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紙の本
面白さだけでみれば『謎解き 伴大納言絵巻』のほうが上かもしれません。でも、一枚の屏風をこうやってプロは読み解くんだ、という点では、案外今回の本のほうが理解しやすい。ま、時代が江戸、っていう身近さもあるんですが・・・
2011/02/02 20:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
私がこの本を読もうと思ったのは、単純に「江戸図屏風」という言葉がもの珍しかったのと、「謎を解く」というのがいかにもミステリー好きな私の心を擽ったからです。無論、根底には私の美術好きというのがあって、それも最近は西洋の美術事情よりも東洋、というか日本美術に興味が移ってきているせいかもしれません。ちなみに、カバー写真は「江戸天下祭図屏風」左隻5扇(部分、個人蔵)で、装丁者の記載はありません。
カバー後ろの言葉は
*
江戸城内をゆく山王祭礼が描かれた「江戸天下祭図屏風」。
紀伊徳川家上屋敷が大きくクローズアップされたこの屏風は、
いつ、誰が、何のためにつくったものか。描かれた建物や人物、
画面構成などを絵画史料として分析・読解し、つくられた時
期は明暦大火後、折りしも紀伊徳川家が慶安事件(由比正
雪の乱)の嫌疑を受けていた頃と推理する。さらに時代背景
と伝来などの推理から、屏風に秘められた謎をスリリングに解明。
*
となっています。謎解きがあるので、これ以上内容に触れませんが、上質のミステリを読んでいるような気分にはなります。むしろ、レベルの低い男女の恋愛模様が入り込まないだけ、こちらの方が上ではないか、なんて思ったりします。でも、この人の論の立て方、話の運び方に覚えがある。ということで自分のメモをチェックしたら、ありました、しかも絶賛しています。それが『謎解き 伴大納言絵巻』です。ま、私としては『謎解き』のほうが面白さでは上ではないか、と思っていますが、なにせ10年近く前の読書なので、同列に論じることはできません。
ただ、その時も思ったのですが、黒田はミステリマニアじゃないか、と思うんです。確かに、推理をして論を立てる、というのは何もミステリだけの手法ではなく、学問や研究の世界では当たり前のことです。私が黒田をミステリマニアだと思う最大の理由は、その語り口です。ちょっとケレン味のある、読みやすい文章は、学問というよりは文学世界のものにより近い。
私は学者の書く無味乾燥な文章が大嫌いで、ただ正確な言葉と数字を間違いなく並べたという文章をみるだけで、イヤになってしまうほうなんですが、黒田の文章にはそういう感じが全くしません。もっと人間らしい。しかもです、専門用語で人を煙に巻くということをしません。偉ぶったりもしない。それでいて、論理的。文学博士ってちがうなあ、なんて思います。ちなみに、梅原猛の文のようなネチッコさもない。早稲田と京都の差がこんなところに出る。
それにしてもです、屏風を読むっていうのはこういうことなんだなと思います。描かれる人々の表情、描かれ方、そして建物の様式、それらから絵の目的、描かれた時代などが明らかになる。無論、すべてが腑に落ちるか、というと? と思うところが一箇所あります。とはいえ、それは論の立て方が強引かな、と思えるだけで、間違いではない。『謎解き』にはそういう曖昧なところが全くありませんでした。そこが評価の若干の差になります。
絵画史料で歴史を読み解くということがこんなに面白いとは。『謎解き 伴大納言絵巻』とあわせて読むことをお薦めします。最後は目次とデータ。
前口上 描かれた江戸の歴史推理
第1幕 江戸図入門―寛永江戸図の版行はいつ頃か?
第2幕 歴博本江戸図屏風をめぐる対立
第3幕 再発見された江戸天下祭図屏風
第4幕 天下祭りと見物人
第5幕 紀伊徳川家上屋敷と屏風の主人公
第6幕 徳川頼宣と慶安事件・明暦大火
大団円 「江戸天下祭図屏風」は語る
注
参考文献
あとがき
図版作成/リプレイ
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