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内容はない。
おおむね2010年頃の日本萌えオタシーンを構成する数多の要素を、著者の卓越した萌えオタセンスで収集・整理し、連作として「組み上げた」という感じである。
「創作した」のではなく「組み上げた」という感じ。
しかしながら資料的価値は十二分にあるし、逆説的に言えば「内容はない」という内容がある。
作風としてはほぼ無個性であるが、たまに著者のフェティシズムが浸出して話が変な方向に暴走する。天然なのか狙ってやっているのかは分からないが、いずれにしても、これこそが著者の「卓越した萌えオタセンス」であると言える。
上辺の感想としては、
「内容はない」以外にも、
「しょーもない」というのも可能。
でも、内容がなくてしょーもない漫画の何がいけないかというと、別になにも悪くない。「内容があるように見せようとしているが失敗している漫画」というのはたくさんあるが、そういうのと比較したら、「内容がなくてしょーもない」漫画の方がはるかに有益である。
例の「まきた音」であるが、本作ではややなりをひそめている。しかしながら単行本サイズに圧縮されてもやはり「まきた音」の書き文字は判別可能であり、この点に著者の尋常ならざるこだわり、あるいはプライドを感じる。
家の中、常に手の届く範囲に置いておきたい一冊である。私はそうしている。