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[集合知定理]
集団誤差=平均個人誤差−分散値 p50
生命体である人間は「オートポイエティック・システム(autopoietic system)」、機械であるコンピュータは「アロポイエティック・システム(allopoietic system)」というわけだ。p104
(前者は「閉鎖系」で、後者は「開放系」p105)
Cf. ルーマン「機能的分化社会理論」
きわめて粗っぽく図式的に整理すれば、規模が小さいときは共同体主義が有効だが、大きくなるにつれその有効性は急激に減少し、相対的に自由主義の有効性が増していく。そして功利主義は、両者の中間的性格を持っている。より正確にいうと、自由主義は規模によらず普遍的な有効性を持っている。そして功利主義は、原理自体は共同体主義ほど規模の影響を受けないが、規模があまりに大きいときは事実上使えなくなってしまう。p167
【本書が提案する“集合知民主主義”のアプローチ】p184
自由主義の制約条件を念頭におきつつ、功利主義の効用関数にもとづいて公共的正義のあり方を検討するものである。共同体主義の共通善はそこで、人びとの道徳観にもとづく判断として、非明示的に作用することになる。
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恵与深謝。ネットの集合知を活用するために、自由主義原理/功利主義原理/共同体主義原理をゆるやかに統合した評価基準を提唱。
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『ネット社会』というから、『ソーシャルネットワーク』の話かと思ったし、ほとんど関係なかった。てっきり炎上事件をとりあげて、『正義』とは何かを語る本だと思ったのだけど。
そもそも、ネット社会というのがほとんど関係無いような・・・。しいていうなら、チェスの指し手をネット投票で決めたことをとりあげたところぐらいじゃないか。こういう試みは日本の将棋でもやってほしいと思った。
裁判員って結構たいへんなんだなということが分かった。ちょっとやってみたいと思って入るのだけれども、あんまり気軽にそんなこと思っていいようなもんでもないかもしれない。
機械による独裁の話で、手塚治虫の『火の鳥』を思い出した。改めて、手塚治虫ってすごかったんだなと思った。
第五章や第六章の社会問題にたいする討論例は面白かった。死刑制度について討論するとこういう感じになるのだろうか。
個人的に死刑制度は廃止して終身刑など別の刑を導入したほうがいいと思ってる人間なので(少数派らしい)、こういう話は結構面白いと思える。
ところで、死刑因が絞首刑で死ぬ時ってほとんど即死に近いということを初めて知った(落下とともに頚椎が折れることが多いらしい)。
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公共哲学(功利主義、自由主義、共同体主義)の考え方をもとにして、どのように評価基準をさだめれば、民主的な意思決定ができるのか?について考察した本。
まず、専門知識の分野の細分化がすすんだ社会では、個々の専門家は限られた分野に精通するのみで、社会の中で総合的に判断する様な(たとえば再生医療、教育制度、など)問題の意思決定を担うことは難しい。そこで、インターネットを介して一般の人々の集合知を利用できないかと考察がすすみます。
筆者の提案としては、意思決定しようとする集団の規模に応じて3つの考え方をそれぞれ参考に(小規模集団では功利主義、大きい集団では特に自由主義を気にする。実際の選択肢をえらぶとき共同体主義がはたらく?と理解した)し、幸福と財貨と安全の指標で評価ということのようでした。
それから、功利主義のように幸福を数値化しようという時、人数だけでなく質の問題もあるとか、かわりに損する人も考慮の必要ありとかも言われていて、たしかにと思いました。似たような話ですが、誰が何に対してどれくらいの発言権があるんだろう、ということもポイントかなあと思いました。
説明の過程で、それぞれの主義の考え方とか、オイトポイエーシスとか、一般意志2.0という東浩紀さんの提案とか、いろんなことが説明されてて面白かったです。
あと最後には意思決定のいろんなケーススタディがあるのですが、例も、出てきそうな意見も具体的で、いろんな意見がでてくることとそれをどう集約するかをわかりやすく考えることができました。