紙の本
観察力と想像力のない人とは話したくない
2016/07/04 16:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:木曽の仙人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チェコ、困難な歴史を歩んだ国ですね。その中で国際的に高い評価と人気を持つチャペックのエッセイ集です。ジャーナリストでもあった彼が生涯にわたって新聞に書いたものを、訳者の 飯島 周 氏が一冊に選抜・編集されました。内容は多岐にわたりますが、要点は鋭い人間観察とヒューマニズムとユーモア。ジャーナリストらしい目配りで、起きたばかりの関東大震災に寄せる痛切な感想まで含まれています。
書かれた時代は一九二〇年代から三十年代ですが少しも古びた感じがありません。それは彼の観察力と想像力が透徹しているからでしょう。昨今の米国大統領選や英国の国民投票、ついでに日本の状況など(政治的になるのを避けて具体的に申しません)、世を憂うことの多い諸兄姉には是非ご一読をお勧めします。
本を読む滋味に溢れております。お子様には推奨いたしません。大人の感覚でじっくり味わって下さい。『園芸家十二ヶ月』『ダアシェンカ』もついでに推薦いたします。ロボットという語を作り出した作家というだけではもったいない。
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作家であり、ジャーナリストでもあるチャペック。その真骨頂−エッセイ。
是非是非、ご一読を。
※ネタバレの恐れのため、以下自粛※
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「灰色のスーツを白のスーツと黒のスーツの妥協と呼ぶ人たちがいるのだ。一部の人たちにとって音符dはcとeの間の妥協なのである。政治的な中央とは、その人たちにとって狂った革命主義と中世的な反動の妥協なのである。朝はたんに朝ではなくて、真夜中と真昼の間の妥協である。渇きの事実は水と火の間の妥協である。」
「『われらがため』氏は三回も燃えさかる坑内に足を踏み入れた。そして『われらがため』はこの世を去った。『われらがため』は生き埋めにされた人たちに救助をもたらした。(プロノビス)」
チャペックは「園芸家12か月」もオススメ。面白いよ。
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日常のささいなできごとを見守るチャペックは、からかいまじりのユーモアを発揮する。鼻かぜや、女について、男について、家にまつわるあれこれ、買い物について・・・。上機嫌の底にあるのは、それほど偉くも立派でもない、人間に対する愛情だろう。その愛情が政治に向かうと、人間らしい生き方を求めての、熱い呼びかけとなる。チャペックは偏ったものの見方を嫌う。人間をひとつの鋳型に押し込めるのではなく、多様性を認めたうえで、人としての共通項に目を向ける。チャペックは、肯定の人だ。否定を重ねて唯一のものを求めたりはしない。雑然として、非効率かもしれないが、豊かだ。
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猫丸さんのお薦め本です。ありがとうございます。
カレル・チャペックは1890年生まれのチェコの作家。
プラハのカレル大学で学んだ後、ベルリンとパリに留学。
帰国後の1916年(26歳)から創作開始。
1921年に新聞社入社。
生涯ジャーナリストとして活動。
この作品はエッセイ集で
Ⅰ男と女と日常生活
Ⅱ文化と社会
Ⅲ政治的動物
ⅠとⅡは大変面白く読みましたが、Ⅲは私には少々難しかったです。
Ⅰの男と女と日常生活は軽妙洒脱な男女の違いの妙などユーモアの溢れるエッセイが多く、例えば「毛皮なしのシラミ」では
「それは豊かな人たちが貧しくなるようにということではなく、豊かな人たちが他人の貧しさのために苦しむように、ということだ。わたしは、人々がまったくお金を持つ必要がない、と猛烈に宣言したいのではなく、ほかの人たちを雨ざらしのトロッコの上に置き去りにしなくてもよいように十分なお金を持つべきだ、と言いたいのだ」と述べられています。
又、Ⅱの文化と社会では「適時適書」が愉快でした。読書好きの方なら実に楽しい文章です。長いので引用はしませんが。
日本の関東大震災(1923年)についても触れられています。「物乞いの前での気恥ずかしさ」から引用を少し。
「非常に素朴な、一般には貧しい人たちだけが、それでも当然なことといして考慮せずにほどこしをすることができる。しかしそうでないわれわれはもはやほどこしによって救われることはない。むしろ困惑させられる。ほどこしをするとしたら、急いでおずおずと、ほとんど臆病者のようにするのである」
「不幸の中で」で手榴弾について述べている文章も印象的でした。
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同じ誕生日の作家ということでたまたま手に取った本。100年近く昔のエッセイなのに、すごく面白い!チャペックの時代から現代まで世の中は全く変わっていないかのようだ。文体の読み易さやユーモアのセンスが個人的にどストライクで、他の作品も読んでみたくなった。
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「「人間と犬」「洋服屋で」「鼻かぜ」――身近な出来事をもとに、暖かく、優しく、時に厳しいまなざしでもって、愛すべき人たちを描いた珠玉のエッセイ集。オリジナル版。解説=飯島周」