紙の本
中東情勢
2019/07/26 21:48
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投稿者:きりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ある程度、中東情勢に詳しくないと、新聞に載っている世界情勢を眺めるのと同じレベルで終わっちゃいそうです。現地ではこうだった、というレポートが具体的。
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東日本大震災で遠い過去の出来事のように思ってしまうが、先頃もリビアでカダフィが倒れ、シリアでも混乱が起きているこの情況はいったいなんだったんだろうということを知りたくて読んだ。若干型に嵌めたがりな見方が気になる部分もあるが、革命の渦中のカイロに飛び、実際に取材した人の生の声の強さがある。今後のエジプトの情勢に注目するとともに、パレスチナやイラク、さらにはサウジがどうなって行くのかを見守って行きたい。さらに、イスラム教やパレスチナ問題についての最新の情報についても読みたいと思う。さらには、日本も頑張ろう、今目の前でおきている不正義を看過してはならないのだ。
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(2011.10.03読了)(2011.09.22借入)
【アラブの春・その⑤】
表紙の標題に添えて、「エジプト現地レポート」と書いてあります。
1月25日に始まって、2月11日にムバーラク大統領が退陣したエジプト革命についての現地レポートとどのような革命だったのかを考察が述べてあります。
エジプトに留学した経験があるという著者は、現地の人と通訳を介さず、話ができます。従って、レポートも現地の雰囲気をよくとらえて伝えているのではないかと思います。革命の舞台となった、タハリール広場には、政治団体の旗などは前面に出ることはなく、無党派の若者、女性、子供までが集まっていた、とか。
世の中にまかり通る不正義への若者たちの抵抗、と著者はとらえています。現在アメリカのをウォール街で、アメリカの若者たちが行っている抗議デモも、アメリカ政府の金融資本家たちへの手加減した制裁に対して行われているとか。エジプトの若者たちと、共通するものがあるようです。
この本の章立ては以下の通りです。
第一章、静かな興奮
第二章、予測を超えた展開
第三章、旧世代の憂鬱
第四章、タハリール共和国
第五章、下支えした既成勢力
第六章、五十四年体制の崩壊
第七章、新しい革命
第八章、青ざめる米国
第九章、不可視の船出
●ムバーラクの退陣(22頁)
1981年に53歳の働き盛りで大統領に就任した男も、カイロを家族と脱出したときには82歳になっていた。
●アラブ随一の大国・エジプト(31頁)
1948年のイスラエル建国をめぐる第一次中東戦争から、1973年の第四次中東戦争までイスラエルとアラブの四回にわたる戦争では、エジプトは常にアラブ側の主軸だった。そのイスラエルとの和平に最初に踏み切ったのも又、エジプトだった。
●シリアのレバノン撤退(49頁)
イラク戦争が泥沼化する最中、2005年2月には、レバノンの前首相ラフィーク・ハリーリーが、ベイルート市内で爆殺された。事実上の統治者だった隣国シリアの下手人説が流れ、米軍のシリア侵攻がうわさされるなか、シリア軍と情報機関はこの年の4月、29年ぶりにレバノンから撤退した。
(この辺の話は、「レバノン混迷のモザイク国家」安武塔馬著、に詳しい)
●庶民の生活苦(57頁)
エジプトの失業率は9%(2009年)とされるが、15歳から24歳に限れば、数字は33%に跳ね上がる。1日2ドル以下で暮らす人も、人口の2割弱は存在している。
●フェイスブックの広がり(112頁)
今回のデモの呼びかけは「そもそもは良家の子女たち」から始まった。彼らがパソコンを駆使するのは不思議ではない。その呼びかけがパソコンを持っていないであろう貧しい階層の青年たちに間でどうやって広がったのか。現地を歩いて見て、その答えがわかった。地元で「サイバー」と呼ばれているインターネットカフェの存在だった。
●エジプトの識字率(231頁)
フェイスブックが持ち上げられた。エジプトでは15歳から24歳までの84.9%は字が読める。しかし、国民全体の非識字率は今も3割を優に超える。
☆関連図書(既読)
「原理主義の潮流」横田貴之著、山川出版社、2009.09.30
「現地発���ジプト革命」川上泰徳著、岩波ブックレット、2011.05.10
「革命と独裁のアラブ」佐々木良昭著、ダイヤモンド社、2011.07.14
「レバノン混迷のモザイク国家」安武塔馬著、長崎出版、2011.07.20
(2011年10月5日・記)
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エジプト革命は呼び掛けはネット上で次々と転載されたが、実際に中心となっていたのは、左翼政党やイスラム主義団体のメンバーでなく、ロックやラップに馴染む上流から中流のノンポリ青年だった。
エジプト人は、口から生まれうと言われるほど、よくしゃべる。
エジプトの中年層以上は、自分たちの世代は国内でこれだけの騒乱があれば、自然にイスラエルがこの機に乗じて何かしでかさないか、と気になる。でも今の青年にはそういう感覚はない。
エジプトのネット普及は自然に生じたのではなく、2000年以降「スマート政府」を掲げるムバラク政権は経済政策に沿って学校でのIT教育に力を入れていた。皮肉にも、上からのIT化が民衆革命のきっかけを作った。
SNSの存在は、もはや政治的にも看過できない。
ムバラク政権の崩壊を中東世界で最も案じたのはイスラエルとサウジアラビアだった。
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@ocncn1800 さん
2012年最初に読んだ本と言えばこれですね。エジプトに10年以上在住した方による説得力ある解説でした。田原牧'中東民衆革命の真実 ──エジプト現地レポート (集英社新書)
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やはり中東・小アジアから端を発する世代間紛争と革命のスローガンは反グローバル化のようだ。
そしてつい最近、エジプト革命から端を発したこの波が東南アジアまで押し寄せて来た。韓国でも若年労働者によるデモは既に起きている。
つまり次は日本の番、日和見主義の時期はとうに過ぎたと言う事だ。
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エジプト革命を、新世代が行なったという解釈である。実際に旧世代と新世代を対比してそれを支持するインタビューを掲載している。
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【起爆剤となったフェイスブック】p112
「サイバー」と呼ばれるネットカフェ。
1時間=約28円
エジプト市街地図 p65
【あとがき】
2010年の暮れからのアラブの叛乱は当事者たちにとっては無意識にせよ、国家の論理を超えている。起動力は「人は何のために生命を与えられたのか」という単純かつ普遍的な問いである。p250
日本における原発反対のデモのうねりにすら、その共振の欠片を見出だせるかもしれない。
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[ 内容 ]
二〇一一年、二月十一日、エジプトを三十年間統治してきた大統領、ムバーラクが退陣を表明した。
それは、五千年にも及ぶアラブの大国の歴史の中で、民衆が初めて自らの手で体制を打倒した瞬間であった。
この革命の余波はシリア、リビア、イエメン、サウジアラビアなど中東に広がり、各地で叛乱の火の手があがっている。
エジプトで、ムバーラク政権を追い詰めたものはいったい何だったのか。
エジプトを軸とする中東の動きを長年観察し、現地取材を続けてきたジャーナリストが、今後の中東情勢を考える。
[ 目次 ]
第1章 静かな興奮
第2章 予測を超えた展開
第3章 旧世代の憂鬱
第4章 タハリール共和国
第5章 下支えした既成勢力
第6章 五十四年体制の崩壊
第7章 新しい革命
第8章 青ざめる米国
第9章 不可視の船出
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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2011年刊行。著者は東京新聞特報部デスク。
チュニジアのジャスミン革命に引き続き、2011年、いわゆるフクシマの一月前に起きたエジプト・ムバラク政権崩壊。
こういう歴史的に特異な現場においては、確かに、そのレポート、あるいは、その時点における現地の市井の人々の感性を掬いあげるという意味では悪くはない。
しかし、分析という意味では突っ込み不足と言わざるを得ない(ただし、こちらのアナーキズム理解と、アラブ民族主義の理解不足の可能性もあり)。
例えば、
①アラブ民族主義。
②イスラム。宗派対立。
③反イスラエル、反シオニズム。
④米国型グローバニズム、
⑤ジャスミン革命の影響。
こういう中東世界に一般的に妥当しそうな要素の他、
⑥④の結果、生まれたムバラク次男への世襲路線、
⑦④が生み出したエジプト社会の格差問題と中産階級の失業率の拡大。
⑧前世紀的な政権のテレビ規制を軽々と乗り越える近隣国の衛星放送というエジプトの特殊事情。
これらが上手く整理されていない印象だ。
加えて、政権・軍・米国等々の思惑が上手く根拠づけられていない感じ。
もっとも、
⑴新自由主義がエジプトその他中東に齎した害悪。 ⑵ムバラクjr.の経歴と英米人脈、軍との関係。 ⑶エジプト人の世代間ギャップ。
⑷アラブ連帯という大きな物語が曲がり角に来ている現実
など、意識すべき諸要素に事欠かない点は○。