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紙の本
かけがえのない日常の一駒一駒
2006/02/12 21:16
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:碑文谷 次郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
10編の連作短編集であり、編を追うごとに、3人の子供(長女和子、長男明夫、次男良二)の成長ぶりがほほえましい。特に次男であり末っ子の良二は、せっかく念願の流れ星を見る機会に遭遇しながら、姉や兄のように願い事をすることをうっかり忘れてしまってからかわれたり、兄に巧妙に卵の黄身を盗られたり夜道で怖い目にあわされたり年だが、最終章(「絵合せ」)では、サンタルチアをイタリア語で歌える中学生に成長している。
その良二の傍には常に、体力ではどうしてもかなわない兄がおり、展覧会に連れて行ってくれて動物園で一緒に鳩にピーナッツを食べさせる姉がいる。
夕食後にそろってレコードをきくこの親子5人の家族であるが、やがて旅行会社に勤める長女の嫁ぐ日が迫ってくる。長女和子は、乾燥した卵の状態で眠っている「小エビ」を見ながら、ふと「みんな一緒に卵になって眠ればいい」といい、それをきいた作者も、「それなら、問題はない。五つの小さな入れ物に入って、同時に眠ることにすれば、心配はいらない」と思う。
そうなのだ。5人の家族を強固な殻の中で守り抜くことが、作者の意思であり、一見、平穏な日常のスケッチのような体裁のこの連作集を通奏する、親鳥の翼のような愛情なのである。
しかし一方で、「どんなに楽しく過ごしてもそれは一瞬のもの」と認識している作者は、長女はじめ3人の子供たちの巣立ちを用意せねばならないし、いずれ訪れる大きな別れー死ーも覚悟せねばならないであろう。そういう思いを抱きながら、今夜も絵合せゲームを5人で興じるのである。
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