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電子書籍
ぼやーっとした印象
2019/03/06 02:32
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投稿者:あられ - この投稿者のレビュー一覧を見る
原発が社会的に最大の関心事だった2014年に出た新書で、原発についての言及が要所要所を引き締めています。2019年の今から見ると、若干、遠い目になります。
このころ、題名の末尾に「!」をつけるのが流行っていたのかもしれませんが、本書は「!」をつけるような断言調ではないです。たくさんの実例が集められ検討されているし、語句単位・文単位で非常に興味深いと思うところは多いのですが(例えば「科学研究の根本にある身もふたもない政治性」という語句や、「陰謀論は無知な大衆が信じたものではなく、権力の側が利用してきた」という指摘)、全体として物事についての理解が深まるわけではなく、逆に、非常にぼやーっとした印象の本です――第四章は、他の章とトーンが違って力強いのですが。
特に、第二章「陰謀論とは何なのか」でなされている "陰謀論を嘲笑する人々もまた、陰謀論的なのだ" という主旨(これは私の解釈での言葉ですが)の主張はかなり無理があるし、仮にそうだとして「だから?」と思わざるをえません。「911陰謀論」が「テロ後のアメリカでは全体主義化に対する鎮静効果すらあったのではないだろうか」という主張に至っては、何を言っているのかわからないレベルです(せめてもう少し丁寧な記述はできなかったのかと思いますが、PATRIOT法などが制定された時期、陰謀論によろうが何によろうが、「鎮静効果」の事実はないですよね)。
また、「陰謀論」とひとくくりにしてあれもこれも一緒くたに扱っているのは著者なのですが、同時に「(陰謀論だという)ラベル貼り」にはかなり感情的な抵抗が示されていて、どういう立ち位置なのか、何をしたいのかがよくわかりません。大量の情報が未消化のままで立論されているという印象です。特に「陰謀論はバカにされ、嘲笑されている」という前提が、陰謀論をめぐる状況の解説を感情論的にしてしまっていて、建設的議論になっているようには思われません。
個別の事例はよく調べられているし、アメリカという国にとっての「陰謀論」のかかわりなど、検証・報告の部分には見るべき点が多くあると思います。それだけに、この本は「陰謀論カタログ」のようにまとめ、今の西洋の「陰謀論」で重要な要素である宗教性(ラプチャー、フラットアースなど)も扱うようにした方が、見通しがよくなったのではないかと思います。
ちなみに「アポロ陰謀論」は「科学に無知な大衆の愚かな妄想として嘲笑」されているわけではなく、海外で製作されたジョーク番組を真に受けたり、その裏を過剰に読んだりした結果の無理やりな解釈が、「嘲笑される」以前に呆れられており、ジョーク番組についての指摘すら跳ね返して「アポロは月に行っていない」と言い張るごく一部の人々は「ああいう人たち」と、いわば別枠扱いされているのではないでしょうか。(なお、私が見落としているのかもしれませんが、本書では「アポロ陰謀論」を広めたのがジョーク番組であるということはスルーされているようです。もしそうなら、「科学 vs 陰謀論」というフレームで議論しようとしているのはわかりますが、いただけないですね。)
第4章に出てくるジグムント・バウマンの「グローバリゼーションによって国家が解体された」という主張は、2019年の現在、ますます重要さを増していると思います。「グローバルな出来事のあおりを、個人がクッションもなく、じかにくらう時代になった」。その中で「陰謀論」がどういう役割を果たしているかについては、更なる考察・分析が求められるところです。
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