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山の霊異記 黒い遭難碑 みんなのレビュー

    一般書

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    みんなのレビュー11件

    みんなの評価3.8

    評価内訳

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    紙の本

    山岳怪談の魅力と怖さと、やさしさと

    2010/08/03 22:18

    5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:抹茶パフェ - この投稿者のレビュー一覧を見る

     文庫化もされた前作『赤いヤッケの男』から2年。山岳怪談を得意とする著者による怪異譚第2集が満を持しての登場だ。
     前作『赤いヤッケの男』に続いて今回も、筆者自身の体験談や山仲間たちから蒐集した話が収録されている。数ある怪談実話本の中でも、山の魅力に怪異をしっかりと添えて描き出す安曇氏の作品はまず読み物としても十分に面白い。山に詳しくない私にも四季に彩られた景色や自然の息吹が臨場感豊かに感じられ、山仲間とのふれあいや、ドリップしたばかりのコーヒーを飲み(「真夜中の訪問者」)、焚き火で焼いた川魚にかぶりつく場面(「三途のトロ」)も非常に魅力的に伝わってくる。そんな愉しさにあふれた山だからこそ、そこで起こる怪異がよりいっそう際だってくるのではないかと思えるのである。

     見知らぬ人に近寄ったら既にこの世のものではなかった、という展開は本書でも度々あらわれる。前作の『赤いヤッケの男』を既に読んでいた私としては正直なところ「なぜ怪異であると最初から疑ってかからないのだろうか」と野暮な疑念が頭をもたげてくることも実は何度かあった。
     しかし日常では、私たちはどう怪異と向き合っているかをふと考える。仮にあやしげな場所や人を目撃したとしても、すぐにオカルトや怪異だと結びつけたりはせず、合理的かつ現実的な説明がつくよう根拠を探し、単なる気のせいや思いこみ、錯覚などで片付けることのほうが多いのではないだろうか。
     その場所が山ともなればなおさらで、知らない人と出会っても礼儀を欠かしたりはしないし、どこかおかしな光景に遭遇してもやはり合理的な方向に思考を働かせようとするだろう。「黒い恐怖」の黒い塊や「青いテント」に出てくる不気味なテントをはじめ、この本を読んでいると、やはり私たちの日常は常識の中で物事を考えるのが大抵の場合殆どで、同時に、本に書かれていることだから自分とは無関係な遠い世界の話じゃないかと、どこか安心して読んでいるのではないかとも思い、急にぞっとさせられる。それは私たちの心の隙が鋭く突かれる瞬間でもある。

     本書も怪異に翻弄される話が多いなか、唯一怪異とやさしく向かい合う顛末を描いた「ひまわり」と、「あとがきにかえて」で語られる金縛り克服体験談はそれぞれ対照的だ。「序文」でも安曇氏自身がキノコ狩りで遭難しかけた体験を紹介しているが、怪異の有無に加え、改めて山という場所の怖さも警告している。本書に収録された作品を読みおえて、怪談は決して他人事ではなく、いたずらに恐れるものでもない、しかし安易に共存することもまたできないのではないか……。そう私は思った。

     怖さだけをひたすら追求した結果、後味の悪い、人間の嫌な面を殊更見せつけるような怪談も多く存在する一方で、安曇氏の書く怪談は一服の清涼剤のようなすがすがしさがある。『赤いヤッケの男』文庫版の解説で、みなみらんぼう氏が安曇氏の怪談を「見事と言っていいのは虚仮威し的な話は皆無なこと」と評しているが、本書においてもそれは健在だ。かつては生者だった彼らの声が安曇氏の作品を通して、より多くの人々の心に届いたときに初めて、本書のタイトルである「黒い遭難牌」は与えられたその役割をようやく果たし終えるのではないだろうか。

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    紙の本

    理不尽なる山

    2010/07/09 18:52

    2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

    投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

    『赤いヤッケの男』でも感じたのだが、この物語の面白さは、ずばり理不尽であることだ。
    登場人物は殆ど登山者であり、当然ながら山に対して畏敬の念を抱きこそすれ、馬鹿にしたような振る舞いはない。それなのに、彼等はこの世ではないものに遭遇するのである。
    例えば、よく知られている怪談には、幽霊に取りつかれたりとり殺されたりする人には、幽霊を生前いじめたとか、粗暴な振る舞いで神を怒らせたとかそれなりに納得できる理由があった。
    しかし、本作に収録された怪異譚には、それがない。つまり、山に対してどんな気持ちを抱こうと、どんな態度を取ろうと、その時その場にいただけで異世界の者たちに脅かされるのである。
    これほどの理不尽があろうか。

    さて、理不尽は強く感じたが、怖い話としての魅力を増すには、やはり何らかの工夫が必要と思われた。その文章を、一文のみで改行するか、それとも物語がある程度まとまった所で改行するか。改行自体は小さなことだが、読み手のリズムを作り出す。改行が多いとノリが軽くて良い、という読み手もいるだろうが、自身の場合は逆に読みづらかった。素材が良いだけに、ああもう少しアレンジを加えると、怖そうに見えるのにな、と惜しまれた。

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