紙の本
フランシスの主人公が自殺願望なんて
2002/07/04 23:28
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投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
競馬シリーズの1967年の第6作。
主人公は長らく自殺願望を抱いている人間。強い意志と不屈の精神を常とするフランシスの主人公が自殺願望? 何だかそぐわない気がして、読む前から不安を感じた。
果たして不安は的中した。自殺を望む人間の心情なんか全く描けていない。強い意志と不屈の精神を持つ典型的なフランシスの主人公が、単に設定上の都合で“自殺願望”のレッテルを貼っているだけという感じで、チグハグな事この上ない。主人公が冷静沈着な、突き放した物の見方をする人間である事が、チグハグさを余計際立たせている。
そんなわけで、主人公が自殺を思いとどまるラストも、取って付けたような感じしか受けず、そんな事で思いとどまるくらいなら、初めから自殺なんか考えるなよ、と思ってしまった。
悲運に打ちのめされた人間の哀しさなら、「混戦」の方がはるかに良く描けている。それでも「混戦」の主人公は淡々と生きており、自殺願望など抱いていない。フランシスの主人公としては、その方がずっと自然だと思う。
フランシスの作品は当たり外れが少なく、しかも初期の作品は傑作ぞろいのはずなのに、本書は私にとっては大いにハズレだった。ミステリーとしての本筋は決して悪くないのに、残念である。
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うつ状態の主人公が次第に立ち直っていく。
渋い話なので、普通の時に読むと、え~っと思う。
落ち込んでいるときに読むと、一緒にだんだん引っ張り上げて貰えます。
可愛い女の子との出会いもあります。
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かなりファンの間では評価は高いのだけど、個人的にはもうひとつ気に入らなかった作品である。
強い自殺願望(鬱?)を持つ秘密調査員が、上司の個人的な依頼を受けて、休暇を使って名馬盗難事件を捜査する話である。もちろん、事件は解決するし、その過程で主人公は生きる意欲を取り戻す。暗い話だなあという印象を受けるかもしれないが、確かに暗い感じがする。でも、最後はハッピーエンドなんだなと安心されると、安心するなよ、と言いたい。
わりあいいろんな意味でセレブを主人公にすることが多い作者の作品の中で、この「自殺願望」は異色である。自身も成功者である作者がどういう気分でこういう設定をし、書き進んだのかはよくわからないけど、(こういう言い方はどうかとも思うが)実に迫力があり説得力がある感じがする。
そういうドーンと暗い状態に主人公を置くからこそ、そこから(ある意味)はい上がることがドラマになるのだし、実際、さりげないラスト1センテンスに込められたものが大きくて、僕はこっそり涙ぐんだりしたのである。
ミステリとしては、意外なぐらいすっきりとしたハードボイルド風。ストーリーのすっきりさはむしろマーロウに近いかもしれない。登場人物に味わいがあって、つい読まされてしまう感じも近い。
評価が高い理由が素直に飲み込めた再読であった。
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ミステリーは、これがあるからやめられない!
「あの人何が気に入らないの」後ろ姿を見送りながらリニイが言った。
「忙しい一日をすませて、女房が待っている家へ帰るんだよ」
笑いかけて、ちらっと私を見上げた。
「あなたは、自分が口にする言葉の意味がわかっているんでしょうね?」
「たいがいの場合はね」
ディック・フランシス「血統」より
上質のミステリーの条件はいくつあるか、数えたことはないが
思わずにやっとしてしまうしゃれた会話がちりばめられていることは、
絶対に必要条件です。
こんなシーンに出逢うと一気にウイスキーのグラスが空になります。
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前回借りた本が気に入って、職場の方にもう一冊借りてしまいました。
イギリスの小説は自分にとって相性がいいのだと思います。
競馬界が注目する有名な種馬が行方不明になった。
諜報機関員として活動し、心の闇に苛まれる主人公は、上司の命令で行方不明の種馬の捜索に取り組むことになる。
調べて行くうち、行方不明の名馬は、人物に盗まれてしまったのではないかとの疑惑が生じ始めた。
果たして無事に馬を取り返すことができるのか。
前回よりも若干重めの話。
主人公ががっつり鬱の設定はなかなかにおもしろく感じました。
決してハッピーエンドではないけれど、静かにこころに響くラストの余韻が素晴らしい。