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紙の本
天下分け目、古代の関が原での大乱を描く
2007/04/29 21:14
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
古代からの伝言シリーズであるが、本書は壬申の乱がテーマである。この出来事は様々な場面で取り上げられ、有名な乱の一つであろう。古代の関が原といってもよいかもしれない。
改革の大化の改新政権を担っていた天智天皇が没し、その息子である大友皇子と天智天皇の弟である大海人皇子との勢力が衝突して、天下を争う大乱となった。大海人皇子は兄の天智天皇が崩御すると、近江から吉野へ篭って隠遁生活を送る。
近江朝の大友皇子は、直ちに追討の兵を挙げて吉野へ向かう。大海人皇子は東方へ逃亡を図る。逃亡は同時に味方を募り、兵を集めることに他ならない。そして、いよいよ両軍が衝突する。これが壬申の乱のあらましである。中大兄皇子が天智天皇となり、壬申の乱を経て天武天皇となる。
八木は日本書紀、古事記の記述を元にしてこのシリーズを書いているが、情緒的なストーリーには踏み込まず、歴史の本流のみを取り上げて書いているように思われる。したがって、話の展開についてはやや物足りなさが残るのだが、却って真実味が出ているような気がする。
また黒岩重吾との比較になるのだが、大海人皇子の妃である鵜野皇女は、大海人皇子の東方遠征に付き従ってわけである。そして、天武天皇の世継ぎとして自分の子である草壁皇子を強引に推す。しかし、強力なライバルである大津皇子がいた。誰が見ても人物、能力ともに大津皇子が上位にあると見ていた。
黒岩重吾は自分の小説の中では、こんな鵜野皇女(持統天皇)を敵役にして、大津皇子を正統派として扱っていた。それは推古天皇にしても同じような扱いであった。八木はその点、淡々と描いている。黒岩の方が小説としての面白味はあるのだが、八木には八木の味がある。
余計な回り道をしない分、ストーリーの本筋が見えてきて、歴史の大きな流れを掴めるような気がするのである。とくにシリーズを時代順に読み進むとそれがはっきりと理解できる。
古代歴史小説も色付けや味付けによって、多様さが出てくるものである。この時代を描く作家がもっと増えることを期待したい。
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