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著者は若そうで(自分と同世代?)すが、
すごく読みやすかったです。
今までこの手の話は、
長沼さんのような生命系の研究者か
井田さんや田村さん、須藤さんのような系外惑星の研究者が
書いているのがほとんどだったのですが、
惑星科学者、しかも若手の新進気鋭の研究者が書かれたものは
初めてではないでしょうか。
(古典的なものでいえばカール・セーガン博士の著作などがありますが)
(そもそも、日本の宇宙開発において惑星探査があまり行われていないことにも原因があるかもしれませんね)
タイタンをはじめ、エウロパ、エンセラドゥスなどに関して、
新しい視点を持つことができました。
一昔前だと、
この手の話はエウロパと(違う意味で)火星くらいでしたが、
太陽系の多様性がどんどん明らかになってきています。
それが伝わってくる本でした。
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ガリレオの天体観察に始まる太陽系探索の成果が、人類史を切り拓いているという、新たな視座を得ることができた。
タイタンで予想されるメタン光合成の話も、非常に興味深い。
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最先端の成果を伝えようとする熱意がほとばしる。
太陽系内の生命探査に詳しい。タイタンだけではなく、エウロパ、エンセラダスにもかなりの紙幅を割いている。
大気循環、負のフィードバック、酸化、還元などの観点から生命が誕生する条件を考察。地球的でない生物による化学合成の在り方も示す。
・二酸化炭素による温室効果というものを、人類が初めて明確に意識したのは、灼熱の大地と熱い二酸化炭素大気を持つ金星の姿が明らかになってから。
・およそ40億年前に地球上に原始生命が誕生し、我々の祖先である真核生物に進化したのが20億年前、大型生物の誕生が6~7億年前、生物が陸上に進出したのがおよそ4億年前。ここまで進化したのに、あと10億年で地球は水惑星でなくなってしまう。
・エウロパでは、岩石コアの還元剤がもう底をついてしまっているかもしれない。地球上では、マントルのカンラン石が水に比べて圧倒的に多いので、還元剤としての鉄が底をつくという心配はない。
・太陽加熱型ハブタブルゾーン(地球、タイタン)と潮汐加熱型ハビタブルゾーン(エウロパ、エンセラダス)。後者のほうがメジャー。
・メタンは非極性分子。よってメタンには極性のある分子はあまり溶けることができない。逆にメタンの大気中での反応で生成するエタンやプロパン、アセチレン、ベンゼンなどの非極性の炭化水素とは相性が良く、大量に溶かすことができる。
・後期隕石重爆撃期が太陽系全体の生命進化の大きなターニングポイント。
・タイタンには、もやとメタン、地表気温の間で負のフィードバックの関係が存在する。
・水のハビタブルゾーンの外に二酸化炭素のハビタブルゾーンの外。次にメタンが凝縮するハビタブルゾーン。さらに外には窒素や一酸化炭素のハビタブルゾーンがあるはず。
・大気の酸化還元状態に対して、極めて特異な酸化剤や還元剤が存在していることこそが、生命の存在を教えてくれるサインになる。組み合わせが大事。
・2013年8月の『ネイチャー』に気候変動と紛争の間に明確な関係性があるという論文が。エルニーニョ現象が発生すると、作物の収量減などによって内戦が引き起こされるリスクが上がっている。地球の気温が2度上昇するだけで、地球上の紛争が50%増加する。
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2013年刊。著者は東京大学大学院新領域創成科学研究科講師。センセーショナルな表題への回答に加え、惑星・衛星探査の歴史、金星・火星・木星圏のガリレオ衛星、土星圏のエンケラドゥス、タイタンの探査・観測状況を踏まえ、生物発生の条件と太陽圏における可能性、さらには太陽系外惑星の議論まで言及。簡明だが非常に深い内容である。星全体での液体の存在(地球は水、タイタンはメタン、エウロパの氷地殻下の水など)、熱源発生(太陽光、潮汐作用による火山活動)、液体の全星規模の対流、分厚い大気層等、生命発生要件の解説は興味を引く。
新書でここまで解説する本書はホントに有益。また、エウロパの海が硫酸化していること、その原因が強力な木星の潮汐作用に伴うマントル活動の亢進によって、還元物質たる鉄が消尽したことなど、実に興味深い。物質によってハビタブルゾーンに違いがあること、特に、木星圏等太陽光を利用できない領域でも、ハビタブルゾーンは存在する点は生命発生の一般性・普遍性を語るものかもしれない。