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紙の本
受験用の文学知識では、心にしみないね
2008/01/22 20:33
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ベニスの商人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
“座右の銘”や決意表明としてとして使われる四字熟語がある。だが、それらはともすれば使い方が上滑りして「含蓄」が感じられず、心にしみないと著者はいう。「それに対して、小説の中の四字熟語は、ときに「含蓄」に富んでいて魅力的だ、とぼくは感じる。小説には、ストーリーがあり個々の場面があり、その中で作者が描写したいこと、表現したいことがある。ある四字熟語が用いられるのは、それらを踏まえた上での選択の結果だ」。推敲に推敲を重ねて使われた四字熟語、そうそうたる文章の名手たちがどのような気持ちで選んだか。
いまの学校では志賀直哉を「小説の神様」といって、教えているのだろうか。少なくとも私にとって、志賀を簡潔で読みやすい文章を書く作家である印象が残っている。それだから、難しい四字熟語など縁がないようなものかと思えば、きわめてまれだがあるらしい。唯一の長編小説『暗夜行路』では、「密雲不雨」と「雨奇晴好」が見受けられるそうだ(『小僧の神様』は読んだことがあるけれど、長編の文学作品はあまり得意ではないので未読)。「密雲不雨」-易経にある言葉だという。なぜ、こんな「用例の少ない」ような難解な四字熟語を志賀直哉は使ったのだろう。本書の著者は、話の流れの中で、それが“必然”だったと分析している。志賀直哉が簡潔な文章を著しているのも、決して読者のためとか、発表媒体の都合に合わせてとか、気を使ったことなどなく、自分の書きたいように書いた結果が、「小説の神様」と評されるようになったと、弟子の阿川弘之が述べている。
「悪事千里」-「悪事千里を行く」の省略形である。この言葉がキーワードになっているのが樋口一葉の『大つごもり』である。本来の意味は「悪いことはすぐに知れ渡ってしまう」である。だが命題として考えると「真」であれば「悪事でなければ知れ渡らない」が「対偶」だから、本来、それも「真」になるはずだ。しかし、どうも違うようだ。「対偶」が絶対的な「真」ではないのだから、最初の前提となる命題も当てにはならないことになる。主人公のお峯が“悪事”と感じている自分の行為そのものは、必ずしも「悪事」とはいえないが、「千里を行く(知れ渡ってしまう)」のは時間の問題だ。だが、最後の“オチ”でお峯の「悪事」は露見しないこととなる。
上記2人を含めて、15人の作家の四字熟語の使い方を、吟味している。
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