戸ものミステリーだが、どちらかというと、謎ときよりも人情話のおもむきがある。
文体の好き嫌いが別れそうだ。
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