紙の本
法医昆虫学シリーズファンにもおすすめです
2019/07/27 00:11
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さきえる - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸川乱歩賞受賞作とのことでしたが、私は法医昆虫学シリーズが大好きで、川瀬先生というよりはきっと赤堀や岩楯刑事のファンでした。この作品は法医昆虫学シリーズとは毛色も違うだろうし…と思い、今まで手を出していなかったことを、しかし見事に後悔しました。
物語の内容はさておき、川瀬先生の描くキャラクタの「人物に対する観察力」の完成度はこの頃から変わらずとても高いです。間違いなく川瀬先生だと思わせる観察の表現が、読んでいて安心します。
また、法医昆虫学シリーズでも見え隠れする信教・オカルト的な部分が好きな方は垂涎の内容す。リングや残穢のように、世代や土地を越えて語られる日本的なホラーが好きな方にもおすすめします。私は方言や時勢、地名などの関連性が好きなので、なんだかもうワクワクが止まりませんでした。
以下、すこしだけ内容に触れます。
呪詛に費やすのは呪われた人の命だけでなく、呪う側の心や魂も同じであること、しかしながら現代における呪詛の存在やその現実など、うまく完結していたと思います。
呪いというもののお話なので、やや現実味に欠ける部分もあるかもしれませんが、よくここまで突き詰めて書かれたものだと感心しました。参考資料まで少し探してしまったくらい。呪いに関わる部分は一文一文がおぞましく思え、鶴水に気をとられるあまり飛鷹を見落とすくだりなどは川瀬先生らしい伏線回収だと思わず踊りました。
あと、法医昆虫学シリーズでの赤堀もしくは岩楯刑事のピンチが好きな方、凄惨な遺体がお好みの方、今作にもあるので未読の方はぜひ楽しみにしていてください。
また、物語のおわりのなんとも言えない後味も、個人的には素晴らしかったです。メビウスの守護者が好きな方は好きかもしれないですね。
事無草に気づいた仲澤、自ら気づかせた真由。真由の覚悟と意志、仲澤の個人的興味や本質に基づいた選択。誰しもが大なり小なり罪を背負って生き続けていくお話でした。
ひとつ川瀬七緒のファンに近づけた思いです。読めてよかった!
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呪い殺す!
2015/12/24 21:41
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投稿者:papanpa - この投稿者のレビュー一覧を見る
惨殺された老人の家の床下から、怨念が匂い立つような呪術符が見つかります。
優しかった祖父に何故こんな呪いが?
孫娘は呪術を専門にする人類学教授の主人公とともに事件の解明に挑みます。
個人的感想
古来から伝わる呪術に絡んだジワジワとくる恐怖で話が進みます。
面白かったです。
ただ、呪いの根幹部分、呪われる側の理由がありきたりで残念。
呪う側も呪われる側も、お互いそれぞれの悲しい過去があれば最高だったのですが。
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ひきこまれる
2015/05/03 17:06
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投稿者:マー君 - この投稿者のレビュー一覧を見る
祟りや呪いによる一昔前に推理小説はこれまでにもあったが、現代社会での呪いをテーマにした設定が面白い。
主人公は呪術を専門としている文化人類学者だが、いわゆるオタク。
祟りや呪いは人里離れた田舎の殺人事件が相場だが、この話は都会で発生し範囲が四国、京都、東北と全国にまたがるスケールの広さ。
読んでる間にどんどんひきこまれてしまった。
クライマックスでを主人公らが助かるシーンのつながりがはっきりしないのが残念。
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スピーディーな展開…
2015/08/23 09:02
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sin - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は例えば将棋を一局指すのではなく、詰め将棋の譜を見せられるようで、よく言えばスピーディーな展開でおもしろい。悪くとればせっかちな感じが否めない。冒頭からいきなり本題に入って引きずり回される主人公にしてからが何のためらいもなく日常をほったらかして先へ先へと読者を導いていこうとする。兎に角、一気呵成に書き上げたという感じだ。刑事側の視点に立っていないため肝心の殺人事件の殺人の部分が希薄ではあるが、主人公たちの呪術の追求が興味深く物語の進行に飽きさせる事はない。
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まずタイトルがいい。すごくいい。
で、呪いとかを扱いつつも、
現実に根ざしたストーリー展開が好き。
これ凄くいい。
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呪いは世代を跨ぐもの、この一文にゾクッときた。真相はシンプルながら、事件につきまとう謎のオカルト度と濃い不気味さが納涼ミステリーとして最適。
呪われ続ける苦しみに呪い続ける狂おしい悲しみ…どちらの人生も壮絶で、犯人がわかってからも過ちと憎しみと無縁でいられない人の性を考えさせられ気持ちが沈む。
主人公二人の魅力に欠ける点と終盤のやや強引に感じる展開が惜しい。
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本作のテーマは呪いで人が殺せるか?というもの。
人の死を願うという呪い。その行為には、姿なき呪術師の底知れぬ、そして凄絶な執念が感じられ、空恐ろしくなる。
しかし、やがて明らかになる過去の出来事に接すると、それは悲痛なまでの一つの願いの形であったのだと理解できる。
その命懸けの呪いは、幾星霜の時が経つうちに、いつしか祈りにも似たものに昇華したのかもしれない。
到底他者の賛同は得られないものだとしても。
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呪術を専門とする大学講師の仲澤のもとに、気味の悪い呪術符を持って大学生の真由が相談に訪れた。
聞けば、彼女の祖父は一ヶ月前に何者かに惨殺されたのだと言う。
事件に特殊な呪術の気配を感じた仲澤は、真由に協力し、調査に乗り出した―。
デビュー作ということですが、読み手を物語に没入させることのできる新人離れしたテクニックに、最初から最後まで踊らされました。
おどろおどろしい雰囲気作りが巧みで、物語が進んでいくうちに恐怖と不安感が増幅していきます。
テンポ良く繰り出される会話の応酬や、立体化したキャラクター達の描写も、否が応でも物語を盛り上げ、読者を引っ張る牽引力になっていると感じました。
読み手に謎の手がかりを提示しないので、謎を解いていくミステリーというよりもホラーサスペンスといった趣向でした。
その点が、殺人事件の2時間ドラマを観ているようで、ちょっと不満です。
面白い物語を形作る基礎体力がしっかりあると思うので、他の作品も読んでみたいと思います。
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タイトルに一目惚れし、駅のキオスクで(人生数回目!)衝動買い。
江戸川乱歩賞受賞の、民俗学を下敷きにした謎探求がたミステリ。
…温厚な人格者で知られた老人が、舌を切られて自宅で惨殺された。現場にはタンチョウヅルの血液と塩、彼の自宅の床下からは50年以上前の「すさまじい」ほどの呪いの符。
生前からひとを避け、魔よけのかたしろを作り貯めていた老人の過去には、激しい恨みをかうほどのなにがあったのか…。
謎を解くため、民俗学者と少女が走り出す。
「師走の月に雪なくば、よろずのことに気をつけよ」
呪いという下敷き、そして小道具や脇役がよく、エンターテイメントとしては最高に楽しませていただきました。登場人物のリアリティーには欠けるところがありつつ、それもゲーム上だと考えればよし。大風呂敷ひろげたミステリは、最後にがっかりすることがよくあるけれど、さいごまで失速せず雰囲気をこわさず、うまいこと落としてくれました。
個人的には過剰な男女ラブロマンスサービスを挟まないとこは女性作家さんらしくて好ましかった。そして、読んでいて既視感とおもったら…TVのドラマ、CSIマイアミシリーズみたい…でした。テンポが。
二作目はないのかしらこのシリーズー! よみたい!
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死体周辺に残された昆虫で状況を判断する法医昆虫学シリーズを書いている川瀬七緒のデビュー作
オカルトを題材にしたミステリー
探偵役は文化人類学者
残された情報は呪いの作法
被害者の孫をワトソン役にして、古今東西を駆けまわり呪いを解明し殺人事件の謎を解き明かす
って、感じの恐ろしいと思いきや人を呪わずにはいられない人の感情のアップダウンをミステリーにした作品
いっそ、法医文化人類学って、、、、無理でしょ
から、昆虫に移行したのかもって思わす様式はこの後の2作と同じ
キャラクターもオイラは法医昆虫学シリーズのほうが好き
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福島出身の作家というのと、作品名に興味をそそられ購入。
因習、呪術、子供虐待。半世紀以上に渡る怨みの謎を探るのに、それとは直接関係ないDV・虐待を盛り込んだ効果があるとは思えない。焦点がボケたと思う。虐待ネタや中途半端な恋愛ごっこを省いてもっと呪詛呪術を掘り下げれば良いのに…。
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2014/01/10読了。出張中に時間つぶしに購入。江戸川乱歩賞受賞作。
「呪い」がテーマとういことでホラー系かな?と思って読んだら、久々に面白いミステリでした。
呪いを専門に研究している若い大学の先生と、呪いで殺された老人の孫が、呪いの謎を解き、犯人を探すというストーリー。題名からの印象をいい意味で裏切られ、犯人探し道中は明るい感じです。
呪いっていうとうさんくさく思いがちだけど、歴史とか地理も含めて文化的な背景が盛り込まれてて、謎解き過程も楽しめました。
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夜中に読んだので怖くて怖くて。
人を呪うということは、恐ろしくも悲しいことだと感じた。
全体的な雰囲気は嫌いではない。
ただ一つだけ気になったことがあった。
ラスト付近の、電話越しに聞こえる鈴の音。
確か鈴の音って電話では聞こえないのではなかっただろうか。
そう考えだすと、すっかり現実世界に引き戻されて冷めた自分がいた。
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【第57回江戸川乱歩賞】
テンポが良くて一気読みするも、もやもや。なんでそこからそこに繋がるの?と、いう感じなところが何箇所か。もやもやと煙にまかれる。閃きでそことそこ繋げちゃうってのはミステリーとしてどうなのか。それとも行間読めてれば繋がるのか?いっそのことオカルト的な要素で説明してくれたほうが、読む方としてはすっきりしたかも。そして、謎解きよりは呪術に重きをおいてくれた方が好み。行間読めないついでに言うと、DVのエピソードはないほうが、内容がぶれなかったと思います。
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被害者は呪い殺されたのか!―謎が謎を呼ぶ、呪術ミステリーの快作。変死体のそばで見つかった「呪術符」の意味は?呪いと殺人の謎に文化人類学者が挑む!第57回江戸川乱歩賞受賞作。
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民俗学、文化人類学、というと、どうしても北森鴻氏の連城那智シリーズを思い出してしまう。本作も、土地ならではの伝承や、民話の類、村特有の道具など、興味深い要素をたどって真相にたどり着くのだが、前半がいささかテンポに乗り切れていない印象なのに比べ、終わり近くであまりにあっけなく真実にたどり着き、しかもそれが当事者の告白というのは、ちょっぴり肩すかしと言えなくもない。キャラクタの持ち味が出そろわない内に終わった感もあり、中澤大輔シリーズとして別の事件も読んでみたい一冊である。