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中東イスラムの世界をわかりやすく解説した本です。
中東問題を考える時はずせない水、イスラム過激派、民主化、民族・宗教問題など
8つのキーワードを中心に章立てて解説していっています。
扱う内容はとても興味深く、面白いのですが、中東問題は難しいというイメージが刻み込まれている僕の脳にはなかなか内容が入ってきませんでした。
結果的に読み終わった後に何がわかったんだろうという感情が出てきて消化不良で
終わりました。
もう少し分かりやすいのを目を通してからこの本を読むといいのかもしれません。
ですが、著者はできるだけ平易に書こうと意識しているのが伝わり読みやすくは
書いてくれています。
比較的いい本なのではないでしょうか。
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水と環境、民主化、宗教、人権などをテーマに中東について解説。
中東について基本的な知識があることを前提に、最近のトピックについて説明。
中東においてなぜ民主化が難しいのか→中東は宗教、民族が多様な人々が暮らしている。アメリカなど西欧の「民主化」ではその多様性に対応できない
クルド人の対立について
など現在の中東が抱える問題についての説明はよかった。
ただ基本知識がないので細かい民族や地域の名前を並べるのではなく、
問題の大まかな構造がわかるような説明だとなおよかった。
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アラブ世界では19世紀、20世紀に伝統的なコミュニティの秩序が喪失されることになった。それはアラブ、ムスリム世界への西欧諸国の進出によってもたらされた。
アラブ諸国では、産業の発展は新たな富裕階級と、貧困層の二極化を招いた。
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中東問題は根が深い。真の平和が訪れる兆しは見えない。そこには幾つもの要因があり、本書はそうした中東情勢を8つのキーワードを元に解説して行く。主に中東をイラク周辺とパレスチナを中心とする地域に分け、そこに存在する様々な課題を挙げている。イラク中心の世界ではやはり9.11以降のアメリカの介入の影響を今なお引きずり続けている。アメリカが介入すればするほど、中東の不安定さは増して行くし、ブッシュはアメリカが世界を平和にしたと自負し、対テロ戦争の勝利を声高に叫んだが、世界中のテロ発生件数はその後も増加した。
アメリカは伝統的に他国へ干渉しない孤立主義を採ってきた国ではあるが、第二次対戦後のソ連との冷戦下において、ソ連のアフガニスタン侵攻に対峙する。対ソ連要員として自らが育てた戦闘員がやがては自国を苦しめる事になる。やがて冷戦は終結しアメリカ一強の世界になると、次第に世界の警察として各国の紛争に介入して行く傾向が強くなる。
中東はその様なアメリカの介入がもたらした混乱も一つの要因として、平和で安定的な発展ができてこなかった。現在もなお混乱する社会の背景には貧困・失業・劣悪な社会基盤や環境・政治の腐敗・民主主義の欠如などありとあらゆる問題が存在する。アメリカのイスラム世界への介入は混乱を招くばかりである。
また、それをさらに悪化させているのは人口増加も挙げられる。イスラム社会は伝統的に避妊を善とせず、人工中絶も認ない。さらには子沢山を美徳とするから、イスラムの出生率の高さが職につけない若者を大量に作っている。そうした若者は職に就けずにイスラム過激派の急進的イデオロギーに吸収されて行く。
アメリカがいくら社会構造を変えようと軍事的な活動を続けても、対抗するテロ組織は絶やす事なく人員供給で補完されている状況だ。結果的に血で血を洗う闘争が繰り広げられる。主導者を捕まえたり殺害しても、パキスタンやアフガニスタンから次々と訓練後に送り出されてくるテロ要員。根源を断とうにも、どこからでもやってきて、どこにその中心があるかわからない。こうした状況は闘いによっての平和が遥かに遠い事を表している。よってイスラム社会自体の構造変化、内部の問題解決が必要という議論に戻る。アメリカの様に外圧で実行するのは過去を見ても上手くいかないのは明白だ。となれば、アメリカがこうした地域から治安維持のために駐留させている軍を撤退するところから始めなければならない。リスクも相当で中々踏み切れないのも解るが。またアメリカは中東の民主化については強く望んでいない。テロ対策重視で動いており、民主的にイスラム過激派が勢力を伸ばして、アメリカ寄りの現政権を打倒する様な事態を避けたい。
パレスチナについては中東和平はイスラエルとパレスチナが平和に歩み寄れるかにかかっているといえる。現時点では双方が爆撃や自爆テロで応報する中ではとてもじゃないが達成は難しいだろう。アメリカ経済を牛耳るユダヤの力も絶大だ。
この地域は世界地図を広げても解る様に、民族、宗教、歴史、資源、複雑に重曹的に重なり合う課題が山積みの場所だ。一つ一つ丁寧に問題の糸を解いていかない限り真の安定は訪れない。
ロシアのチェチェン、イスラエルのパレスチナ、インドのカシミール、そしてアメリカのイラクと「対テロ」を錦の御旗に掲げて、自国の思惑に沿った形で力を使えば、その糸を更に複雑に強く絡み合わせることになる。
そして混乱が混乱を呼び、サウジアラビアからビン・ラディンが、エジプトからジハード団のザワヒリが来てアルカーイダを強くする様に、混迷を極めた地は更なる血を呼ぶ温床となっていく。