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殺伐とした事件が起こると、ワーカホリックな刑事が寝不足と煮詰まったコーヒーに辟易としながら事件解決に邁進……ていうのを読み慣れているせいで、とても新鮮でした。
フランスの田舎警察の警察署長(といっても署員はひとりなので、ほとんど交番のおまわりさん的な役割)の主人公が、田舎生活を満喫しつつ、ロマンスもありつつ、どっちかっつーとコージーミステリ的な雰囲気で、惨殺事件に決着をつけるというお話。
でも、あくまでもコージーミステリではありません。(ここ、大事)
EUという名前に変貌したヨーロッパの経済その他を背景に、人種差別や、第2次世界大戦の暗い歴史を網羅したミステリで、好青年の署長も実は過去のある切れ者。脇を固める村人たちもなかなか味があって、続きが愉しみなシリーズになりそうです。
読み終わって、間違いなく現代フランスのミステリなのに、なんだろう、江戸の捕物帳を読んだような安定感があったのが不思議だったなー。
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おもしろくなかったわけじゃないけれど、うーん、昨年のベストテンとかに入るほどかなあ?という感じで。単に、舞台がフランスで、わたしがフランスの政治情勢とか歴史に疎いからかもしれないけれど。憲兵隊とか戦争の話とか、何時代の話?と最初思ってしまったし。(現代の話です)。
出世とか考えず、のんびりした田舎の暮らしを愛している警察署長が主人公で、コージーミステリのようなおもしろさなんだけど。シリーズものなのでシリーズが進んでいくうちに好きになったりもするかもしれないけどなあ。
(ちらっと、デボラ・クロンビーの警視シリーズが頭をかすめるんだけど、比べたら断然クロンビーのほうが好きだなあ)。
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ちょっと主人公カッコ良すぎな感じもあるけど、村の仲間、友人、村長、などへの優しく熱い気持ちのおかげで、嫌味には感じられません。何より食べることがおいしく楽しく描かれているのがプラス評価。ミステリ的にはそれほどじゃないけど、その分全体的なバランスがとれてるように思いました。
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フランスの小村で、老移民が胸に鉤十字を刻まれて殺された。戦功十字章を授与されたほどの英雄が何故?
平穏な村のただ一人の警官が事件の捜査に挑む。
警察署長が主人公でありながら警察小説ではなく、料理や村の描写からコージーな雰囲気もまとっている。この小説をなんと呼んだらいいものやら。
このバランスは嫌いではないけれど、何を期待して読めばいいのかわからなくて不安になる。
事件も陰惨な真実がそこに隠されていたのだけど、その惨さが伝わってこない。
事件も結局はあっさりと政治的解決で片がついてしまったし。
欲張りすぎて、ずべてが中途半端になっているように思えた。
村の一連の描写と事件の結末を巧いことシンクロさせるだけの力量が作者にはあるんだから、進むべき方向が定まればマシになるかなあ?
シリーズの続きが出るようだったら、気にして読んでみよう。
でもこの1作では世間の高評価が納得できないわ。
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最初フランスの田舎の話が続き、読むのやめようかと思った。
が、殺人事件が起きてからが、面白い。
なんか江戸の捕り物の話のよう。
コネと出世とお金が優先で、真実はどうでもいいというのが新鮮でよかった .
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警察署長ブルーノ・シリーズ第1作。
フランス南西部に位置する小さな村サンドニが舞台。風光明媚な土地でのコージーな雰囲気のミステリと思ったら少々違っていた。第二次世界大戦まで遡る陰惨な歴史がモチーフの骨太な内容だ。だが、せっかくの題材が生かし切れていない印象。
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フランスの田舎町を舞台のミステリ。
シリーズ1作目、好評だったようです。
フランス南西部、ラスコー洞窟に近い風光明媚なサンドニ。
警察署長が常駐してはいますが、村長の直属で、部下はいないという~交番の駐在さんみたいな存在なんですね。
ブルーノ署長は10年この村に馴染んで、皆のために心を砕いている好人物。愛犬ジジと暮らしている39歳の独身男です。
孤児として育ち、ボスニア戦争に行った経験もあるという。そういう過去があるからこそ‥というところも。
今は平和なこの村で、尊敬するマンジャン村長をひそかに父のように思い、美しい景色と美味しい食べ物を存分に味わっている様子が描かれて、ちょっとコージーミステリのような雰囲気も。
フォアワグラ、トリュフ、胡桃が名物の村。ワインやチーズや手作りの料理の美味しそうなことったら!
そんな村に、突如起こった殺人事件はけっこう陰惨で、骨太な展開となります。
フランスの警察機構というのは変わっていて、地元にいる憲兵隊と国家警察とが縄張り争いをしているんですね。
ブルーノは地元警察でありながら、捜査からも最初ははずされている存在。これが活躍を見せるというわけ。
国家警察のジャン=ジャックとは信頼関係にあり、新しく赴任した都会的な美女イザベルとは惹かれ合うことに‥
EUに参加してから、イギリスや北欧からやってきてこのあたりの別荘に住む外国人も増えているそう。
フランス人の側から描かれていますが、実は作者はイギリス人。25年のキャリアを持つジャーナリストで、夏はこの地域で過ごしている人。
道理でやけに詳しい描写があると思いました。
ドイツにも「幸福とはフランスに住んで神のように暮らすこと」ということわざがあるそうで、人もうらやむ暮らしのようです☆
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豊かな暮らしの村と複雑で暗い戦争の歴史。登場人物が皆、魅力的。村の住人の会話がとても上品。皆さんが飲まれるリカールっていうものを一度飲んでみたい。最期の終わり方が消化不良で残念。
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2/3くらいは「ムック『フランスの田舎の暮らし方』」だった。残り1/3のだいぶ終盤になってようやく捜査が進展し、唐突に容疑者が浮かび上がってきた。
ブルーノ署長と一緒に食事と田舎の風光明媚を楽しみながらゆっくり事件を解決しましょうという感じのミステリー。
田舎だからか署長ですら法よりも自治体のルールを優先。
読み始めた時は仮にも警察、そんなことでいいのかと思ったが、天涯孤独の自分を無条件で受け入れてくれた村人との穏やかな関係がもう署長の血肉になってしまってるんだろうなあ。彼が守りたいのは法ではなく村人なんだろうと思う。
実際、署長が自分の家を持った時に村人たちが力を貸して何から何まで面倒見てくれたくだりはちょっと泣けた。
警察署長がそういう情や関係性を最優先させるのがいいかどうかは別として。
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図書館で。
食べ物が美味しそう。青いクルミを入れたブランデーとかちょっと飲んでみたいなぁ。
ミステリー小説というよりはブルーノ署長の日々プラスちょっと事件、といった感じ。なんとなくイギリス女生の方とうまく行くのかと思ってましたが違ってましたね。今後のシリーズでどう変わって行くかはわかりませんが。
移民の問題も過去の戦争も難しい問題なんだろうなぁと思います。やっぱり過去は残りますよね。食べ物が美味しそうなので次も読んでみようかな。
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イギリス作家の書いたフランスが舞台のミステリ。初めて読むので馴染むまで時間がかかったが、読後感はよかったので続きを読むことにした。
主人公はフランスの片田舎で優雅な独身生活を送っている39歳の警官。村人のことは知らないことは無い、女たちは独身の彼の噂話に事欠かず、人気もある。
古家を快適に改造し、ガーデニングにもいそしみ、テニスやラグビー仲間、クラブの友達を招いてテラスに自家製のワインを出し、手作りの料理でもてなす。
誠実で明るく、思慮深い出来すぎたような男。
ただ寂しい過去があり、孤児で育ったが村長の計らいでこの村に落ち着いた。これもありとする。
人格者の村長を父親の様に尊敬して慕っている。
まぁありきたりの造形だと思えた。大事件が起こる前は。
そののどかな「サンドニ村」で独り暮らしの老人が虐殺された。彼は戦功十字章を受けた英雄だが、アルジェリア人だった。息子も孫もいて、もうすぐ曾孫も生まれるというのだが、滅多に人前に出ず、すすんで忘れらたような生活をしていた。
毎日、夕方の食事のため送り迎えをしていた優しい孫が発見してブルーノに知らせる。そうして村で独りの警官として事件に片足を突っ込むが、本捜査は任かされない。
悪役の捜査官が登場、物語を引き立てる。身分に拘り、育ちのよさをひけらかす厭な奴だ。
しかし、この事件は過去の第二次世界大戦に端を発していた。
そこでジャーナリストだったこの作家が本領を発揮する。戦前戦後のフランス軍とナチスドイツなどヨーロッパを巻き込んだ戦いの歴史的な薀蓄が長い。
重要な核になるところだが、私のような歴史音痴には、そこまで長く細かく教えられなくても、話は進むのではないかと思ってやきもきする。
しかし一面身につまされる記述もある。知りあった歴史の教師が語るイギリスの産業革命後の話。
上等な農業技術のせいで労働力は需要が減り、資金はますます必要になった。それで小規模農場や農家は土地を失い、一方で新しい工場に労働者が必要になったの。英国は見る見るうちに都会的な産業国になり、大都会の市場には輸送や貯蓄が容易で、手早く用意できる食べ物が求められるようになった。多くの女性が加工や製造の工場で働いていたからよ。その後北米やアルゼンチンで新しい農地がどんどん開拓され自由貿易政策の下で英国の農家は価格競争に敗れ、英国はいつしか安い食品の輸入大国になった。外国からは肉の缶詰や大量生産のパンが入ってきた。それと平行して、何世代も受け継がれてきた伝統的な農家の料理が消えていった。
同じ薀蓄でも「京極さん」のレンガ本なら、妖怪や変化はどちらかというと私も好き、という興味が一致していて長さも気にならないが、フランスの立場や、大戦後の変化。ナチやイギリス軍の動きなど、難しいところもあった。
フランスらしく料理についても細かい。特にワイン、ソース、食材云々も、ブルーノの関心事だしおいしそうで真にうらやましいが、それで、事件はどうなるの、はやくしないと眠くなるよと、思った。
でも、そうではなかった。
残り少なくなったあたりで俄然面白くなる。
眠らないで歴史も少しは頭に入れていてよかったと思うことになる。戦時中のあれこれ、悲惨な部分が事件とつながる。
となると夢中になるが、なかなか予想通りに犯人が浮かんでこない。
それには大きな訳があり、これが村長とブルーノの悩みどころで、どう解決するのか。
ブルーノは想像する気にもなれなかった。ひとたびすべてを知ったらフランスの大衆が北アフリカ人にどんな態度を取るか、そして国民戦線の票がどれほどふくれあがることか。腰掛けたまま前かがみになって両手で頭を抱え、唇を噛みながら、なんとか筋道を立てて考えようとした。計画を立てなければ。村長に話し、J=Jとイザベルに伝え明日の朝一番にボルドーに行く手はずを整えるのだ。クリスティーとも話して、この村をこんな爆弾に対して備えさせるにはどうすればいいのか助言をもらわなければ
読みきらないでは眠れない。そうして読み終わったら今日になっていた。
中に未成年の麻薬がらみの事件があるが、またこれが、ブルーノが子供の頃から手元で見てきた少年で、父親も心を許した関係。頭が痛い、どう処理するか。
村人の関係も絡まって解決は難航するが、読み終わってみれば、ちょっとした歴史と料理の知識が増えていた。
その上、登場する独身女性は非の打ち所の無い飛び切りの知的な美人が三人、何か起こりそうな予感がする。
その結果、同じ事件を捜査する、マニッシュな美女イザベラといい関係になる。観光名所の洞窟を案内し、ろうそくの灯の下で手料理を振舞う、何だかロマンス小説のような設定だったが、それもいいでしょう。
そういうソフトな話題もはさんで、始まりは「ヨーロッパ戦勝記念日」の祭典、終わりも同じ「ヨーロッパ戦勝記念日」なのだが、ブルーノの気持は事件の後先ではまるで違っている。巧い構成だった。
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戦争の記憶の継承や、過去の戦争が現在にどんな影響を与えているか、EU加入で農村はどう変わったか、あるいは変化をそれとなくごまかしているかなどの現実を、小説の中で自然に表現している。だからものすごく面白い。
つい最近のフランス大統領選挙では、とうとう極右政党が大統領候補を有力候補として出してしまったけれど、2008年のこの時点からすでに、フランスの良き市民たちがどのように極右の排外主義者たちと闘ってきたか、あるいはどうにかやり過ごしてきたかを生き生きと描いている。現在に繋がる現実が描かれているので、だいぶ前の小説だし現実離れしてるほど有能な登場人物ばかりなんだけど、無理なく読めた。
恋愛要素はすごく要らなかったけど、きっと次回作では今作のヒロインと別れてるだろうから別にいい。ダビンチコードでも新しい巻の前に前作のヒロインとは別れてた。