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“そりゃ先輩と知り合って以来、様々な事件に巻き込まれてきたし、今回だってその例に漏れないわけで、既に一般人とは言い切れない世界にまで足を踏み入れてしまっているのかもしれないけれど……。
「もし僕が謎の黒服集団とやらに追い回される羽目になったら、どう責任とってくれるんですか」
「五月蝿いなぁ。男やったら自分の身くらい自分で守りぃや」
情けない奴やなぁ、なんて冷たくあしらわれてしまう。
それどころかトラさんまでさも当然のような表情だった。
そりゃこの人くらい強靭な肉体を持っていれば謎の黒服集団にだって立ち向かえるのだろうけれど、生憎とこちらは格闘技経験のない一市民なのだ。
「ってかトラさん。そういう時、守ってくれるのが警察なんじゃないですか?」
「何年かかっても必ず犯人は捕まえてやる」
「それってどう考えても僕の死体が上がってからの話ですよねっ!?」”
先輩のドレス姿が結構可愛い。
人間の黒く暗いところとか、そういう部分が深くなってきたような。
“「そんな事はどうでも良い。それよりも、アレとはあまり会わない方が良い」
いや、志乃ちゃんが真白ちゃんの事、嫌ってるのは知ってるけどさ」
「そういう事でもない。アレの中には『自己』しか居ない。他人が一切存在していない。だから必要になれば、何の躊躇いもなく他人を切り捨てる事が出来る。どれだけ親しげにしていても、一切の迷いを持たない。感じない。事実として、彼女は既に大切な存在を自分の物にしている、非常に危険な存在」
予想外の迫力に言葉を呑み込む。
志乃ちゃんは普段から真白ちゃんの存在を拒んでいるが、僕には決して危険な存在とは思えない。
いや、ちょっとだけ嘘だろう。
彼女は僕にはまるで分からない世界を知っていて、たぶんとても大きな力を持っている。そういう意味で恐ろしいと感じる部分はある。価値観が全く異世界の存在のような、志乃ちゃんとよく似た、けれど別種の危険さは感じていた。
けれど、基本的には優しい子なのだ。”