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紙の本

超えても超えても現れる壁

2015/09/10 14:59

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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

卯王朝第十八皇女である月華は、賤民・言愚の涼孤と出会い、その剣術の美しさに魅せられ、自らも剣を極めて涼孤に認めさせようとする。しかし涼孤の操る剣術が、六十七年前に五軍を壊滅させた龍の術であることを見抜いた月華の守役である群狗は、殿下を彼から離そうとする。群狗自らが味わった感情を、彼女も味わうことになると思ったからだ。だが月華は群狗の気持ちも知らず、元都で女郎の珠会と仲良くなりながら、辻剣術で工夫を積んでいく。
 一方、これまで虐げられて生きてきた涼孤は、自分が働く講武所の師範代・蓮空が、武人としての立身出世の登竜門である大比部に参加することを知り、自分のことのように誇らしさを感じていた。だがその感情は、現実の前に塗りつぶされることになる。

 卑屈になるのが当たり前の存在である涼孤だが、その身に宿す武威は人の枠を超えたものだ。ゆえに彼は、諦念を知れども恐怖という感情を知らない。そのことは普通に接していれば他人に気づかれることはないが、彼の領域に挑もうとする武人には、両者を隔絶する断崖として、長大な障壁として、その人物に突きつけられるのだろう。
 それを知った月華がどんな道を進むのか。それは次巻で描かれるようだ。

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2012/01/08 00:00

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