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空想東京百景 みんなのレビュー

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みんなのレビュー7件

みんなの評価3.6

評価内訳

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紙の本

お話はよくわかりません。でも、この絵は 好きです。特に、瞳の表現が秀逸。それに都市の風景。問題は誰がだれやらわからなくなること。ま、責任はこっちにあるんですが・・・

2008/09/27 21:19

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

「「講談社BOX」レーベル発足以来、最大級の“奇書”が、ここに出幻する。」というのがよく分かります。まず、黒い表紙に赤い文字というのも結構迫力ありますが、やっぱりその分厚さが凄い。なんていうか京極夏彦の新作、って言われても外観的には納得します。

それと黒地の頁が多い。ま、そこはコミック頁なんですが、むろん生地のコミック頁もあります。で、やっぱり私も人の子、眼が絵を追ってしまうんです。いいんですね、この絵。何ていうかコンテ風で線が生。自然なんです。そして美しい。人物もですが描かれる都市の様子がなんともいい。

廃墟から復興を遂げつつある昭和三十八年の東京、っていう感じが実に良くでています。巻頭の折込も好きですが、「環状線は緑に葬られ」のカラー頁もいいです。環状線内の光景なんて、うまいなあ、って思います。それは「悪魔と天使の季節」の銀座あたりを彷彿とさせる風景についても言えます。

基本的には、ゆずはらとしゆき、の小説にtoi8のイラストが添えられる話と、toi8のコミックス、そして二人の文と絵が融合した「七つの顔と喰えない魂」みたいな三つの系統の作品からできている本ですが、toi8の絵がなければ、ここまで面白いというか奥深いものになったかは疑問で、それほどにこの本における絵の役割は大きいのです。イラストーリーという造語は、なかなかなものだなあ、と感心します。

どうしても絵の話になって恐縮ですが、人間について言えば目がいいです。特に女性の目。スケッチ風に複数の線で描かれているそれがなんともウェットな感じで、いい。コミック部には頁がふっていないので、何頁ということは出来ませんが、「環状線は雪に微睡み」のほぼ真ん中、香名子姉さんは本当に美しい。それと353、4頁の見開きのカラーのヌードがいいです。

それと私は「この世の花」での博士、小鳩、0課の女刑事の相撲見物、特に横綱・大鳳凰をめぐる談義が面白いです。思わずニコニコしてしまいます。それと「黒い猫」に登場する蓬莱樹一郎がいいです。このお話では、やはり女性陣が圧倒的によく描けていますが、蓬莱樹一郎は別格です。

ちなみにこのお話で描かれる東京は、並行世界の東京です。

昭和二十年の夏、この都市に投下された三発目の新型爆弾から放たれた巨大な呪詛は数百万の〈東京〉都民を一瞬にして塩の柱に変え、地上から消し去った

とあります。それにジャイアント馬場は、この世界ではプロレスラーにならず、馬場正平の名前でプロ野球の投手として成功し、大リーグにレンタル移籍されています。東京タワーの高さは660mで、大展望台の高さが330m、それだけじゃなくてロボットだっているんです。

とりとめもない紹介になりましたが、これは何度も読み直して味わいつくす、それでも先が見えない、そういう本だと思います。恥ずかしい話ですが、巻末の解説 登場人物を見ながら「え、こんな人いた?」「え、他の名前じゃない?」「だって、同じ人でしょ」なんて驚いてしまいました。

それと欠点ではありませんが、「七つの顔と喰えない魂」ですが、頁に幾つかの文章がとびとびに配されているんですが、これをどういう順番で読めばいいのか分からなくなることがあります。順番に意味があるのかどうかはともかく、気にはなります。でも、それを時間をかけて読み解きたい、そういう思いにさせるところが偉い。いつかアニメにしてください。


File:00 都市生活者の心得(「カラフルコミックPUREGIRL」2002年6月号)
File:01 Beltway~環状線は緑に葬られ(「ファウスト」vol.4)
File:02 Beltway~環状線は雪に微睡み(「ファウスト」vol.5)
File:03 夢の都、袋小路(「カラフルコミックPUREGIRL」2002年7月号)
File:04 この世の花(「カラフルコミックPUREGIRL」2002年8月号)
File:05 悪魔と天使の季節(「ファウスト」vol.6 SIDE-B)
File:06 風景と密室の秘事(前編)(書き下ろし)
File:07 新宿騎士隊(「カラフルコミックPUREGIRL」2002年6月号)
File:08 天使は寂しい道を行く(「カラフルコミックPUREGIRL」2002年6月号)
File:09 黒い猫(「コミックファウスト」vol.1)
File:10 地を這う雀、朱に染まり(書き下ろし)
File:11 風景と密室の秘事(後編)(書き下ろし)
File:12 七つの顔と喰えない魂(書き下ろし)
File:13 1963―秋(書き下ろし)
【附録/〈空想東京百景〉の歩き方】
 001【解説 登場人物】
 002【〈空想東京百景〉シリーズ年表】

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