紙の本
動物マニア
2014/04/27 11:49
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投稿者:Tucker - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物行動学者の著者が研究のために触れ合った動物達とのエピソードを紹介するもの。
ただ、多くの場合、「研究」というのは、名目で動物達に対する好奇心が、なによりまず第一にあるように感じる。
まあ、そうでなければ、動物行動学という学問を専門にしたりしないだろうが・・・。
「動物行動学」というと、「コンラート・ローレンツ博士」の名前が思い浮かぶ。
(・・・というか、とっさに名前が出てくる人は、この人しかいない。)
その著書の中に「人イヌに会う」という本がある。
本書を初めて見た時、タイトルは、この本のパロディかと思ったが、「はじめに」の所で、"意識したものである。"と書いてあった。
いち早く気付いた、と思っただけに、ぬか喜びだった。
取り上げられているエピソードは、学問的な内容は少なく、こぼれ話的な内容が多い。
個人的なお気に入りは
「自転車にからまっていたカラスの話」
「プレーリードッグに家の壁を破壊された話」
「飛べなくなったドバトの世話をした話」
の3編。
よくぞ、ここまでやれるな、と思わせるエピソードばかり。
そういえば、コンラート・ローレンツ博士の「ソロモンの指環」にも似たような話が多かった。
動物を相手にする学問だと、人の世界の感覚とはずれてきてしまうのだろうか。
ところで、本書を読んでいると、動物達は決して、本能だけで生きているわけではない、と思うことができる。
動物達が認識している世界は、人間とは、かなり異なるものだろうが・・・。
一度でいいから、少しでいいから、覗いてみたい。
紙の本
ローレンツのように動物と接する日本人研究者。
2016/12/16 17:08
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
動物行動学を築いたとされるローレンツの「ヒト、イヌに会う」に倣ったというタイトル。コンラッド・ローレンツといえば飼っていたワタリガラスに求愛されたり、生まれたヒナの母親に間違われたり。それまでの学問とは異なる形で動物を研究してきた人だ。本書にはローレンツのように動物と接してきた著者の”動物まみれ”の話題が集められている。
子どものころに拾ったり育てたりした動物たち。庭の小動物を継続して観察したり、想定外の「実験結果」に驚いたり。どの話も面白い。子どもの頃の話は、同世代ぐらいの読者には「自分もこんな風に外で駆け回っていた」という懐かしさもあるだろう。研究の話は「こういう研究もあるのか」と感心したりもする。
拾った生き物が元気になれば野生に戻す。死ぬこともある。喜びや悲しみや、さまざまな反応に対する驚きもある。身近な生き物に触れあうことで、人間の感性は育っていくものだ、と著者の文章は教えてくれる。
裏を返せば、そういった「身近な生き物(ヒトも含めて)」との触れ合いが遠くなってるのが現状だ、ということなのだろうか。本書で一番感じたのはそういうところだった。
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≪目次≫
はじめに
1 自転車にからまっていたカラスの話
2 庭で暮らすカナヘビを追いかけ回した話
3 街の迷い犬を田舎に送った話
4 プレーリードッグと一緒に住んでみた話
5 小さなヒミズに畏敬の念を持った話
6 土の中の魅惑的な生き物たちの話
7 「コウモリを連れたタクシー運転手」の話
8 ドバトは人間をどう認識しているか考えてみた話
9 アカネズミが食べるドングリ、貯めるドングリの 話
10 トンビのため”狩り"に明け暮れた話
11 口の中で子を育て雌から雄に性転換した魚の話
≪内容≫
動物行動学の専門家による、肩の凝らないエッセイ集。著者の動物、いや生き物好きがヒシヒシと(ホノボノじゃないよ)伝わる。そして本当に生き物を愛している(飼った生き物すべてに名前がつき、親しくしている)ことがわかる。こうした先生に教わりたかったな、と思う。
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動物行動学者小林朋道教授による、動物にまつわるエピソード集。
動物との交流や観察、実験などを通じて得られた知見や感想が、わかりやすい文章で紹介されており、読み物としても大変面白い。
私も動物を飼うことが好きだ。ことに子供が生まれてからは、買ってきたものやら捕まえたものやらを含めて、常に複数の動物を飼育している。ちなみに今は、娘が捕獲したクロベンケイガニと、ペットショップで購入したハムスターを飼っている。
こうして人間が動物を飼育する理由はいったいなんだろう。
どうして人間は異種の生物を身近に置きたがるのだろう。
異種の生物を保護し、生活を共にすることから動物の家畜化は始まった。
家畜たちが人間に与えた恩恵は計り知れない。また、家畜として保護されるようになった動物達が受けた恩恵も、また甚大だ。
小林教授は、動物の保護は狩猟採集と根源を一にするものだと説く。
そしてその根源にあるものこそ、「擬人化」であるというのだ。
「最近の認知考古学の研究は、擬人化はけっして、子どもや未開の人たちの、幼稚な、あるいは素朴な思考特性ではなく、人間の本来の生活形態である狩猟採集への進化的適応の結果であるという可能性を示している。
私は、『動物の習性や生活をよく知るようになること』と『その動物達を、その習性も取り込んで擬人化すること』とは相互に強め合う関係にあり、それらが高まることによって、動物の死滅に痛みを感じさせるのではないか、と考えている。」(P132)
ここで思い浮かぶのは、原初のホモ・サピエンスが行っていたと推測される「推論的狩猟」である。
これについては、クリストファー・マクドゥーガル著・近藤隆文訳『BORN TO RUN 走るために生まれた』に詳しい。
「推論的狩猟」とは、獲物となる動物を走って追跡し、体力の限界に追いこんで捕獲する狩猟のことである。道具も罠もいっさい使わず、おのれの肉体のみで狩りを行う。弓矢を発明するまでの200万年の間、人間は長距離走の能力を使って狩りをしていたのだ。
だが、ただ単に追いかけるだけでは獲物を捕ることはできない。せっかく眼をつけて追いかけても、獲物はするりと藪の中へ、群れの中へと紛れ、追跡を免れてしまう。そこでハンター達はその獲物と同一化し、彼がいつ、どこへ逃げるか、その行動の先を推測して追跡するのである。
「次の段階は足跡のないときに追跡することだ。これは高度な推理で、物の本では「推論的狩猟」と呼ばれている。これをやってのけるには、現在から未来へと自己を投影し、追跡対象の動物の心にはいりこむしかないことをルイスは発見した。別の生き物になったつもりで考えられるようになれば、何をするか予測し、相手が行動に出るまえに反応することができる。」(P335-336)
そして「それは数百万年にわたる命がけの決断をへて磨きあげられた戦略と技術の融合」」(P332)であり、この「動物追跡の技術こそ、科学の起源だったかもしれない」(P335)とブッシュマンとともに推測狩猟を体験した数学者��イス・リーベンバーグは言う。
狩猟の方法は、長距離走によるものから、弓矢や槍、罠などの道具を使うものへと変遷を遂げるが、それでも擬人化は狩猟の成功率を上げる重要な技術だったに違いない。
うまく擬人化できるかどうかが、狩猟の成否を握っていたのだ。
となると、世界の民族の中でもとりわけ擬人化を好むといわれる日本人は、狩猟民としても優秀だったのではあるまいか。
相手を知り、おのれを投影することで勝ちを掴む、そんな戦い方もあるのかもしれない。
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読んでいて面白いと思うのは、著者の文才に寄るところもあるが、今まで知らなかった生物たちの行動(地中の虫から空飛ぶ鳥まで)を身近に感じることができるせいだろう。新潮社のPR誌「波」に連載されていた当時から断続的には読んでいた。今は無き、晴屋書店の店頭で無料配布されていたものを手に入れていたため、気がついたらいつの間にか終了していた。まとめて読みたいと思っていたが、同時期に連載されていた「義理と人情 長谷川伸と日本人のこころ」(2011/10)はすぐ書籍化されたのに対して、書籍化されるまでにはずいぶん時間がかかった。
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道ばたの風に揺れている
ほわほわの頭部を持った雑草が
エノコログサという名だと
教えてもらったとき
しばらくの間、それをみる度に
エノコログサと唱えていた
今まで知らなかったものが
名前を覚えた瞬間に
今までとは違って
見えてくる
小林朋道センセイの「動物行動学」エッセイを
読む度に
自分の周りに生きている
「生き物」たちのことを
そうそう そうやって懸命に生きているよなぁ
そんな気持ちにさせられる
この感情は
エノコログサの時の感情とそっくりである
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同じ著者がおもしろそうな本を何冊か出していらっしゃるのは知っていたのですが、今回初めて本書を手に取りました。難しい話はないので、気軽に通勤途中に読ませてもらいました。本当に動物が好きなんだなあと感じる文章ばかりです。ほ乳類だけではなく、トンビにも、カナヘビにも、小さな熱帯魚にも、土の中のオケラにだって愛情がこもっています。著者が出会ってきたたくさんの動物の中でも、特に印象に残っている動物ばかりを扱った文章だから、当然のことなのかもしれません。最終章のシクリッドという熱帯魚の交尾の描写、その後の口の中での子育て、そして性転換、自然界にはまだまだ不思議なことがいっぱいあります。それにしても、オケラの写真は本当にかわいい。
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小林先生は、動物行動学を専門にしてらっしゃいます。
動物行動学とは、動物の形態や行動・心理などをそれが「環境に適応しながら進化してきた」という見方に基づいて解明してゆく学問です。
小林先生の凄さは、犬だけでなくカラス、カナヘビ、プレーリードック、ヒミズ、コウモリ、ドバト、アカネズミ、トンビ、魚などを実際に飼った経験があることです。
http://ameblo.jp/nancli/entry-11954605183.html
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面白いのでついつい読んでしまうのだが、何冊目だろう。いつも同じ調子なので、少しマンネリ化してきた。何冊か読んだ実感がなく、厚い一冊の本を少しずつ読んでいるような気分。
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学問的なことは抜きにしても、とても面白い内容でした。現代のファーブル昆虫記、あるいはシートン動物記ですネ。
著者がいろんな動物たちを観察する過程で、必要以上に感情移入されていく様子から、その愛情の深さを垣間見ることができました。世の中には、動物を実験材料として扱う学者も大勢いるのでしょうが、著者にとって動物は、単なる研究の対象ではなく、愛すべき存在、人生になくてはならない存在なのだということがわかります。
犬や猫に限らず、動物がスキという人はたくさんいます。動物って、見てるだけで癒されますもんネ。なぜ人は動物を愛するのか?という研究があってもいいのではないかと思ったりするきょうこの頃です。
べそかきアルルカンの詩的日常
http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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新書版なので真面目な話・・・と呼んでたら、
真面目な話でも、やっぱり小林節で楽しかった♪
子ども時代と高校教師時代を中心に、
思い出深い動物たちと研究が書かれている。
その根本には、動物行動学がしっかりと、根太く、
あることにも感心させられてしまう。
他書にもちらちら登場した、ドバトのホバの話が、
1章あって、良かったです。