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松井るり子さんの本、私にとっては2冊め。
ひとを亡くしたと思ったら、今度は生きているひとに置き去られ、苦しい時に、この本に助けられた。
『七歳までは夢の中』
も、お母さんになること、することを、幸せに感じさせてくれる本で、ひいては私自身まで、やさしい手でくるみこまれてやわらかな日差しにくすくす笑っているような本だったが。
これもまた。
松井さんがほんとに瑞々しく、ふくよかで、おかあさんであり、少女であり、るり子さんご自身であることが、どのページを読んでも零れてくる本だった。
絵本を通じて、毎日の衣食住や、私達のまわりを見回した時の、風合いのいい部分や、理屈よりも感性とか本能で、やさしい、快いと思うものを話してくださる感じは、やっぱり、ほのかな希望とか、安心をわけてくださる。
死に別れもつらいが、生きている人に置き去られて見捨てられることも、とてもつらい。たった三ヶ月前、春のとば口には、こんなことを思いもしないで、幸せだったのに。
大きな屋根で雨から守ってくれるような手と、そのひとが作ってくれる毎日の食事とに、文字通り生き養われ、裏切らないでいてくれた友人の情けに助けられて、どうにか私は、窓から身を空へと投げたい気持ちと、日々戦っている。
そうして。
文学の勉強を秋から再開したいと思っているけれどどうしても、大人のややこしげな本を、身体がこころが拒んでしまっているのに気がつく。
今読みたいのはそっちじゃない、と児童書の書評集に、こうしてまた手と目が吸い寄せられる。そこには光があって風があって、私をほどくやさしいことばがあって、愛したい誰かがいる。私が今欲しいのは、手に入らない愛情と、おひさまと、雨と、ひかりとかぜ。
そうして、温かいお茶と、ちいさな一人でいられる部屋。やさしいことばと、誰かに抱きしめられて愛されてねむること。
それに気が付かされた。
そこに、必要なものはいろいろあるけれど。だいじょうぶよ。と自分に手を添えてくれるような、生き生きした明るさのある本だった。巻末のブックリストが便利なので、メモを取らずにじっくり読んで。
まるで温かいポタージュみたいな本だったから。
ちゃんと普通に暮らしていたら、いつか、いい時も巡ってくる。いいことだって待っている。
今ちょっと、雨風なだけさ。
大丈夫、とは言えなくても、そんなふうに
思える読書時間だった。