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2部構成になっていて、前半が患者および家族からよく発せられる質問に
どう答えるかという筆者の治療観・病気観を説明した内容で
後半が境界例にどう対応するかという内容になっている。
筆者が信仰しているのか、仏教の教えがところどころ出てくるのが特徴的だった。
筆者は精神疾患の症状は人間が本来持つ弱点と地続きであるのだから
完全な治癒はなく、したがって治療にあるのは終結ではなく良い別れだけだと考える。
また、治療は病気になった原因を考えられる程度に、心の働きを回復させることから始まり
ここで考えられる原因とは、真実に基づきながら治療に役立つものであるべきとする。
こうした考えを基にしながら境界例にどう対応すべきかということを説いている。
境界例の治療に当たる際には、中断を恐れるなということを筆者は書いている。
中断し、患者が次の治療者にかかることもチームで医療しているようなものだと考え
治療者が「私しかこの患者は治せない」という万能感を持つことがないようにと警告している。
また、患者だけでなくその家族にどう対応するのかということも書かれていたのが良かった。
境界例によく見られる原始的防衛機制を、適応規制と比較しながら説明している箇所もあったが
そこをきちんと理解できなかったのが残念だった。