紙の本
剃刀の切れ味
2006/10/09 19:09
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小林秀雄の入門作としては最適だし 今でも僕はこの本が一番小林の作品の中では好きだ。この20年間出張や旅行によく持っていっている。
収録されている評論はいずれも概して短く そして なにより切れ味が抜群である。実際 収録している「徒然草」や「平家物語」は全編 名セリフ集のような趣を湛えており つくづく 日本語の持つ美しさ、豊かさに感心してしまうほどである。
年寄りじみたくないが (そして僕自身 まだ41歳になのだが) 今の日本人が使っている日本語の汚さは 昭和30-40年代の 公害を思わせるほどである。
これは偏見も入っているかもしれないが 汚い言葉は 使っている人をスポイルすると思っている。その意味で この小林の作品は 是非多くの人に読んでほしいと思う次第である。
紙の本
直観の力
2015/11/21 04:33
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「モオツァルトの悲しみは疾走する」、美しく軽快、アルファー波が出るから気分がいい。いかれた性格だった。歴史的な資料から、あるいは側面から、あるいはその作品群の変遷から、いろんなことを言う人がいるのはただ知識の蓄えでしかなく、直接つかめた本質ではない、そう思っていたし、たいがいはそうだった。
唯一、違ったのはこの人の文章、言葉。
最初のフレーズで僕はとてつもない人がいることを思い知らされた。曲を聞くことからこのような言葉が紡ぎだされるなんて、こういう能力がある人がいるなんて。
絶対かなわない。
深い谷底に落とされたような、小林秀雄と比べているわけではないけど、ただ自分の非力をいやというほどしらされた。
爾来、小林秀雄フリークである。
信じない人は40番聞きながら読んでみてほしい。これ以外、どう表現できるんだと。
紙の本
当時のモーツァルト論は今でも通用しているんでしょうか?
2007/02/10 09:19
10人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ISH - この投稿者のレビュー一覧を見る
讃えてくれるのは嬉しいんだけど、この人が好きと言う曲一番イヤなもんばっかで複雑です。ひたすら重苦しく。
「モーツァルトただ明るく楽しいだけ何の意味もない」などとのたまう者が身近にいたので日々喧々諤々しておりました(-_-#)。それってこの人の聴き方で聴いているからでは?
例えば同じ「かなしさは疾走する」でも幻想曲ハ短調K.475とかどうでしょう。
好きな所は「素晴らしく悲しいけれど愛らしさが損なわれていない」。
「明るく親しみ易いピアノソナタ11番とそれを比較して聴いてみろ。後者は前者のそれが壊れた感。『存在すること不可能。こうあること不可能』という感でこの人の曲は明るく穏やかなほど悲しく味わい深い」と。
特に晩年の曲は優美なものほど過去の生とこれからの死の陰が色濃く響いていると言い張りますが。
紙の本
「小林秀雄がこう言っていた」
2023/05/30 06:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
音楽を聴くことに作曲家の人生を知ることは無用なのかもしれない。これを読んだからといってモーツァルトを理解できるようになるのかは疑問だ。知識だけが欲しければ、雑学を集めた本でも読めばよいのだろう。本書は「モーツァルトについて読んでいる」というより「小林秀雄を読んでいる」との印象が強い。『モオツァルト』ばかりでなく納められた多くの話題について「小林秀雄がこう言っていた」と言われそうな雰囲気が漂う。音楽について。哲学について。美について。絵について。歌について。いずれを読んでも「小林秀雄」が居て、語っている。
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まずは一言。とにかく読め。こいつを読め。
映画「アマデウス」だったか、モーツァルトは「私の音楽の中に、無駄な音はひとつもない」というようなことを言うのですが、これもまさに「無駄な言葉はひとつもない」。
一つひとつの文章に気合が感じられます。
「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。」だの、「恐らくモオツァルトは正しい。彼の言う方が正しい。併し、彼が神である理由が何処にあろう。やがて、音楽の霊は、彼を食い殺すであろう。明らかな事である。」だの、一文一文がすでに芸術。
小林秀雄の批評美学の集大成と言われますが、まさにその通り。
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中学のとき、背伸びして買った本。当時はもちろん今もよくわからない。無情という事は抽象的な概念だし、国語の授業でやったんで結構理解できた。そのとき、初めて小林秀雄という人がこんなに絶賛されてる事が分かった気がしました。こういう文章が書けるようになれれば、表現する際に起こるこの悶々とした感情からは解き放たれるのだと思う。
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モーツアルトが読みたくて買いました。
音楽と文化の楽しみ方感じ方を手引きしてくれます。 この本はモーツアルトのみの事が描かれているわけではない
バッハ ベートーベン ゲーテメニューイン ワーグナーの考察
ドンジョバンニやフィガロの考察 モーツアルトの短いテーマに秘められた神秘性 ニーチェとワーグナー ビクトルユーゴ パガニーニ ガリアノのバイオリンとパガニーニ ドビッシーのペレアスとメリザンドの詩的な表現にメーテルリングは拒否反応 まー面白い 小林秀雄の考察の仕方は真似したいものです。
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収録作:モオツァルト、当麻、徒然草、無常という事、西行、実朝、平家物語、蘇我馬子の墓、鉄斎、光悦と宗達、雪舟、偶像崇拝、骨董、真贋
小林秀雄の好きだったものを並べましたよ、みたいな。要するに好きでもないものについて語るべきじゃないのである。とこれを読んで思ったのである。
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大好きな本です。何よりも小林秀雄さんの表現の仕方がとても心地よい。モーツァルトだけでなく他の作曲家についての考察もあるのもまた楽しい。
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私の周囲には読書好きの人はいませんでしたので、小林秀雄が文学の先生でした。ランボオ、実朝、モオツァルト、・・・天才を語らせたら小林秀雄の右に出るものはいないとおもいます。
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正直なところ、あまりよくわかりませんでした(全体的に)。よくわかる人はいらっしゃるのでしょうか?でも、「モオツァルト」は読めば読むほどわかる部分が出てきて、ちょっと楽しかったです。「無常という事」も最後の最後で「なるほど」と思いました。でも、最終的な感想としては「よくわからなかった」になります。不思議です。私にはまだ早すぎたのかもしれません。死ぬまでに理解できるかも疑問ですが。
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天才の孤独に肉薄する小林秀雄の闘争心に圧倒された。教科書が教えてくれた最大の財産。何度文章を書き写したかわからない。
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模倣は独創の母である。唯一人のほんたうの母親である。二人を引離して了つたのは、ほんの近代の趣味に過ぎない。模倣してみないで、どうして模倣出来ぬものに出会へようか。僕は他人の歌を模倣する。他人の歌は僕の肉声の上に乗る他はあるまい。してみれば、僕が他人の歌を上手に模倣すればするほど、僕は僕自身の掛けがへのない歌を模倣するに至る。これは日常社会のあらゆる日常行為の、何の変哲もない原則である。だが、今日の芸術の世界では、かういふ言葉も逆説めいて聞える程、独創といふ観念を化物染みたものにして了つた。(小林秀雄 『モオツァルト』)
模倣でない独創は無い、と言っている。
小林秀雄だけでなく、この類の物言いは少し探せば幾らでも見つかる。
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この人の著作にはまらない人というのは僕は尊敬します。この人に心底批判的になってみたいです。 ぼくにはできません。 それくらい、僕は彼の不確かな日本語の論評が大好きです が
この頭でっかちの巨人は「音楽」を理解していたとはとうてい思えません。 音楽批評にはほころびがありませんが、だめです。 音楽をほんとうに理解する脳を、彼は封印していたとしか思えません。
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考えるヒントの小林秀雄。
色々と勉強になった。
特に Mozart = tristesse これにはとても賛成できる。
天才っていうのは常にどこか様子がおかしかったりするものです。
そして常に見えない悲しみの中にいます。
時々飽きてくるところもあったけど、その他の「当麻」、「徒然草」、「無常という事」、「西行」、「実朝」、「平家物語」、「蘇我馬子の墓」もよかったよ。
沢山勉強しないと書けないよね、こういうのは。
作者がちょっとだけ麻生太郎に似てると思うのは私だけですか?