紙の本
柳田國男らの伝承を用いた考察。
2016/08/12 11:41
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投稿者:鶴 - この投稿者のレビュー一覧を見る
神隠しとは、現代ではさほど用いられない言葉だ。何故か?
神隠しと呼ばれていた事件が、単にそう呼ばれなくなっただけで、
神隠しそのものがあった、なくなったという次元の話ではない。
そうだとは思っていたが、やはりそうなのかという裏付けを得るための一冊。
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一時期、民俗学にハマっていたので題名を見た瞬間に購入。表紙は軽い感じですが、きちんと文献を引っ張ってきていて、ちゃんとした学術書に近いです。でも、厚さもすっっごく薄いし、読みやすいですよ。内容も興味を持っている人にとっては、すごく面白いです。
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神隠しを凄く丁寧に読み解いているので、面白かった!!たくさんの資料を提示したり、神隠しの正体、条件なんかも事細かに分析。でもって、結局神隠しは妖怪の仕業とするのではなく、合理的・・・とゆぅか、現代の目から神隠しをきちんと分析していて、「事象」としてのそれがよくわかりました。文章自体も凄く読みやすいので、「神隠し」とゆぅ言葉に惹かれたら一読の価値ありです!
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その名の通り、神隠しについての本。
きちんと資料を引っ張ってきて書いている真面目な本なのですが、小松氏の論文は全体的に見て難しくない文章で良いですね。
「Missing」で神隠しに興味を持った方に特におすすめしたい感じかも。論文になじみのない初心者にも読みやすいので、入門書としても良いと思います。
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帯表
「神隠しのイメージはこの本から変わる」-高橋克彦
本書は、平成三年七月、弘文堂より刊行された『神隠し-異界からのいざない』を改題の上、加筆・訂正して文庫化したものです。
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たしかに、「神隠し」という名前のアジールがあれば、生きていくのは少しは楽そうです。
でも、本当は、「アジール」そのものが優しいわけではなく、「アジール」を認めて受け入れる此岸そのものが、優しいのですね。
だから、「神隠し」を認める世界を作るには、やっぱり、こっちの世界そのものの考え方、受け入れ方を変えていかないといけなくなります。
ところで、わたしは宮崎アニメは「千と千尋の神かくし」と「トトロ」は、見ていません。
なぜか、名作と呼ばれるものだけ見ていないという。
どういう巡り合わせだろう?
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今ではほとんど使わない言葉だけれど、日本人が畏怖の感情と魅惑的な気持ちの両方をいだく「神隠し」を分析し、その本質に迫る評論です。
謎解きのような構成なので、作者の結論はここに書かない方がいいでしょうが、神隠しをオカルトとも昔話とも違う切り口で説明する手法には感心させられました。
古今東西の神隠し譚が豊富に紹介されていて、それを読むだけでもとても面白いです。
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なぜ「神隠し」は夕暮れに起こることが多いのか、季節は春が多いのか。体験者にこども、女性が多いのは?
文中でも何度か言及されていますが、私も「神隠し」という言葉のミステリアスさに惹かれる日本人の一人。だからこの本を手に取ったわけですが。
「神隠し」という言葉が次第に使われなくなっていったのは、日本人が「神」を信じなくなったからと冒頭著者は言います。正確には、起こった事象に対して人々が神秘的な何かのせいにするのではなく、合理的な理由を求めるようになったから。で、数々の「神隠し」を扱った民話や言い伝えから、その背景に起こった事実を分析し分かりやすく解説してくれます。
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神隠しを否定するでも無く科学的に検証する一冊。
コミュニティの維持のためになされた殺人(口減らし等)、狂気に駆られた人間の行動、そして失踪といった陰惨な事実をかくすヴェールとして、神隠しを提示する。神隠しのエピソードは紋切り型のイメージが多いが、そのような言説から要素をピンポイントで取り出し分析する方法は面白かった。また、人を隠す神として、天狗、狐、鬼などを個別に考察しているところも興味深い。
こどもの頃、親から「夕方になると人さらいが現れる」と言われ早々に帰宅したものだけど、大人になった今でも「神隠し」とはちょっと怖く、妙に惹かれる言葉だ。
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隣に人殺しがいても、バレなければ神隠しとして解釈され社会は存続できる。隣近所を疑いながら限界状況で生きることを防ぐ人類の知恵。
神格的な理由を付与して社会を持続させる方便、それは魔女狩りであり、サキュバスであり、狐憑きであり、気ぐるいである。
最近、陰陽屋というドラマで、問題を無理やり狐のせいにして調和を目指す話を見ましたが、まさにこれ。神話をなくした現代人はこのスケープゴートがない。それは非常につらいが、いい面もあるので一概には是非の判断はつかない。
ただ、人の想像力というものは根本的に、常に自分や、自分の延長線上の社会を守り持続させるために存在すると思った。
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神隠しというオカルトを否定も肯定もせず、「ある現象」として認め論理的に考察分類されている。自分の中でぼんやりと存在した神隠しのイメージ、約束というものをきちんと説明されてスッキリした。
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各地に伝わる神隠し伝承を詳細に分析していて実に面白い。神隠しが民俗社会にかつてあった不思議なお話というだけではなくて、よくできた社会の救済システムで あることがわかる。現代でも神隠しがありなら気軽な感じに失踪できてもっと生きるの楽かもしれない。失踪したいなー!
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神隠しとは何かについて当時の時代背景を考慮して科学的に考察しています。
昔の人も現代人と同じ感覚を持っているところもあるんだなーと思いながら読んでいました。
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現在では失踪とか蒸発という言葉で表現される現象そのものは変化があるわけではない。筆者はこれを神隠しにあったものとして受け入れるというユニークなアプローチを採ることによって、神隠しの本質を浮き彫りにしてゆく。
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小学生の頃、学校から帰宅するとランドセルを放り出してすぐに
外へ遊びに行っていた。え?宿題?そんなものは知りません。
やってなくてもどうにかるという、いい加減な子供だった。
「行って来ま~す」と玄関を出る私の背に、亡き祖母は決まってこう
言った。「日の沈む前に帰っておいで。暗くなったら神隠しにあうよ」。
真剣には聞いていなかった。でも、ある日、小さな神社で友達数人
と遊んでいるうちに時間を忘れた。あたりが暗くなって来るのと同時に、
何故か怖くなって来た。
遊び場所が神社だったからかもしれない。祖母の言う「神隠し」にあって、
家に帰れなくなったどうしよう。こうなるともう遊んでなんかいられない。
普段の運動神経の鈍さはどこへやら。全速力で家に駆け戻り、半べそを
かきながら祖母に抱きついたのを覚えている。
神隠し。ある時、突然、生活圏から人が姿を消す。現代では失踪とか
家出、誘拐などの言葉に置き換えられるようになったが、昭和のある
時期までは人々はそれを「神隠し」と読んだ。
本書は民族学者が採取した各地に残る神隠し現象をひも解いた民俗学
の入門書…になるのかな。
現代ではほとんど使われなくなった言葉「神隠し」だけれど、きっと人が
忽然と姿を消す原因は昔も今もあまり変わらないだろうと思う。
ただ「神隠し」というベールに包んでしまえば、そこからは生々しさは
減少される。姿を消した原因が、間引きや蒸発であったとしてもだ。
自分たちの住む「こちら側の世界」と、神に攫われた「あちら側の世界」。
異界を設けることで辻褄を合わせていたのではないだろうか。
自殺も、誘拐も、失踪も、間引きも、「神隠し」としてしまえたのは日常の
すぐ隣に「闇」があったからかもしれない。
今ではよぼどの山間部に行かなければ闇に出会わないものな。人家の
少ないところでも、ぽつんと自動販売機があってほんのりと灯がある。
闇のなかには異界があり、時々、人を隠す。現実から目を逸らす手段
として神隠しは存在したのかな。