紙の本
ロシアの文豪ドストエフスキーによる往復書簡形式の中編小説です!
2020/05/09 11:01
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの往復書簡形式の中編小説で、1846年に出版されたものです。同書は、初老の小役人マカール・ジェーヴシキンと少女ワーレンカとの間でおよそ半年に渡って交わされる往復書簡が中心的な内容です。その往復書簡では、お互いに身の回りで起きた出来事を報告したり、その時の心境が綴られています。その話の内容とは、ワーレンカの父親が事業に失敗して不機嫌となり、その後病気になってそのまま死んでしまったこと、それだけでなく債権者が押し掛けて家や土地も家具も全て持って行ってしまったことや、彼女がポクロフスキーという元大学生と交流し、亡くなるまで世話をしたといったことなどが書かれてあります。更にはゴルシーコフ家の赤ん坊が死亡して可哀想だとか、マルコフに関して二人が意見を対立させたり、マカールの友人のゴルシーコフが業務上横領の嫌疑が掛けられて懲戒免職となるが、裁判で無罪放免となるといった話も書かれています。何度も繰り返される手紙のやり取りの中でジェーヴシキンはワーレンカに愛情表現を伝え続けるのですが、結局ワルワーラはジェーヴシキンと別れてブイコフのもとに行ってしまいます。
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文豪すぎるにも程がある
2012/03/21 14:43
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koo± - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドストエフスキーの処女作です。24歳の時の作品。色々な意味でイタい、そして切ない。この年齢にして中年男の悲哀をここまで描ききるとは。文豪すぎるにも程があります。
先日からトライの海外古典。一口に海外古典といえど、クイーンやクリスティなどのミステリ作品ばかりではありません。久々に純文なんぞも読みたくなりました。光文社古典新訳文庫ならとっつきやすいかなと図書館借り。
貧困にあえぐ19世紀旧ロシア。下位層の人々の日常を舞台に、下級官吏マカールと薄幸の少女ワーレンカの往復書簡で綴られる純愛ストーリー。ロシア・リアリズムって奴ですね。
新訳しかも書簡体のせいか読みやすいです。人物の相関関係が複雑なミステリの方が圧倒的に難解。舞台背景が自分の置かれている現実とかけ離れている分、歯の浮くような台詞も純化され、心に浸透します。
一歩間違えれば中年親父の妄想炸裂。冒頭でも書きましたが、色々な意味でイタく切ない。温度差を感じる二人の関係。特に結末なんて哀れで見てられません。
なんだかんだと美辞麗句を並べ立てるワーレンカですが、彼女の手記で最も印象的だったのは、昔世話をしていたポクロフスキー親子のことを綴った手帳の件。実は全編通じてそこに一番引き込まれました。ポクロフスキー青年への無償の愛をそこはかとなく感じます。皮肉なことに。
●シンクロする心の貧しさ
余談ですが、実はkoo-(マイナス)モードな最近の僕。理由は自己嫌悪。色々読んだり書いたりしているわりには、まるで身に付いていません。若い頃のように思考がドライブしない。元々不得手な記憶力は更に衰退。こうやってブログに向き合うが故に、頭の悪さに打ちのめされる日々。きっと若いころに勉強をしなかったせいでしょう。
もっと気の利いたことを書きたい筈なのに・・・。気ばかりが逸ります。
「ワーレンカ、私は老いたる無学な男です。若いころに学問を身につけ損ね、たとえ今さらあらためて勉強を始めたとしても、何ひとつ頭に入りっこありません。正直なところ、私は文章の達人ではありませんし、もう少し気の利いたことを書こうなんて気を起こしたら、結局、およそ下らないことを書き連ねてしまうことぐらい、他人からあれこれいわれなくても、嘲笑されなくても、よくわかっているんです」(P31)
厄年にこんなの読んじゃあ駄目ですね。本厄に翻訳、なんて笑えません。ともあれ徹底的に自分を卑下する中年男の悲哀がグサグサと突き刺さります。イタすぎるのは僕の方ですね。シンクロする心の貧しさ。
※「です・ます調」レビュー100本ノック。27本目。
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以前、新潮文庫版で読んで以来の再読。ドストエフスキー文学のモチーフがそこかしこに散りばめられているデビュー作。悪くはないが、その後の作品と比べるとやはり薄味。
やはり、これからドストエフスキー読むなら「罪と罰」以降の大作から読んだ方が良いと思う。
厚かろうが薄かろうが、読み始めたら一気に読んでしまうことにおいては、どの作品も同じだし。
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ドストエフスキーの処女作。手紙という当時の文壇のはやりの手法を使っている。すぐそばに住みながら手紙という手段によってやり取りをするマカールとワルワーラ。現在のメールでの交際に通じるところがあるかもしれません。貧しい二人が、何とか日々のやりくりしながら生きている姿が、伝わってきます。生まれ育った環境から抜け出せずにもがき苦しみながらも、その大きな流れに流されてしまう。ドストエフスキーの代表作の罪と罰に通じる部分が随所に見られました。よく作家の処女作にはその後の活動における萌芽がみられると言いますが、まさにその通りの印象でした。
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ドストさんのデビュー作。
神からも人からも裏切り続けられ、それでも大事なのは人との絆なのだと、後の傑作群に繋がるさまざまなモチーフの萌芽が確かにここにある。
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貧しいって切ないなぁって感じました。
でもどんな状態でも人間ってものは、尊厳があるし恥ずかしさとか、そういう感情ももちあわせているはず。
そしてそういう人間らしい気持をとどめていられるのはやはり人とのつながりとか、そういう支えになる誰かなのかなって。
でなければ人間、貧しさに負けちゃうのかもしれない。
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ワルワーラの健気さと聡明さが光っていた。
ともすれば悲しい物語なのですが、人生の一時期だけでも、心から尊敬しあう相手がいた彼らは幸福な存在だったのかもしれない、と思った。
そんなことは当人には慰めにもなりませんけどね。
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主人公の男が若い女の子に貢ぐ話(ざっくり)。
男が体よく利用されているように感じるのは、私が歪んでるのか?
この作品ではドストエフスキーがまだ若い感じ。
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貧しい役人のマカールと聡明な少女ワーレンカとの往復書簡の形で描かれる、ドストエフスキーの処女作である。
マカールが、ワーレンカとの手紙のやり取りや文学に触れることを通じて、文章力が上がっていく描写が好きだった。
時に笑える描写も交えられており、スラスラと読める良書である。
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私も手紙を書くのが好きだし、手紙の中で見せたい私と現実とのギャップに苦しむ人間なので、マカールさんの気持ちが分かるような気がして苦しかった。
言葉ばかりが上滑りして、滑稽な感じがする手紙を書いてしまう。
自意識に苦しめられる人間にはグサグサ来ると思うなぁ。
ロシア文学のあとには芥川を読みたくなるw
年齢的にはワーレンカに感情移入したいのになぁ…w
そういうわけで、書簡体小説は結構好きです。
同時性はないけれど、一気にドラマが動くことがあるので、そこに一気に興味がいく。
原文は全くわからないけれど、ワーレンカとマカールさんの文体にそれぞれの性格や教養がよく出ていて、面白い訳だった。
同じ訳者さんの地下室の手記は挫折中ですけども。
訳者あとがきに書いてあった、マカールさんの自演説、面白いけど、そうするとだいぶ趣が変わっちゃうよなぁ…。
マカールさんは教養人になってしまうし、そもそもそれはドストエフスキー自身の位置なわけで。
あとポクロフスキー萌え…
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2012.02. せっかく長い春休みだし、この機会に「カラマーゾフ兄弟」を読みたいと思っているので、その足がかりに借りてみました。が…、夜寝る前に読む本ではないと思う。とにかく貧しい。貧乏が貧乏を呼ぶという感じ。10代の聡明そうなワーニャと、中年おじさんの往復書簡なんだけど、これが長いし、いろんな意味で暑苦しい。読んでてほとほと疲れました。最後の方で、もしかしてこの文通は全て妄想だったのでは…と、思ってしまいました。
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おいココで終わるのか!という。きになるきになる!マカール・ジェーヴシキンとワルワーラ・ドブロショロワ。ポクロスキーいいな。珍しい、普通に良い人だ。でもまだテーマがそれほどの広がりを持ってないところが初期ってことか。
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暗い気持ちになりたくない方にはおすすめできません。
社会の最下層で貧しくひもじい思いをしながらもお互いを手紙で励まし合う物語…とにかく救いがありません。
カラマーゾフや罪と罰等の長編も良いですが、こちらの処女作もドストエフスキー好きとしては外せません。
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この世界で貧しいことの一番の辛さは、自分の価値までもを経済の中に入れて勘定せざるを得ないことだ。フリルが何だ!と言いながらフリルを買えない自分を呪う。彼女のことをよく知っていながら、フリルのために嫁にいってしまうのだと感じる。そして実際彼女はフリルのために、ではないにせよほとんどお金のために嫁いでしまう。でも、それでどうして彼女を責められよう?お金がなければ生きていけないのだ。
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年配者と若い女性との書簡形式を取った作品。
当時のロシアの状況を分からずには、なぜここに出てくる人々が経済的に苦しい思いを強いられるのかが分からない。解説には、当時の身分制度による状況があると書いてあるが、今の恵まれた日本で生活している自分には、理解できても体感出来ないまま文字面を読み進めるという感じだった。もっと現状を変えられないか?
その為には何をすべきなのか?と考えても良いのではないかとも思うが、本当に絶望を感じている普通の人々は、現状を自分たちが変えてゆくという思考にはなりにくいのかもしれない。