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紙の本
日本のエネルギー産業を地下から支えてきた筑豊には義理と人情が詰まっていた。
2004/05/10 23:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この物語の舞台は福岡県の田川である。
社会科見学で田川の炭鉱に行ったとき、坑内に続く縦坑までの見学であったが、闇をまさぐるライトの光と耳をつんざく騒音に随分と驚いたものだった。時おりすれ違う炭鉱夫は眼光鋭く、小学生の見学は仕事の邪魔とばかりに有無を言わさぬ圧力をかけられた。読み進みながら、田川の炭鉱やボタ山、炭住と呼ばれる炭鉱夫らの長い長い長屋が蘇ってきて、一気に昭和三十年末の時代にタイムスリップしていた。
父親の事業の失敗から、主人公の立花新一は父親の軍隊時代の戦友のもとに預けられることになった。田川の炭鉱で働く戦友野上源一郎は友人の息子であっても、初対面から容赦ない詰問と拳骨を新一に食らわすのである。
生まれ育った東京とは大きく異なる環境と人々、更には頭を丸刈りにされるという屈辱の怒りから脱走を企てるが、あっけなく見破られてしまう。
地獄に放り込まれたような新一だが、源一郎の息子である竹ちゃんと兄弟のような付き合いをするうちに、田川の人々の人情にすっかり嵌ってしまうのである。
子どもが盗みをはたらき、盗品と分っていながらも買い上げる大人がいて、大人と子どもが対等に鎬を削っている炭住生活の描写はおかしい。
新一は竹ちゃんの秘密であるヨット作りに参加し、一緒に玄海灘の無人島に探検に出かけるのである。この探検で半島や大陸からの密航者と間違えられる事件は当時の北部九州の世相が表れていておもしろかった。
クライマックスは新一が父親に呼び戻され、東京に帰る場面である。
小倉駅まで新一を送りにきた源一郎が新一から取り上げた貯金通帳を返すところであるが、鬼のような源一郎が新一を優しく諭すところは胸が詰まってしまった。
また、炭鉱事故での人々の様子は炭鉱で生まれ育った著者でなければ描けない風景であった。源一郎が坑内作業をしているという設定であったが、言葉では表せない家族の愛情が読み取れるスグレモノの章である。
『青春の門』で有名になった田川であるが、いまでも削られて平たくなった香春岳が迎えてくれる。
まるで、自らの身を犠牲にしても義理と人情を忘れない男たちの象徴のように屹立する姿は、やはり筑豊のシンボルではないかと思っている。
子どもの頃に戻ったような気分になって、この物語はとても楽しかった。
紙の本
昭和30年代の日本
2022/06/04 14:25
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
高度経済成長期に向かう時代の少年の成長を描いた1作。
東京出身の少年が、父親の戦友に預けられ、九州の炭鉱の街、田川へ。
さまざまな経験をしながら大きくなっていく。
ダイナミックな展開がある物語ではないが、少年の成長の物語、冒険物語として、現代の子どもにもた楽しめるのではないか。
大人にとっては、昭和30年代の日本の様子や時代背景を振り返りながら、さまざまなディテイルに興味が向く。
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