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フランスの制度というより、庶民と彼らの政治意識の持ち方、エリート教育の徹底は、おおよそ大衆化してし合っている日本とは比較もできない。エリートは、私学で作られるものではなく、国が選別し教育いていくようだ。「権利を主張し、ヴァカンスを心待ちにして気ままに暮らす庶民と、その庶民を一つの国民にまとめあげるため、身を粉にして働くエリートたち。フランスではこうした構図がはっきりとみて取れる。政官財界や研究開発分野のトップを形成し、社会の牽引役を果たすエリートはきわめて少数であり、彼らの権限や特権は非常に大きい。
当然、少数のエリートを生み出す学較の難易度は限りなく高く、国家の指導者を目指してエリート階層入りを望む学生は猛烈な勉強をしなければならない。しかし、大半の庶民には無縁の世界だ。庶民は週末もなく働くエリートを見てあきれ顔で揶揄する一方、自分
たちの生活を支える機関車としてエリートが欠かせない存在であることも認識しているのである。
学校を卒業して、文科系なら政治、行政の中枢を占め、理科系なら核開発や宇宙開発、新たな交通システムの設計などにあたる真のエリートは毎年、全国でほんの二握りしか生まれない。極端なエリート社会のなかで、少数の仲間に入るためにはパリ大学などの一般
の大学ではなく、グランゼコールと呼ばれる学校に進むことが絶対条件だ。
そのなかで、サルトルやメルローボンティをはじめとする作家、思想家を輩出した高等師範学校、ジスカールデスクソ元大統領が卒業したエコール・ポリテクニック(理工科学校)の二校が特別な存在として飛び抜けている。
さらに、こうしたグランゼコール卒業生らが政治家や高級官僚を目指して入学する国立行政学院(ENA)は、終戦直後の一九四五年に創設された。超エリートの最終学校といえるもので、高級官僚のほか、シラク大統領、ジョスパン首相ら現在のフランス政界の大
物の多くがENAの卒業生だ。
名門グランゼコールの卒業生と一般の大学の卒業生とは社会的に歴然と区別されており、貴族制度がなくなった現代フランス社会で、人生を保証された新たな特権階級を形成しているとさえいわれる。」
また、フランスの汚職についてもして指摘されていて興味深い。
「 人権とならんで汚職体質の程度がその国の倫理観や民主主義の成熱度を計る尺度である
とするなら、フランスの汚職度ランキングはかなり上位にこざるをえないだろう。
フランスでは大審裁判所(地方裁判所)に所属する予審判事が日常的な事件の処理を行
うほかに、日本なら特捜検事が行う仕事、つまり政官界の汚職の摘発や大型の財政事件の
捜査を担当するが、そのなかにはエヴァ・ジョリ予審判事やユリク・アルファン予審判事
らのように政界汚職の摘発に辣腕をふるい、スター並の知名度を持つ人たちがいる。
ジョリ予審判事やアルファン予審判事がいま何を捜査し、だれを調べているか。大衆紙
や週刊誌はつねに話題として取り上げ、大きな見出しが踊る。アルフォン予備判事にいた
っては失脚をねらった陰謀まで仕組まれた���とがあるほどで、それだけ政界、財界絡みの
事件が多いのだ。
ミッテラン大統領時代に起きた社会党の不正資金事件、シラク大統領のおひざ元である
共和国連合(RPR) の資金疑惑など、陣営の左右と汚職は無関係だ。
最近では、台湾へのフリゲート艦売却に絡む社会党のロラン・デュマ元外相の収賄事件
や、アフリカへの武器不正輸出に絡む故ミッテラン大統領の長男の逮捕などが、フランス
社会を大きく揺り動かした。
デュマ氏の場合は達意立法審査を行う憲法評議会議長の職にありながら、予審判事の取
り調べを受けるという異常な事態となった。事件ではデュマ氏の愛人が重要な役割を果た
していることも暴露され、いちだんと大きなスキャンダルに発展した。
事件の発端は一九九一年に国営軍事企業トムソソCSFが台湾と結んだフリゲート艦売
却契約だった。フリゲート艦売却には中国が反発し、対中開係の悪化を懸念する仏外務省
も強い懸念を示していた。
そこに登場したのが、中国政府に太いパイプを持つ大手石油会社エルフ・アキテーヌ
(当時国営)で、エルフはトムソソの依頼を受け、秘密裏に中国に対する懐柔工作を進め
る一方、当時外相を務めていたデュマ氏にも裏から手を伸ばした。・・・・。」
腐敗については、フランスであってフランスでないようなコルシカの武装した人民、ワールドカップでの優勝とジダンの秘話など、面白い話題が詰まっている。筆力のあるジャーナリストのフランス見聞録だといえるか?!エピソード交じりのフランス人と政治がらみの世界を知るには適切な一冊だろう。
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使える新書21世紀の論点編
図書館で借りた。
08年12月27日17時31分09秒
しばらく無理して読んだが決して面白くなかった。途中で辞めた。悪いことは言えないのだが、これはつまり、私のフランスの知識不足がもたらしたものです。
フランスは好きです。しかしあまりにも私の知識がありませんゆえに、読んでもおもしろくない。世界史の知識がまるでないと苦しむなぁと思った次第であります。
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[ 内容 ]
近代民主主義の発祥の地フランス。
しかしその内実をのぞいてみると、かなりトンデモないことが…。
権利はたっぷりあっても義務はまるでなし?
頭を使うことはぜんぶエリートまかせ?
左翼も保守も汚職にまみれ、環境意識は希薄、人権概念もなんだかちょっと変わってる…。
それでもフランスという舞台はまわってゆく。
特派員がみつめた奇妙で愛すべき国の素顔。
[ 目次 ]
ストと国民の義務
エリートとグランゼコール
「第三の道」あるいは反米意識
フランス人の環境意識
二回投票制はお好き?
第五共和制の矛盾「コアビタシオン」
こうして内閣は崩壊した
戦争責任と共和国
人権の母国フランスの現実
予審判事の孤独な戦い
地方自治、現実と矛盾
マルチカラーのフランス
家族あるいは非婚カップル、そして女性
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]