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紙の本

三島由紀夫の演劇観がうかがわれる貴重な回想録

2007/11/28 12:13

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 三島由紀夫が自決して37年になる。しかし生身の三島を知る人たちの回想録はいまなお尽きることなく出版され続けている。女優・村松英子によるこの本もその一冊だ。
 三島由紀夫が小説だけでなく劇作においてもすぐれた作品を残したことはよく知られている。小説よりも演劇作品に三島の本領を見る人も少なくない。その三島が、俳優として育てようとしたのがこの村松英子なのである。内容的に面白くないわけがない。
 彼女が三島と出会ったのは、まだ文学座の研究生で慶応の大学院生時代であった。演劇好きの三島であったが、俳優を一から育てたことがなく、その俳優になってみないかと言われた著者は驚きながらも、やがて三島に目をかけられた女優として三島作品の主役を張るようになる。
 もっともそうなるまでにはそれなりに複雑な事情や人間関係のごたごたがあり、また劇団同士の確執なども絡んでいて、その意味で本書は日本劇団史としても読めるであろう。三島とは微妙な関係にあった福田恆存に触れた箇所や、映画俳優・鶴田浩二と三島の交友なども興味深い。
 しかし本書の一番の価値は、言うまでもなく三島の演劇に対する姿勢を描いた部分である。演技の勘どころや、すぐれた俳優になるためにはどのような訓練が必要か、などについて著者は三島から様々な指導を受けている。その一方で、「芝居を書きたいけれど小説を優先させなくてはならない」という三島の言葉は、日本における演劇の位置を考えるに際して重要な視点を提供してくれる。なぜ小説を優先させなくてはならないかといえば、「家族を養うのは小説だから。戯曲はお金にならない」からである。明治以降、日本では多様な演劇の試みがなされてきたが、三島のこの言葉は短いながらも演劇人の困難な立場をくっきり浮かび上がらせている。
 芸術にまつわるお堅い話ばかりではない。家族の交友についても少なからぬ記述があって、三島夫人瑶子の賢夫人ぶりや、戦後の東京山の手に居を構える中産階級の暮らしぶりや姻戚関係などがうかがえるのも貴重だ。ただ、その点でいえば、著者の兄である村松剛についてほとんど書かれていないのが物足りない。村松剛は三島と付き合いがあり、その死後に『三島由紀夫の世界』を著しているのだから、もう少し触れて欲しかった気がするが、もしかすると兄については別に本を書く予定もあるのかも知れない。期待したいところだ。
 なお、著者が若い頃に三島からじかに指導を受けて上演した戯曲『薔薇と海賊』が、最近、そのままの演出で紀伊國屋ホールにて再演された。私は昔の上演は見ていないが、今回の再演には接することができた。来年で70歳になる著者は、さすがにお顔には老いを隠せないけれども、姿勢や動作にはいささかも年齢を感じさせず、気迫のこもった舞台は観客を惹きつけて離さなかった。本書の出版とともに、充実した公演に対してもおめでとうございますと申し上げたい。

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