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沖縄の歴史を太平洋または東アジアの諸列島という視点で捉えている。
文化の北上説と南下説の両方を紹介し、酒、染織、陶芸の3つの具体例を示している。
古代史が弱いという指摘があるとすれば、それは文献に比例しているという視点で見れば過不足ない。
文献のない事項と、文献のある事項とを、あたかも同一の価値かのように説くような、通史は素人受けしても、価値があるかどうかとは別の次元ではないだろうか。
日本史の一部として沖縄の歴史を説こうとする傾向に対して、明確な課題を提供していないかもしれない。それは、日本語で日本において歴史を記述しているためかもしれない。
本土自体が混合文化であるのに、沖縄はさらに強烈な中国と日本とアメリカの支配にさらされ、より混合文化の度合いが高いのかもしれない。
その意味では、古い日本の歴史の刻印を持っている以上に、東アジアの辺境らしい文化を持っているといえるかもしれない。
なるべくわかる範囲内の諸説を列記しながらも、確実な筋を導こうとしている姿勢がわかる。
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太平洋文化圏の中で沖縄の歴史と文化を捉える。日本的なものと大陸文化、南方文化を取り入れ沖縄的なものへと練り上げながら発展してきた沖縄独自の歴史と文化に触れることができます。また、一口に沖縄といっても、本島と八重山地方、宮古地方では方言を筆頭にそれぞれ全く異なる文化を有しているという事実を理解することができます。
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2018年11月読了。
歴史についての概説的にあっさりな記述。
通史を知るには適度な量か。
言語、文学、習俗についての記述が豊富。
琉球史、沖縄史のジャンルは広い、豊潤。
最新の情報をキャッチアップしながら、
関心の強いジャンルはさらにディープな領域に踏み込んでいきたい。
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主に歴史の部分を中心に読んだ。
薩摩の侵攻後の清との冊封体制の継続、明治の琉球処分、太平洋戦争の沖縄戦、サンフランシスコ講和条約を経て、現在の米軍基地問題と、中世から現代に至るまで沖縄がいかに時代に翻弄されて来た歴史を少しではあるが知ることができた。
文化の面も面白い。
言語、あとは日本神話とポリネシア系神話の両方に繋がるような神話も興味深い。
もうちょっと掘りたい。
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【沖縄文化というダイナミズム】
私が食卓でヘビロテするお皿はやちむん(沖縄の器)の7寸皿だ。ゴーヤーチャンプルーはもちろん麻婆豆腐、鶏の唐揚げ、ぶり大根など何でもサマになるところが気に入っている。しかしこのお皿のルーツについてこの本を読むまで考えたことがなかった。
本書は言語学者で沖縄最古の歌謡集『おもろさうし』研究の第一人者である外間守善氏による初学者向けの沖縄文化史概説である。特徴は島尾敏雄のヤポネシア構想にならい、太平洋文化圏に位置する沖縄の歴史と文化を、日本列島の文化の根っことして紹介している点だ。
たとえばやちむんの創始は南方の酒器であるとされているが、その後朝鮮、中国、薩摩の陶芸が沖縄で融合し、沖縄的な美意識で包み込んだ鮮やかな結晶であるのだという。泡盛や染織も同様に、ルーツを単純に色分けできない、複合的で豊かな文化の重なりこそが沖縄文化の特色であると強調する。私の皿がどんな料理でも美しくサマになってしまうその理由がわかった気がした。
80年代に開かれたNHK市民大学講座をベースにしているため、外間先生が目の前で講義してくれているようで非常にわかりやすく伝わってくる。(本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会/さとちん)
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中公新書
外間守善 沖縄の歴史と文化
沖縄学入門書。グスク時代以前からの通史、ヤポネシア構想による文化圏比較、日本文化北上説など 全体像が理解できる構成
琉歌など言語文化や神観念など宗教文化は 大陸の影響を受けた大和民族との共通性もあり、複合文化の面白さを感じる。八八八六の三十音の短歌は 難解すぎる
通史の中で見ると、薩摩の琉球入りから沖縄の不条理な近代史が始まる。琉球処分や沖縄戦を見るかぎり、近代における国民国家主義は間違いだったように思う。国家を守るために 自国民の犠牲をいとわない軍隊の実態に 戦争の無意味さを実感する