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骨太なルポ。文章も活きていて面白かった。
長い間受け継がれて来た伝統も、その後の状況の中で変わっていかざるを得ないのが複雑な思いに。
写真が少ないのが物足りないが、それは写真集で。
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インドネシアの島の中で、銛一本で鯨に立ち向かい、生きてきた人たちに密着した七年間の記録。その営み。
2010年、著者は再び村へ向かう。短いエピローグだけど、とても印象的。彼らと僕を隔てるものは何か。
写真集、海人も観る。
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インドネシア東ヌサテンガラ州レンバタ島。日本から運が良くて最短3日の旅程を要するこの島で、プレダンという小さな帆船と銛一本でマッコウクジラ漁を獲る人々がいる。7年に渡る取材によってその勇猛果敢な姿を捉えたドキュメンタリー。日本の捕鯨にもかつてあった相互互助の社会システムなど、興味深いものがある。
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「すべての生き物は生きるために他者の命を奪う。それは殺戮ではなく、命の循環であり、尊い命の営みなのだ。」 ラマレラ村の人々は、鯨を必要以上に獲ったりはしない。だから、命の営みと言えるだろう。 だが、これまでに人は必要以上に乱獲し、多くの種を絶滅に追いやって来た。今も同じ過ちを繰り返しているのかも知れない。 それにしても、本書に掲載されている写真のなんと対称的なことか。鯨漁に挑むラマファがプレダンから飛び上がり今にも鯨に銛を突き刺そうとする迫力ある姿。もう一方には死に瀕した虚ろで悲しそうな鯨の目。
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インドネシアの捕鯨の民・ラマレラの生活や漁を、実際に船で追って写真に収めた筆者が書いたノンフィクション。再訪の際の変わりつつあるラマレラを見ると、勝手なのだろうが、複雑な気持ちになった。
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日本人カメラマンが、鯨漁で生計をたてる、インドネシアの一漁村に密着取材したもの。何より漁の方法が凄い。手漕ぎ船で鯨に近づき、飛びついて銛で突きまくるだけ。そして15メートルのマッコウクジラを仕留める男達!
マタギにしろ漁師にしろ、狩りには生活のため以上の何か、「エンターテイメント」としての存在理由がある事を再認識できる。
「過剰な捕獲」「過剰な保護」は決してベターな選択ではない!
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インドネシアの辺境で銛打ちで捕鯨する人々を追ったノンフィクション。漁をする様は激しく、人々の生活は優しい。自然と調和して生きてる中にも文明は入り込んでくる。命や生きる事とか何が幸せなのか考えてしまう。とても興味深く面白かった。
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「"ラマファは自分のためだけじゃない。貧しい人、夫を亡くした人のために鯨と闘うんだ"と。これは先祖代々続いている教えなんだ」p.128。Twitterで「すごい本に出会ってしまった。雄弁な写真を撮る写真家ほど、その写真に匹敵する文章を書くの法則」とつぶやいたら、著者からフォローされてびっくり。うれしがって、リフォローしました。笑。
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(2011.06.14読了)(2011.06.08借入)
帆を張って進むこともできるけど、10人ほどの手こぎで進む船でクジラを取る人たちの話です。船の舳先に銛を持って立ち、船でクジラの横から近づき、躍りあがって銛を突き刺し、30メートルほどの銛綱をときはなったり手繰り寄せたりしながら、弱らせてゆくとともに、別の船からも銛を突き刺し、どんどん追い込んでゆくという実に原始的なクジラ捕りです。クジラの元気がいいと、船ごと海に引きずり込まれたり、仲間のクジラが船に体当たりを喰らわせて来たりすることもあるということです。
ときには、銛綱に絡まれてけがをしたり、命を落としたり、クジラの尻尾にはねつけられて死ぬこともあるとか。
クジラを取るチャンスは、年に何回もあるわけではなく、著者は、四年通ってやっと四年目にクジラ漁を撮影することができたとのことでした。
クジラがいないときは、マンタやシャチを取ることもあるそうです。
鯨人が住んでいるところは、インドネシアのレンバタ島ラマレラです。バリ島から飛行機や船を乗り継いで数日かかるところです。
取材は、1991年から1997年ごろに行われています。2010年に訪れてみたら、船の大部分には、船外機がつけられ、様変わりしつつあるとのことです。
この本を読みながら、野生の狩猟本能が刺激されるためか、ドキドキわくわくしながら興奮してしまったようです。
ここにも、捕鯨反対の人たちが出没しているようです。妨害行為まではしていないようですが。
●ラマレラ(24頁)
ラマレラとはどういう意味ですか
「ラマは土地、レラは太陽だよ」
●ラマファ(43頁)
銛打ちのことを、ラマレラではラマファと呼ぶ。「船の前部の人」という意味だ。舳先に立ち、獲物の発見を始め、船の指揮、銛の打ち込みなどの大きな責任を負う。
●肉食(81頁)
ペスタ(お祭り)には私も呼ばれ、肉ご飯をいただいた。肉類はラマレラではめったに口にできないご馳走だ。豚肉にしてはどうも毛が多く、皮ばかりだったのが気になった。案の定、その夜、これまでけたたましく吠えていた犬たちの声がずいぶん減ったことに気づいた。
地元民は慎ましく、白米にトウモロコシを混ぜたご飯を食べている。ただ、トウモロコシご飯が食べられるだけでもいい方で、不漁が続くと、夕食はトウモロコシに塩だけという極限の献立になる。
●鯨は水牛だった(85頁)
ラマレラでは鯨はもともと水牛だったが、群れで浜へ水浴びに行った際に、何頭かは山に帰らずそのまま泳いで行ってしまった。そうして水牛は鯨になったと語り継がれている。
●ラマファの心構え(128頁)
ラマファは自分のためだけじゃない。貧しい人、夫を亡くした人のために鯨と闘うんだ
●鯨の心を(218頁)
海の上の物語を撮るだけでは、フェアではないのだ。海の中の鯨のドラマをあわせて提示できてこそ、この取材は完全なものになる。前回の撮影では、その鯨の心が、写真に写っていなかったのだ。
●鯨は友人(229頁)
ゴリス・プアン「自分たちは食うために必死に鯨と闘う。鯨も生きるために必死に抵抗する。どちらが勝つかは神様が決めることだ」
●命の循環(230頁)
すべての生き物は���きるために他者の命を奪う。それは殺戮ではなく、命の循環であり、尊い命の営みなのだ。鯨の眼から怒りの炎が消えた時、そこに宿ったのは、この世に生を享けた命あるすべての逃れられない運命への悟りであり、諦念であったかのように私には見えた。
☆インドネシアに関する本(既読)
「ワヤン」松本亮著、平凡社新書、1977.08.08
「孤独な森の住人」ジョン・マキノン著・小原秀雄訳、早川書房、1977.12.15
「夕日を見つめるチンパンジー」鈴木晃著、丸善ライブラリー、1992.01.20
「インドネシア」小山忠著、岩波新書、1993.08.20
「ボルネオ島の猿人の話」草山万兎著、小学館、1996.03.20
(2011年6月15日・記)
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ドキュメンタリーは『ヤノマミ』以来、読みました。
これも素晴らしかった。
とても私にはいけない所へ、膨大な時間を費やしてのこと。
自然と、そこに生きている鯨、人。
厳しく残酷で、改めて命を奪って生きていくことについて
考えさせられました。
それと同時に文明が進んで、「便利になること」
「安易に手に入れること」によって、忘れがちになってしまうことについても。
人は時々、立ち止まって、人類もまた地球上に生かされている
生物の一種でしかないことを、肝に銘じるべきな気がしました。
近く、写真集もぜひ、みたいと思っています。
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鯨のキーワードでAmazonで検索。
表紙に魅かれて。
インドネシアで伝統捕鯨を続ける辺境の村での
七年に及ぶドキュメンタリー。
非常に興味深く、最後まで一気に読めた。
生きるために生き物を殺し、共同体にその生を与える。
宗教観や考え方も朴訥として潔く強い民。
現代捕鯨やWWFの取り組みに関する記述、
千葉勝山や太地町での伝統捕鯨・事故に関しても
時折触れており興味深い。
写真は写真集で見ろということの様で掲載写真は少なめ。
それでも素晴らしい写真。
写真集が観たい。
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[ 内容 ]
インドネシア東ヌサテンガラ州に属するレンバタ島のラマレラ村は、銛一本で鯨を仕留める伝統捕鯨で知られている。
写真家である著者は約一九年にわたりこの村の様子を取材。
世界最大の生物に挑む誇り高き鯨人達の姿と、村の営みに深く根ざす捕鯨文化の詳細を記録し、ついには捕鯨の水中撮影を敢行する。
だが、この村にもまた、グローバリゼーションの波は押し寄せていた。
…。
岐路に立つラマレラ村とその捕鯨文化を雄渾に活写する、比類なきネイチャー・ドキュメンタリー。
[ 目次 ]
プロローグ
第1章 鯨の島へ
第2章 鯨漁に挑戦
第3章 再挑戦
第4章 鯨漁撮影
第5章 陸の物語
第6章 鯨の眼
エピローグ
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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確か『週刊ブックレビュー』で紹介された本の再読。
こういうのを読むと捕鯨にまつわる所謂先進国の主張はちょっと浅いかなと思ってしまう。自然の中での厳然たる生命連関に声を挟める資格のある者などいないかと。
ただこの島にも時代の波は押し寄せており、結局は西洋の論理に飲み込まれるのかも。でもキリスト教を巡るしたたかさで上手くやるのかもしれないな、そこに生き、生かされる島人は。
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クレイジージャーニーに出演されていた
石川梵さんの作品ということで購入。
番組では漁の迫力やラマレラ村の人たちが
どのような暮らしをしているのかを
見ることができたが、こちらではより詳細に
村の文化や一人一人がどのような思いを
持っているのかを知ることができる。
鯨を殺すことが悪いことだと
思われてしまいそうになってきている世の中で
鯨を食べることで平和な生き方を実現している
人たちがいることを知ることは
誰にとっても必要だと思う。
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映画くじらびと 鑑賞後に再読し監督のヤバ味を再認識した事をご報告♪
銛一本で巨鯨を狩るラマレラの人々を追う素敵なレポートが狂気の様相を帯びるのは物語の終盤。
"海の上の物語は撮れた"海の中のドラマを提示してこそ完全なものとなる"
と写真家は鯨と人の死闘の海にダイブし、血の海なかで海の王の今まさに瞑目せんとする眼をレンズに捕捉しフィルムに焼きつけんと巨体に突き立つ銛に手を掛け、海中に引きずり込まれながらシャッターを切りまくる。
憑かれ物狂い王の死に迫り撮る様は本作の白眉。
活字を追って総毛立つ経験は忘れられない。