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紙の本
彼らが「言えなかった」こと。
2003/12/28 01:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kbn1215 - この投稿者のレビュー一覧を見る
コメディタッチのオカルト。
‥無理がある。が、全編通して主人公の一人、「霊能力者の男子高校生」が好き勝手し放題なのだから、仕方がない。
よくある狙ったミスマッチなキャラクター設定は、この作品には用いられていない。悪い霊を払い、そうした霊的な存在を観ることが出来る「霊能力者」御堂は、いかにも胡散臭い容貌で、一見して物静かというか陰気な雰囲気に描かれる。
実際、彼の「霊能力」は、クラスメイトから時に怪しげに白い目で見られることはあっても、あまり疑われていない。体の不調や、不可解な現象を実際に解決しているからだ。しかも、それは異常な事件としてではなく、ごく日常的な行為として。「隣のクラスの男子が、電気屋の息子で機械に詳しいから」と、壊れたウォークマンを持ち込む気軽さで、不審な頭痛を「お祓い」してもらう生徒が毎日訪れるのだ。
多少、大きな事件も起こる。そうした際の御堂の能力絶対的で、苦労する素振りはまるでない。窮地に陥ることもない。実際、彼自身がそうした霊的なトラブルに巻き込まれることをストレスに感じてはいないのだ。表面的に表さないというだけではなく。
もう一人の主人公、新名は霊的な存在を真っ向から否定している。
彼は非常な不運の持ち主であり、無闇と怪我をしたり、起こりえない不幸に見舞われている。負けず嫌いで、しばしば悩んでも見せるが基本的に楽天家な面が強く、悲惨な筈の境遇にも強気だ。間違っても、霊の仕業だなどとは認めない。そして、あまりにも酷い霊の悪影響を辛うじて弱めているのが、彼の母親や愛犬であることも。
連載誌が少女漫画誌であり、恋愛要素も描かれるが、一筋縄ではいかない。未読の方に、結論を知らせてしまう羽目になるので省略するが、似たような環境に置かれても、御堂は絶対的な強者だ。誰に何を言われようが、決して動じない。というか、そもそも彼に弱みとなる存在が、ないのだ。
御堂いわく「お気に入り」である新名への、霊的な嫌がらせ‥それは、本来新名に「霊の存在を認めさせる」ために行われるのだが、そうしたドタバタの物語である。
この文庫2冊は、過去発行された単行本の待望の文庫化だが、各巻には描きおろしがある。
著者の多くの作品で、タイトルは全体の雰囲気を「も」表しているが、物語の最後の最後に至って、本来の意味に到達することがある。本作も同様で、連載時の最終話では、新名にとっての「おそろしくて言えない」ことが何か、わかるようになっている。それは、結局口にされることはない。
そして、この文庫にも収録されているが連載終了後に描かれた番外編では、常に絶対的な強者であった御堂の、意外な一面を覗くことができる。この話はファンの中でも人気の高いものであったが、文庫2巻の描きおろしでは、更にそれを補完した、御堂の「おそろしくて言えない」ことが描かれた。単行本をお持ちの方でも、ぜひ一読してほしい。
連載時からは、相当年数が経っている。当時、彼らと同年代だった読者は、わたしも含めて作中での重要なポイントでもあった「まぁ、そういったような話」の10年後を迎えている。
この、絶妙のタイミングでの文庫化は、偶然だったのかも知れないが、昔からのファンにとっては嬉しいことだった。
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